ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはんbyFb…那須高原『休暇村那須』の、温泉トラフグにメイプルサーモン

2012年11月20日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 今でこそ高原リゾートで名を馳せる那須は、古くは開拓を志す入植者で活気を見せた時代がある。戦後期、山形などからの入植者による開墾で開かれた土地は、今は牧場や牧草地となり町の酪農産業を担っている。当時は大石や切り株が作業を阻害したりと、農場や牧場を切り開くには相当な困難な作業が想像できるが、「苦労は色々あったけど、まあね」と、当時を知る方は笑って多くを語らない。このバイタリティあふれるフロンティアスピリッツこそが、代々続く那須入植者の気質なのだろう。

 この日は那須湯元からやや登ったところの、休暇村那須に宿泊。料理は地元の伝説・九尾の狐にちなみ、那須産の食材を用いた料理が9品並んだ。那須豚と四季野菜の蒸篭蒸し、那須和牛の炙りに地野菜のオリーブ焼きなど、ローカル銘柄肉とご当地野菜のコンビネーションが見事。那珂川の天然アユは、お昼にもいただいた美ナスが添えられており、ローカル魚料理も健闘の様相である。

 ローカル魚といえば、高原の魚としてはちょっと変わった2品が目を引く。ひとつは紅色鮮やかなつくりで、カナダ産のニジマスとのこと。隣接する福島県西郷村で養殖しており、那須山系の清流育ちのおかげで、脂ののりが軽く身がトロリと甘い。「メイプルサーモン」との名が、那須高原の紅葉を思わせる一方、艶やかな盛り付けはバラの花のようでもある。

 赤いつくりに並ぶ透き通ったつくりは、那珂川町で養殖のローカル魚。何と、トラフグである。湧出する温泉水が海水の成分に近く、海水魚養殖への利用から考案したそうである。海水養殖のに比べると歯ごたえはもっちり気味、旨味はもたっと重く後からじわっとくる感じか。こちらのネーミングは、まんまの「温泉トラフグ」。ふくれっ面のフグ君が、手ぬぐいのせて湯船にプカプカ浮かんでいるようなイメージか?

 この2品、締めご飯の握りのネタにもなっていて、甘さと淡白さのコントラストが、それぞれ酢飯に合う。にしても、内陸の地でサーモンやトラフグを養殖し、標高1230メートルの高原の宿で「地魚」として供するとは。生産者の方々、および宿の料理長の着想と手間と苦労を偲んだら、開拓者から脈々続く那須のフロンティアスピリッツが、ちらり垣間見られた気がした。


ローカルベジタでヘルシーごはんbyFb…那須どうぶつ王国『王国レストラン』の、那須の内弁当

2012年11月20日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん

 那須高原の高台にある、那須どうぶつ王国に来園して驚いた。駐車場はさらりと埋まり、園内は子供連れでかなりの賑わい。犬を散歩させたり、カピバラと遊んだりと、なかなかの活気にあふれている。那須町は栃木県の最北という場所柄、震災関連の風評被害が懸念されたが、現在は観光客数は震災前の9割近くに戻っているそう。この日は地元への感謝デーで入園無料とはいえ、園内を歩いていると様子を心配してきた自分たちのほうが、元気をもらえる気がする。

 その活気は昼時のレストランも同様で、眼下に広がる紅葉の高原を見下ろす「王国レストラン」は、バーベキューを楽しむ客でほぼ満席である。自分たちもバーベキューにジョッキ、といきたいところ、この視察は那須を応援するのも大事なお題だ。用意されたのは、「那須の内弁当」と称したランチプレート。那須産の農畜産素材を使った9種の料理を、地元八溝杉のプレートに盛るのがお約束で、野菜が中心のヘルシーな見た目が、いかにも高原のランチといった感じである。

