ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん101…大阪・長居 『浪花屋』の、トロトロのたこ焼き

2008年08月30日 | ◆旅で出会ったローカルごはん


 夏休みも終わりに近づいた中、ことしの家族旅行は大阪へ行くことになった。主たる目的は、実は子供の宿題対策。上野でやっていた「ダーウィン展」を見て、感想を書くという課題があったのだが、うっかり行けないうちに会期が終わってしまった。という訳で、次の会場である大阪に追っかけて見にいこう、ということになった。ついでに
USJで1日遊んで、できれば大阪らしいところへもちょっと寄って、夏休み最後の家族サービスといきたい。
 羽田からの飛行機で関西空港に着いたら、遊ぶ前に課題を済ませるべく、「ダーウィン展」の会場の大阪市立自然史博物館のある長居へとやってきた。展示を見てから昼ごはんにするつもりが、お昼はお好み焼きが食べたい、うどんがいい、と、旅行前に何かで調べたのか、いっちょ前に大阪名物をリクエストする子供たち。夏休みの課題はおろそかなくせに、こういうところは用意周到なのは、いったい誰に似たのやら。

 長居は大阪の南のターミナル・天王寺から電車で3駅ほどで、駅の周辺にはマンションや住宅街が広がる、典型的な大阪のベッドタウンである。駅周辺にはファーストフードやチェーンの飲食店が目立ち、地元の人は大阪の名物なんて食べるんだろうか、と、リクエストに合った店を探しながら、路地をうろうろ。すると長居公園通りに出たところでドンピシャ、たこ焼き屋に出くわした。格子をあしらったシックな和風の店頭には、『浪花屋』との屋号入りの幕がひるがえり、店頭では兄さんが焼けたたこ焼きを、手際良くひっくり返している。
 昼ごはんがたこ焼きでは少々軽いかも知れないが、お勉強の前に食べ過ぎると頭の回転が鈍ってしまうから、ちょうどいいかも知れない。テイクアウトして長居公園で食べようとすると「中で食べて行きはりますか?」とお姉さん。店を覗くと2組あるテーブル席が運良く空いていて、ありがたく店内に通されることにした。


注文は8個以上、4個単位で。4個100円ということで、数が増えても割引はないシンプルなシステム


 壁に貼られた品書きによると、味付けはしょうゆ味、ソース、マヨネーズ、ソースとマヨネーズ両方の4種類が選べ、8個以上4の倍数単位で注文ができるらしい。8個から40個まで4つ刻みの値段表も掲示され、8個で200円、40個でもたったの1000円! 東京のたこ焼きはひと皿500円ぐらいのイメージだから、本場は激安だ。
 そういえば3の倍数でアホになる芸人がいたな、なんてことを思い出しながら(笑)、4人分で4の倍数のキリのいい注文数を検討。安さもあって遠慮なく、ソースマヨをどん、と36個、さらにマヨネーズが苦手の娘のために、ソースだけのも12個お願いした。これでビールなしとは何とも殺生な、と嘆いていたら、家内が「スーパードライ」の貼紙を発見。テイクアウトがメインのたこ焼き屋だから、期待していなかっただけにこれはうれしい。

 竹の皿にのった熱々のたこ焼きが数皿運ばれてきたところで、大阪ごはん
1食目を皆でいざ、いただきます。ソースマヨに楊枝を刺したとたん、ふんにゃりと崩壊してしまった。楊枝で引き上げようとすると、中央から割れてしまうほど柔らかい。
 何とか口に運ぶと、皮はしんなり、中はトロトロでまるでカスタードのようだ。熱々のをやけどしないように、口の中で転がしながらモグモグ。出汁がしっかり効いていて、これはなかなかうまい。クリームのような食感は、だし汁に浸して食べる明石のたこ焼き・明石焼きのようでもある。ソースの辛さとマヨネーズの酸味、花カツオの香ばしさは、たこ焼き王道のコテコテに濃ゆい味わい。中身のタコは小さめで、甘辛く味付けしたコンニャク片が入っているのが面白い。熱々のをつまんでは、ビールをググッ。添えてある甘酢しょうががまた、ビールのいい肴になる。


客席から見た焼き場。ソースやマヨネーズを塗る前はプクプクにふくれている


 大阪のたこ焼きといえば、皮はカリッ、中はトロッなのがお決まりな中、ここの「ふにゃふにゃ系」と呼ばれるやわやわのたこ焼きは珍しく、前述の明石焼きのテイストに似ている。それだけにインパクトある味わいにハマる、地元大阪のたこ焼き食べ歩きファンも多いという。
 生地にたっぷりの卵、そしてカツオだしが入っているため、本来主役であるタコが小さめなのに、生地のうまさで評価が高いというのが面白い。つまみながら店頭を眺めていると、自転車でやってきた子供たちや、買い物ついでのおばちゃんが、20個、30個と買っていく。ベッドタウンの店らしく、普段使いのお客が多いのが、人気の証のように思える。

