ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

生マッコリ家@新橋

2017年10月31日 | 町で見つけた食メモ
このところ続く新橋の聖地通い、岩手県西和賀町の6次産品を味わうのが、一つの目的である。奥羽山脈の水と自然に育まれ地域の評価が高い「西わらび」は、ピクルスに加工。径が太めで長いのがそのまま瓶で酢漬けされており、とろける粘りと瑞々しい青さが、きつめの酸味のおかげで引き立つ。一本スルリといけば、里路の豊饒さが舌に浮かばんばかりだ。

ふくよかな濃厚さの「湯田牛乳」の岩手県産生乳を用いたヨーグルトには、このたび新たなラインナップが加わった。本場ギリシャの技法で加工した「ga・laギリシャヨーグルト」で、ひとさじ舌に乗せるとどっしりとした重量感。酸味も甘みもほぼない真っ直ぐな味わいで、混じり気のない純度の高さにお腹へすっと落ちていく。これに同町のはちみつを素材とした「巣鴨養蜂園」のあかしあハチミツをひとさじ垂らせば、線の細いクリアな甘さが絶妙なワンポイントに。

素材の良さと、それを損なわない加工。合間っての旨さに、西和賀の山と川と湯が恋しくなるような。

ごはん検定PR・トークイベント@西宮

2017年10月19日 | おさんぽ講座・介護レクの記録
10/19の10:15より、阪急西宮ガーデンズ内の「米処四代目益屋」にて、「あなたの知らないお米の世界」と題したトークイベントに出演します。ごはん検定監修・おにぎり協会の関克紀さんと、お米やおにぎり、ローカルなご飯料理といった、コメトークを繰り広げます。11/26に迫ったごはん検定のプロモも行います。

ローカル魚でとれたてごはん…夙川 「フィオーレ・ジャルディーノ」の、淡路のイワシのエスカベッシュ

2017年10月19日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
かつて桜鯛漁で賑わった西宮の浜は、西宮神社から南へ2キロほどの距離にある。阪神西宮駅からバスで10分ほど、最寄りのバス停はマンション群のどまん中。あたりはほぼ宅地化されており、水辺には西宮マリーナが整備されているなど、臨海開発がかなり進んでいるようだ。高台には住吉神社が社殿を構えており、境内にあった江戸期の古図「摂州西宮築州図」には、松原の浜と灘の清酒の積み出しで賑わった港風景が描かれていた。石段の参道から鳥居越しに、同じ方角を俯瞰すると、水路を隔てた先に巨大な人工島が目に入る。当時望めたであろう瀬戸内海は、今ではその向こう側へと遠ざかってしまったらしい。

神社を背に、西宮ハーバーに沿って水辺を回り込んだところには、長さ300メートルほどの小ぢんまりした砂浜が広がっていた。水辺開発による人工の浜かと思いきや、大阪湾沿岸に残る数少ない天然の浜なのだとか。「御前浜」との名は、西宮一の古社で海を司る廣田神社南宮のそばだったことから付いた、神様に由緒のある浜である。埋立地に囲まれてやや窮屈そうな印象ながら、ようやくかつての漁業風景の片鱗らしき眺めに出会えたと、波打ち際に沿って歩いてみる。一角には勝海舟ゆかりの西宮砲台跡が、眼前に瀬戸内を望んでいた証として白亜の姿を残していた。

直近に瀬戸内海を有していただけに、かつての西宮の浜は鯛のみならず、様々な魚介の水揚げ拠点だった。武庫川河口のシラウオに沿岸でとれるカレイやハゼ、アサリなどが挙がる中、鯛と並んで当地を代表したローカル魚が、イワシである。江戸期の地引網漁に端を発し、昭和30年代頃まで近海での操業が盛んに行われていた。鮮度と質の良さから市場では高値で流通し、「宮じゃこ」との名称もつけられた、今でいうブランド魚介だ。最盛期にはひと網で千貫もとれたことから、あたりの浜は「千貫地浜」と呼ばれるほど、隆盛を極めたという。魚の王様と大衆魚が、西宮の代表な魚介なのが面白く、かつての漁業の奥行きの深さが感じられる。

地引網漁の引き揚げ場所だった砲台前で水揚げ風景に思いを馳せてみたが、眼前の細い水路からは大漁のイワシが浜へ揚がってくる様が、いまひとつピンとこないような。松の木がちらほら自生する中をぶらりと歩き、夙川の河口に至ったところで西宮の浜さんぽは終了。阪神西宮駅へ戻るつもりが、河辺の緑道が心地よく通り過ぎてしまい、気がつくと阪急の夙川駅まで歩いてしまっていた。神社の門前に広がる浜寄りの庶民的な街から一転、あたりは山の手の瀟洒でハイソな街並みが展開しており、締めのローカル魚もちょっとオシャレな店を攻めてみたい気分になる。