 加盟の8施設それぞれでオリジナルな趣向が凝らされ、ここは動物をモチーフにした仕掛けが楽しい。サラダからは、カピバラ君の形のダイコンスライスがこんにちは。セロリにキュウリ、パプリカなどバリバリに瑞々しく、体がきれいになる気がする。主菜の那須和牛炙りステーキは、鳥の巣仕立ての盛り付け。高原で肥育した、赤身の味が濃い銘柄で、脂控えめでこちらもヘルシー。生クリーム入りの白菜スープは「な・スープ」という、これまた地場野菜のスープ。ほか、丸々ジューシーな美ナスのショウガ汁あんかけ、香気が鮮烈な白美人ネギのごまだれかけといった、那須のブランドローカル野菜の実力もかなりのもの。なすべんに用いる野菜は農家からの直納など、専用に流通するため手間がかかり、1日限定20食なのは仕方ないところか。

 ブルーベリーヨーグルトて和えたリンゴをデザートに、最後は酪農の高原・那須の濃厚な牛乳をグッといってごちそうさま。地元食材満載のランチプレートをすっかり平らげて、食べての那須応援といけただろうか。満腹で園内を散策、名物の温泉に入るカピバラ君を見たら、寒さもあってこちらも那須温泉で、食後の一浴したくなってきた。


町で見つけたオモシロごはんbyFb…横浜 『戸塚崎陽軒嘉宮』の、香港醤油焼きそば

2012年11月19日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 岡山市の生産者の方とご縁があり、黄ニラを味わう機会が多い。自らが宣伝マンとして活躍、テレビにラジオにイベントにと、黄ニラの知名度をあげるべく走り回っている、バイタリティあふれる方だ。黄ニラ大使を名乗り、黄色いつなぎに黄色いネクタイが正装。食育や農産品イベントでは、子供たちの人気の的となっている。

 岡山市へお邪魔すると、ばら寿司やしゃぶしゃぶなどでいただく機会が多い一方、東京にいると意識していないと、なかなか出くわすチャンスがない。一般的には中華料理に用いられることが多く、生産量が限られているから、実は結構高価だ。先日の戸塚崎陽軒「嘉宮」での中華コース料理に出た、香港風焼きそばの具で、久々の再開。クニャリとしていてサクッと切れる食感に、目が覚めるようなパンチある香気が、岡山のローカル料理とはまた違った存在感を放つ。たっぷりのモヤシとの歯ごたえの差も心地よく、醤油味の細麺とからみ食が進む。

 大使は最近、黄ニラに加えパクチーもPR展開している。こちらは東京ではタイ料理で出会えるかも知れないが、ばら寿司との組み合わせはちと、個性が強過ぎか。香りつながりで黄ニラともコラボした、新・岡山ローカルごはんの登場の予感か?


ローカルベジタでヘルシーごはんbyFb…宇部・楠『農家レストランつつじ』の、地場産野菜の昼ごはん

2012年11月18日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん

 取材に出ると、食べ物は魚やご当地グルメに偏りがちで、二日目の昼あたりからお腹の減り具合が鈍くなりがちだ。今回も昨日から今日の午前中にかけ、食取材は宇部の魚介が中心となり、栄養のバランスがあまり芳しくないよう。

 するとありがたいことに、昼食は宇部興産の石灰石鉱山への途中、宇部市郊外の「農家レストランつつじ」に立ち寄ってとなった。直売所と温泉を併設した施設の、楠こもれびの里にあり、好きなおかずをトレイに取っていき最後に会計する、大衆食堂方式なのが楽しい。

 天ぷらコーナーからはシイタケ串にさつまいも天を。小鉢からは青菜の白和えに揚げ出しナス、おにぎりは高菜とサケを選び、ついでに地卵のだし巻きも。最後に味噌汁もつけて、しめて1100円ほど也。シイタケは原木栽培で、山の香気が際立つ爽快さ。「高糸」という品種のサツマイモは、栗のように濃厚に甘い。揚げ出しのナスはふっくらした実以上に、パリパリの皮が絶品。おにぎりの高菜の塩加減も程よく、具だくさんの味噌汁とともにきれいにいただき、ごちそうさま。