 計
48個のたこ焼きは、またたく間に4人のお腹に納まってしまい、もうひと皿ぐらいなら軽く食べられそうだ。生地の味がいいのなら、追加は何も塗らない醤油味で12個いってみよう。マヨだめの娘でも、これなら大丈夫。
 運ばれてきた竹皿には、シンプルなまん丸なのが12個、行儀よく並んでいる。こちらはパンパン、プクプクに膨らんでいて、ソースなどがかかっていないからへしゃげないのだろうか。口に入れるとホクホク、あっさり醤油のライトな味で、いくらでもいけそうな飽きのこない味だ。ソースやマヨネーズの濃さがない分、タコの香ばしさも感じられ、ある意味本来の「たこ焼き」らしい味がする。

 合計36プラス12プラス追加の12で、4人で計60個のたこ焼きを食べて、ごちそう様… と席を立とうとすると、「すみません、数が間違ってました」。お姉さんが笑いながら、足りなかった分です、と竹皿に2個のせて持ってきてくれた。数えながら食べていた訳じゃないのでもちろん気づかず、何だかおまけしてもらったような得した気分で、子供たちに1つずつ食べさせて店を後に。
 広い長居公園の中を自然史博物館に向けての移動中、子供たちはハイテンションでふざけまくっている。本場のたこ焼きがウケたのか、単にお腹いっぱいで機嫌がよくなったからなのか。このままお勉強モードに突入してもらい、宿題をしっかり仕上げてもらおう。その間お父さんは、夜の新世界食べ歩きに備えて英気を養うべく、公園の木陰で午睡をむさぼりながら待ってようかな。(2008年8月26日食記)


町で見つけたオモシロごはん122…上大岡 『サンアロハ』の、ポキサラダにアヒ串焼き

2008年08月24日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


サンアロハのポキサラダ。貝殻に野菜とマグロブツが大盛り


 
娘の幼稚園の頃からのお友達から、お稽古の発表会のお誘いを受けた。お稽古のお題はピアノか、それともバレエか、と思いきや、何とフラダンスとのこと。「ホイケ」と呼ばれる発表会が、小田急線の湘南台にある文化センターで行われるという。
 
フラダンスといえば、2006年に公開され好評を博した映画「フラガール」を思い出す。閉山相次ぐ炭鉱の町をフラダンスで活気づけようとする、女の子たちの奮闘記で、蒼井優、松雪泰子、山崎しずちゃんら豪華キャストもあって話題を呼んだ。チアダンスをやっている娘に生のフラダンスを見せれば、影響されて蒼井優を目指してくれるかも。ということで7月のとある週末、娘と連れ立って出かけてみた。

 
南の国らしい健康的で陽気な踊り、というのがフラダンスのイメージだが、その精神は神と自然への感謝を示す宗教の踊り、儀式の踊りなのだという。プログラムの最初に演じられた、「カヒコ」と呼ばれる古典フラは、そうした祈りを主題にしたものである。賑やかな楽器や鳴り物はなく、囃子は肉声と「イプヘケ」と呼ばれる大きなひょうたん型の打楽器のみ。いわば日本の舞や能のようで、フラの精神を表した厳粛な雰囲気が漂う。
 
続いて、KONISHIKI氏のようにふくよかなクムフラ(ハワイ語で「先生」の意)の、にこやかな挨拶があった後、演目は一転。「アウアナ」と呼ばれる、明るく陽気な現代フラのオンパレードとなった。「私の心からの歌、心からの愛」「私の愛する人はどこ?」「私の大切な人と、ここで結ばれる」など、曲目から主題は「愛」なのが伺える。中には「あなたは王様、私は召使だから愛はないのね?」「私にとってあなたは一番素晴らしいファイアマン」なんて、どんな愛の表現なのか気になる曲目も。



「ケイキ」と呼ばれる子供クラスのフラ。手にしているのがウリウリ


 出演する年代層は、子供をはじめ若い女性から主婦、年配までかなり幅広く、衣装も、踊りのテンポも、そして表現する愛の形(?)にも違いがあるのが、なかなか興味深い。若い人は彩り鮮やかなヒラヒラのパウスカートで、アップテンポでキビキビした踊り。主婦はゆったりしたムームーをまとって、母性愛を印象づけるゆるやかな踊り。そして年配は裾広のロングドレスで、大人の成熟した愛を表すようなメロウな踊り、といった感じ。手を胸に合わせ、大きく開き、頭上に上げて、と、自然や心を表現するハンドモーションを多用して、心情を優雅に表現していく。
 
