ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

一献一品出合い酒@家飲み

2013年07月30日 | ◆一献一品出合い酒
衝動買いのレシピ本に触発されて、ニッスイおさかなソーセージ×プレミアムモルツ。そのまま食べられる簡単つまみで家飲みするなら、せめてビールは奮発してのこのコンビが似合う。

赤いセロハンをビッと破き、オレンジのフィルムをスッとはげば、中身からほんのりピンクのソーセージがツルリと顔を出す。連なる暖色系の食欲喚起カラーに、まずはハグッとひと口。ソーセージでも練り物でもない魚肉の味は、昭和な何かを思い出す。プレモルをグッとやり、ソーセージをふたたびひとかじりすれば、プチ贅沢なようなチープなような、不思議な酔い心地に。お店では組み合わせ不可能な、ミスマッチが心地よい一期一会。

酔いに任せてレシピ本を眺めたら、サラダにオードブルにおかずなど、千変万化のメニューが踊る。ビールにピッタリきそうなのは、チンして串打ちしたまんまのシンプルなのが一番かも。一献一品の小さな酒宴、今宵も天下泰平なり。

日々是好食…ふたを開けたら小宇宙

2013年07月30日 | ◆日々是好食
丼ものをオーダーして幸せを感じる瞬間。それは何といっても、ふたを開いた時のときめきだろう。カリッとエッジの立った揚げ香が、鋭角的に攻めてくるカツ丼。魅惑の脂甘さとタレの醤油甘さに、からめとられる思いになるウナ丼。ふたをとったとたんに解き放たれる食の小宇宙に、身も心もゆだね満喫できるのが、丼ものの醍醐味だ。

ところでこの丼のふた、稼働時間は厨房で仕上がってサーブされるまでの、ほんのわずかしかない。しかしながら、調理の最後の仕上げという重要な役割を担っているように思える。カツ丼のカツはクリスピーさが飯になじむよう穏やかに、ウナ丼は身をフッと膨らます最後のひと加熱。この「蒸らし」で、丼もの小宇宙がビッグバンするエネルギーが蓄えられるのではなかろうか。

親子丼のふたを外すと、まろやかな卵のビジュアルに、力が抜けホッとなごむ。さっさと開けてトロトロの半熟でザバザバかっ込むもよし、ひと呼吸置いてからしっかり固めの煮卵でホクホクつまむもよし。ビッグバン後にいかなる小宇宙を形成するか、天地創造主として毎度悩ましいことである。

一献一品出合い酒@有楽町

2013年07月29日 | ◆一献一品出合い酒
銀座口ガード下にある沖縄居酒屋「あちこーこー」にて、れんとロック×豆腐よう。一次会直後に襲ってきたゲリラ豪雨を凌ぐなら、泡盛と琉球の肴で軽く飲める、このコンビが似合う。

淡いブルーの琉球硝子が沖縄の盛夏を思わせ、手にすればロックのカラン、の音が爽快。軽く傾けると、ゆるやかに滑らかな口当たりに、南の島の和みを感じる。ジトッと熟した豆腐ようを、楊枝で削いでひとなめすれば、膨らむ発酵香に飲んべは一撃ノックアウト。雨宿りの繋ぎ酒のつもりが、マジ飲みループへと沈み行く一期一会。

カウンター上にぶら下がる酒瓶や奥に整列の甕を見つつ、次のグラスに気がはやる。ちびちび傾け、ちびちび削るうち、すっかり上がった通り雨。止んだ後のムッとした蒸し返しに、いっそう南の島の気分にはまり行く。一献一品の小さな酒宴、雨も上がり天下泰平なり。

日々是好食…まかない料理への期待値

2013年07月26日 | ◆日々是好食
「裏メニュー」という言葉の響きは、食欲を実に膨らませる。正規の献立にない、食材の特殊な使い方。多量に供するのは厳しい、限定品ならではの調理法。グランドメニューにできない要素が、頭から効く調味料となり、期待値を高めているようにも思える。

その要素というか調味料で、最たるキーワードは「まかない」だろう。本職の料理人が、自分のためにつくるご飯。プロの嗜好に合わせているのだから、客としては憧れが膨らむことといったら。アイドルタイムの料理屋で自分のオーダーが運ばれた後、おもむろに何やらザッと調理してワッと盛り、厨房の隅でかっ込んでいる料理人。チラ見しつつその怪しげな魅力に、「俺もそっちにして!」なんて思わず声をかけたくなった人もいるのでは。

ラーメン屋はそんな、まかない飯の宝庫だ。トッピングがそのまま飯ものの具材となるほか、スープのダシガラの煮干しやカツオブシも、炒めたり味付けしてご飯の友にしたり。チャーシュー丼や味玉飯などは、最近はサイドメニューに昇格したが、後者の二つはいかにも「裏」な感じ。うまいかどうかより先に、まず探究心がそそられる。

中にはグランドメニューどころか、一大ジャンルに成長した料理もある。つけめんは大勝軒のまかないが発祥で(大勝軒では「つけそば」)、常連のリクエストによりメニュー化されたという。茹で上げた麺をザルでジャバジャバ冷やし、サッとつゆに浸してキリッとひとすすり。今は一大ジャンルに成長したメニューだが、シンプルな調理と味には未だ、まかない時代の名残がとどめられているように思える。

一献一品出合い酒@家飲み

2013年07月25日 | ◆一献一品出合い酒
山口・雙津峡温泉の方から頂戴した、堀江酒造の生酛純米酒×タケノコとコンニャクの煮物。錦川上流の水と米が活きた酒を吟味するなら、その素性がくっきり浮かぶ軽めのアテを合わせた、このコンビが似合う。

ツーと一筋、盃に流すと、白地に浮かぶ山吹色が薫と立つよう。舌で転がし膨らむ甘さから、去り際のほのかな苦味が後ろ髪を引く。手作り栽培の山田錦の芳醇な香りは、思わずホッと一息つくような染みる優しさ。淡い醤油味の煮物と、スッと素直に融和する。手作り希少なオリジナル酒だから、杯を重ねるのが楽しく惜しく。「自酒」に心身ゆだね、ほろ酔う一期一会。

飲むごとに思い浮かぶ山間の風景は、緑と水の恵みがあふれる。日本一の鮎を肴に、当地に身を置き酌み交わす、自酒の宴に思いを馳せて。一献一品の小さな酒宴、今宵も天下泰平なり。