 好みで料理を選べるため、肉と魚まったくなしの野菜めしとなり、満腹ながらも体は軽い。気分は畑仕事後の農家ごはんといった印象で、いざ午後のもうひと働きといくか。


ローカル魚でとれたてごはんbyFb…宇部 『季樹魚』の、宇部近海の地魚料理

2012年11月17日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 宇部市の産業観光の視察にて、夕食に用意されたのは、近海の地魚料理。宇部新川駅そばの「季樹魚」では、厚狭の出身の若いご主人が腕を振るう料理の数々に、宇部の地魚の豊かさ、宇部の魚料理屋のレベルの高さを、ひたすら堪能した。この日は魚種ごとの一品料理が順に出され、それぞれの実力を楽しもうという趣向である。料理は宇部沖で水揚げされた魚が大半を占め、コンビナート前の海でどんな魚が揚がるのか、との懸念を一掃。宇部沖は潮の流れがあるためプランクトンが入り込み、栄養分が豊かな海なのだそうで、産業都市の海はなかなか豊穣なようである。

 最初のサワラは、普通のつくりと焼き霜づくりの2種盛り。普通のは身が瑞々しく、赤身の味わいがほんのりとクリア。焼き霜は炙ったところがほっくりした食感で、浅い脂の味が活性化している。セリにかけずに漁師から直送、夜中の水揚げ後5〜6時間寝かせてあるから旨味が熟成している、とご主人。4キロオーバーの大物なのに、繊細な味わいが地物の特徴です、と胸を張る。ヒラメも宇部沖で漁獲された天然ヒラメ。今朝刺し網でとれたもので、しゃっきり歯ごたえが楽しめる。ほのかに海藻のミネラル香が鼻に抜ける。

 ご主人によると、宇部は目の前の湾をはじめ、関門海峡や周防灘水揚げのものも流通していて、周辺の地物はかなり種類が多いそう。その中から、続くワタリガニは宇部を代表するローカル魚介のひとつだ。カニはゆでると旨味が逃げてしまうので、中国の上海ガニの技法から取り入れ、内子と身を塩水で蒸しただけという。土佐酢に軽くひたしていただくと、白身の滑らかな舌触りにオレンジ鮮やかな内子がからみ、ツルリ、ホクホクとまろみのあるうまさ。宇部沖でかに籠漁で漁獲され、メスは抱卵した秋口からが味か良くなるそうである。宇部では別名「月見ガニ」と呼ばれ、満月の夜に産卵のために浮いてくることから名がついた、何だかのどかなイメージの地ガニである。

 ご主人が宇部の魚の中で一押しという逸品は、昼にも丼でいただいたアナゴだ。昼のあっさりした炭火焼とは対象的に、トロトロに柔らかな蒲焼きは、白身の芳醇さが引き出されていてうれしくなる。江戸前風に柔らかく焼き上げることに加え、味の秘訣は10年間継ぎ足し、浸したアナゴの脂で味がついたツメにあり。宇部のアナゴは100グラムほどの中型が主流で、夏が旬だが海が富栄養のため、年間を通して味がいいという。

 そしてアナゴに並ぶ宇部沖のおすすめ漁獲との、トラフグの炭火焼が締めの一品となった。近海に産卵にやってきたのを底引きで漁獲しており、やや小振りなので「小トラフグ」と品書きにある。その分、骨を外した身をそのまま味わえ、プリプリとした歯ごたえは普通のトラフグそのまま、淡白なうまみは炙った加減で活性化している。これから冬にかけてが旬で、2月に入ると小さいながら白子が入るそう。一口でおいしいところを凝縮して楽しめるから、フグ刺もフグちりも超えた究極のフグの味わい方かも。

 ご主人は「自己流」と謙遜されるけれど、料理はいずれもダシも調味も出しゃばらず、魚介の持ち味をしっかり下支えしているのが見事な技だ。宇部の魚にこだわりがあり、その良さを尋ねたら「脂は少なめであっさりした中、『底味』がある」と表現された。素敵な地魚料理の堪能に加え、視察のお題である産業観光を巡ることで、宇部の魅力の「底味」も見極めたいものだ。