「地魚」というのも場所柄難しそうで、魚料理が店頭のメニューボードにある店ならどこでも、と選んだのは、駅そばのビル6階にあるイタリアン「フィオーレ・ジャルディーノ」。夕方のハッピーアワーが始まると同時に飛び込むと、この日最初のお客ということで窓辺の「特別席」に案内いただいた。山麓に広がる高級住宅街を見下ろし、正面は教会の尖塔がそびえ立つ。店のお兄さんいわく「観音山と夙川カトリック教会が望める、運気が上がる席」だそうで、前菜5種盛りとグラスワインのセットが500円とリーズナブルなのに、のっけから運気が上がる予感がする。

そして続く一品を魚料理からセレクトしようとしたら、オードブルの中にイワシ料理があるではないか。お昼の西宮神社と鯛に続き、御前浜つながりの魚でまとめられ、これは嬉しい。選んだエスカベッシュは、イワシに片栗粉を打ってから焼き、ニンジンと玉ねぎをのせて甘酢をかけまわした、地中海の漁師料理らしい庶民的な一品だ。たっぷりの身をソースにしっかりからめていけば、ホクホクとした身が酸味で引き立ち、実に複雑滋味。骨ごと食べられるので香ばしく、ワインで受けつつ目の前に教会の尖塔を見れば、まるで本場イタリアのバルで飲んでいるかのような気分に浸れる。

エスカベッシュは作り置きの冷製料理で、本来は味を染みさせて食べるけど、イワシの鮮度がいいできたてもなかなかですよ、と話すご主人。この日はちょうどエスカベッシュを仕込んでいたので、できたてアツアツがサーブされたのもラッキーだ。店は兄弟でやっているそうで、二人とも西宮をはじめ地元への愛着が強く、飲むほどに界隈の魚談義にも花が咲く。魚介は主に大阪湾など近隣から仕入れており、この日使ったイワシはなんと淡路産なのにも重ねて驚いた。締めでちゃんとローカル魚に出会えるとは、これも幸運の席の導きだろうか。

観音山の山麓の住宅街にポツポツと灯りがともり出し、空いたグラスにワインをいただくか迷いつつ、今日の散歩を振り返ってみる。神社の門前でいただいた威厳ある魚の王様に、小洒落た街で出くわした欧風料理の大衆魚。失われた漁業風景を追い、街中で名残をたどり偲ぶのもまた楽しい、西宮のローカル魚探訪である。

ローカル魚でとれたてごはん…西宮 「はたごや」の、鯛のあら炊き御膳

2017年10月19日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
正門の表大門が開かれるとヨーイドン、とばかりに、本殿へ向かって男性たちが駆け抜けていく。「開門神事」の走り参りは、1月9〜11日に開催の西宮神社「十日戎」の最後を締める風物詩である。一番福を奪取すべく競う様は、福の神・恵比寿神を祀る総本社たる、人気と白熱ぶりだ。それが平日の午後に訪れてみると、緑に囲まれた広大な境内は、ひっそりと落ち着いたたたずまい。石畳の参道を歩き、朱塗りが鮮やかな本殿に参拝する間、「えびすの森」が風にざわめく音しか耳に入らない。時折それを破るように、高架を阪神電車が轟音とともに駆け抜けていく。

商売繁盛と福の神である恵比寿神だが、もとは漁業の神だったとの説がある。西宮神社の起源も、兵庫の和田岬沖で漁師の網にかかった恵比寿神像を祀ったとされ、海を渡ってやってきた神様として周囲の信仰を集めている。そのためか、十日戎では大漁と商売繁盛を祈願して、神戸市東部卸売市場から大振りの本マグロと型の良いマダイが奉納される神事も行われるそうである。マダイは恵比寿神が片手に抱えた、お決まりのアイコン。境内を歩いていても、納め場に鯛をかたどった絵馬が下がり、茶屋の品書きに鯛焼きが見られたりと、さすがに縁起物の鯛との関わりが深そうである。

社務所では置物の鯛がくじを抱えた「鯛みくじ」が人気と聞いており、運試しを楽しみにしていたのだが、正月期間中のみ限定のおみくじとのこと。あいにく御利益に授かれなかったので、せめて参拝後の精進落としに、ゆかりの鯛を味わえる店などなかろうか。阪神電車の線路に沿って西宮駅へと戻り、高架下のフードコートを眺め歩いていくと、最奥で格子の扉が趣ある和食処に行き着いた。この「はたごや」に決めて扉をくぐり、店内に通されると個室主体の座敷がずらり。まさに神社参道街の料亭といった落ち着いた風情で、直上を電車が走っていることを忘れてしまう。

卓に落ち着いたところで注文はもちろん、店頭の品書きにも掲げられていた鯛料理を決め打ちだ。境内の随所で見かけたおめでたい姿に惹かれ、大きな頭がドンと印象的な「鯛のあら炊き御膳」を選ぶ。合わせる昼酒は灘五郷の最寄だけに、灘の生一本といくべきだが、「エビス福梅」なるおめでたい銘柄の梅酒が気になる。あらは注文を受けてから炊くため時間がかかるそうなので、梅酒のソーダ割りを食前に含みながら、炊き上がりをゆるりと待つ。ほんのり柔らかい甘さと角の取れた酸味が優しいあたりで、散策後の乾きが癒され思わずホッとえびす顔になってしまう。

