忙しい時ササッと食べられる。仕事をしながらつまめる。軽い昼食やおやつがわりに。「軽食」というカテゴリーがピッタリなのが、日本のサンドイッチのポジションだろう。カードゲームに興じた英国伯爵云々の起源のせいか、「ながら」の食のイメージも強い。片手で軽く持ち、崩れたり垂れたりを気にせず「ながら」がやれる料理は、確かにあまり他に思い当たらない。
その一方、欧米の方が来日して喫茶店などでサンドイッチをオーダーした際、あまりの貧弱さに愕然とする、との話も聞く。アメリカンサンドはトーストした厚切りパンに、BLTやBBQやターキーやチーズと、横幅より高さの方があるド迫力だ。イギリスはさすが発祥の地だけに、すっかり浸透した国民食。パンと具材のバリエーションの豊富さは群を抜き、好みで組み合わせが楽しめるサンドイッチバーが普及しているほどとか。
日本流のサンドイッチが平屋建てなら、欧米版はさしづめタワーマンションか庭付き○LDKといった感じだろう。とはいえシンプルイズベストなのが、日本流のいいところかも。卵サンドにハムサンドなど、一品の具材で勝負なのは、素材そのものの味を楽しむ食文化が影響しているように思える。薄いながらも質実剛健、何より平屋は「ながら」で食べられるが、タワーマンションサンドでは家屋崩壊必至だろう。
いつもはそんな、コンビニのながらサンド御用達だが、先日訪れた英国スタイルの喫茶では、生ハムと野菜たっぷりのサンドイッチをいただいた。シャッキリ甘いレタスに、トマトのフレッシュな酸味が、厚切りたっぷりの生ハムと一体になり、どっしり重厚な食べ応え。本国のサンドイッチは軽食でなく、一食分しっかり満足できる「料理」なのを実感した。(130520)