20分ほどで運ばれてきた品数豊富な膳の中でもやはり、大鉢に堂々と据えられた鯛の頭が圧巻だ。手のひらを広げたほど大きく、供物として奉納されるのも分かる立派さである。凝視してくる目のまわりに箸を入れ、ほっこり外れた身を口に。力強さと品の良さが兼ね備わった、複雑かつ滋味ある味わいに思わず沈黙してしまう。味の良さでは三本の指に入る部位ともいわれ、鯛の一番美味しいところをいきなり堪能とは縁起のよろしいこと。クッ、クツと弾力がある頰、ゼラチン質がトロリとした口元など、攻めるごとに多彩な食味がまた嬉しい。

ちなみにこの界隈でとれるマダイといえば、海峡の早潮でもまれた明石浦の鯛が、全国ブランドだろう。店では明石をはじめ日本海側や瀬戸内、和歌山沖などから取り寄せており、近隣に良い漁場が豊富なローカル魚といえる。さらに縁の強いことに、ここ西宮もかつては明石と並び称されるほど、鯛漁が盛んだった歴史があるのだ。寛政年間の「摂津名所図会」には、西宮沖での漁の様子が描かれており、産卵直前の春先の「桜鯛」を網でなく一尾ずつ釣りで漁獲するため、味の評価が高かったとある。漁場が西宮神社および、海を司る神である廣田神社南宮の前のため「御前の鯛」とも称され、西宮神社および恵比寿様ゆかりの縁起物として、大阪で珍重されたという。現在ではあたりはすっかり市街地化されてしまったが、かつてはこのあたりにも瀬戸内の波の音が響いていたのだろうか。

アラ煮はほじったりしゃぶったりに苦労しがちだが、きれいにばらけて食べやすいのもさすが、魚の王様のアラ。しかもどの部位も身がたっぷりついており、アラながら実に食べ応えがある。煮汁がかなり甘辛く、からめていけばご飯がどんどん進むこと。パカッときれいに外れる頭肉は、口の中でばらりほぐれてあっさりと軽い。ヒレの付け根も目のまわりのように、運動して鍛えられた極上の部位だ。分厚い身がごってりついており、きれいに食べたら胸ビレの骨が出てきた。鯛の形に見えるため「タイのタイ」と呼ばれる縁起もので、鯛みくじが引けなかった分、御利益享受にいただいておこうか。

【朝カルおさんぽ講座】新宿東口編

2017年10月14日 | おさんぽ講座・介護レクの記録

朝日カルチャーセンター「おさんぽマップ編集長と歩く地図から東京発見」新宿東口編を開催。歓楽街を午前中に歩くというちょっと変わった視点で、二丁目を経て歌舞伎町縦断という、ディープなコースにチャレンジした。参加者はほぼおばさま方だったのでちょっと心配したが、逆に思わぬ大盛況に。夜は怖くて行けないところを歩けたと、風変わりな繁華街さんぽを楽しんでもらえたようだ。 

行程は花園神社を後に、吉本興業東京本社のもと中学校の校舎を利用した社屋を眺め、ゴールデン街ではロケセットのような昭和の闇市風飲屋街を自由散策。歌舞伎町を流れていた蟹川跡の道を蛇行しながら歩き、微地形の観察も楽しんだ。鬼を祀った稲荷鬼王神社で二つに分かれた富士塚を参拝、スーパーの韓国広場でショッピングタイムののち、いよいよ二丁目へ。西洋のお城を模した建物が並び建つ通りをちょっとかすめ、イケメンホストのアドボードが乱立するあたりに来れば、一同なかなかの盛り上がりに。 

そのど真ん中にある立ち寄りスポット「歌舞伎町ブックセンター」は、なんとホストが書店員という本屋さん。といっても、昼の歌舞伎町に安心して立ち寄れる文化発信基地を目指すとの、真面目なコンセプトのショップだ。400冊の蔵書はテーマはすべて「愛」なのはさすがで、彼らがしっかり応対してくれて好みの一冊を選んでくれる。カフェスペースやワインが飲めるカウンターもあり、巧みな接客もあって一同すっかり落ち着きモード。危うく講座がお開きになりそうに?

「サムライミュージアム」では、精巧かつ高価ながらインバウンドによく売れるという刀や甲冑のレプリカを眺めたら、新宿東宝シネマズ屋上のゴジラ、ロボットレストラン店頭のオブジェを観察して、地下街入り口にて無事、終了。伊勢丹の建築探検も用意していたが、結構歩いたのでまた次回のネタとした。下町カラーの真面目な散歩もいいけれど、これはこれで現在の街の表情が見られて面白い。渋谷、池袋、新橋もチャレンジしてみようか。