それに比べ、「ケイキ」と呼ばれる子供クラスのフラは、大人の艶やかさはもちろんない分、子供らしい溌剌さが気持ちいい。娘の友達も、「ウリウリ」という花を模したマラカスを両手に、精一杯の踊りを披露している。露出の多い衣装が恥ずかしいのか、ちょっと遠慮がちの様子だ。
 中でも目立ったのが、センターポジションの女の子。満面の笑みで、曲を口ずさみながら、大きな手の動きとともに切れよく腰を振っている。これはポスト蒼井優か、と言いたいところだが、何となくネイティブハワイアンっぽいふくよかで愛嬌のある面影は、どちらかというとしずちゃん、いや、ディズニーの「リロ&スティッチ」のリロのような愛らしさか。

 公演が終わる頃には、こちらもすっかりアロハ・スピリッツに満たされ、余韻に浸りつつハワイアンフードで晩飯といきたい。そんな店が湘南台にないか、携帯ぐるなびで店検索をすると、周辺では上大岡で1件ヒット。何と、自宅の最寄駅にある店だった。
 
地下鉄で引き返して、駅ビルの2階最奥にある『サンアロハ』に向かうと、入り口では大きな木彫りの像がお出迎え。入り口をくぐると吊橋があしらわれていて、ゆらゆらと渡ってフロアへと向かった。アンダーな照明の下、木調のテーブルセットに椰子の木、BGMはもちろんハワイアンが流れる。南の島の夜をイメージした、幻想的でムーディな雰囲気で、娘と二人の親子連れには少々ミスマッチである。
 
さっき見たフラの衣装のひとつ、ムームーをまとったお姉さんに席へと案内され、メニューを開いて自分はビールと肴、娘には晩御飯を選ぶことにする。ビッグオニオンフライ、フライドココナツシュリンプ、アボガドディップなどに並び、ハワイの前菜「ププ」、ハンバーグと目玉焼きを載せた丼「ロコモコ」、マヒマヒ(シイラ)のフライに、日本にルーツがあるという餅粉で揚げたモチコチキンといった、ローカル食が強い一品も魅力的だ。
 
さらにメニューには、江ノ島釜揚げシラスに湘南海鮮丼、そして各種カレーメニューがバリエーション豊富に揃っている。そもそもこの店、湘南のカレーショップ「珊瑚礁」から独立した方がやっていて、片瀬海岸とみなとみらいにも店舗展開している。人気店の珊瑚礁のカレーと聞いて、ビールとカレーの組み合わせにもつい、惹かれてしまう。



南国ムードあふれる店頭。テーブルには砂浜のジオラマが(右)


 とはいえ、ここは本日のお題に忠実に、自分はポキサラダと、ハワイの地ビールから「ビッグウェーブ」。娘はおもちゃ付きのキッズプレートを注文する。さらに卓上の「限定」の文字が気になって、アヒの串焼きも2本お願いした。先に運ばれてきたビッグウェーブは、ハワイらしいブルーのラベルで、グラスはなくラッパ飲みする仕組み。やや甘めでフルーティなのが、かつて飲んだシンガポールやインドネシアのビールに似ている。娘はテーブルに組み込まれた、砂浜のジオラマが気に入ったようで、ミニサイズのビーチに並ぶ貝殻をじっくり眺めている。
 ビールが半分進んだところで、アヒの串焼きとキッズプレートが運ばれてきた。アヒとはマグロのことで、現地直送のマグロを特製のハワイアンソルトで仕上げてある。ひと串グイッとかじると、ちょうどレアの火の通し加減。塩ダレにはほんのり酸味とコクがあり、マグロの味がガッチリと引き出されている。ゴマと梅の風味がさっぱり、梅ジソの焼き鳥のようでもありちょっと和風テイストのよう。串焼きをグッ、ビールをラッパでグイッといけば、気分は南の島のオープンテラスか?



パイナップル型の皿のキッズプレート(左) アヒの串焼きと地ビール「ビッグウェーブ」(右)


 
続いて運ばれてきたポキサラダは、大きな貝殻が器になっていて、南国らしいというか豪快というか。「ポキ」とは、マグロの赤身など刺身をぶつ切りにして、レタスや玉ねぎ、海草とまぜ、醤油やごま油のタレで合えた、代表的なハワイ料理のひとつだ。貝殻の中はマグロブツとアボカド、千切りレタス、青ネギ、トマトと野菜が盛りだくさんで、マグロ海鮮サラダといった感じである。
 マグロから口にすると、ドレッシングがからめてありピリッ。香辛料がいろいろ使われているようで、結構スパイシーなサラダである。ねっとりとトロのような味がすることで、アメリカでは寿司ネタにもなるアボカドが入っているおかげで、赤身のマグロブツなのにトロを食べているような、得した気分がする。
 
辛いもの好きの娘に、マグロとアボカドを少しおすそ分けした代わりに、キッズプレートのカレーをひと口味見させてもらう。珊瑚礁の鎌倉店は何度か訪れたことがあり、長時間煮込んで2日間寝かせた、真っ黒で濃厚なルーがくせになったものだ。このカレーもこってりまろやかで、子供向けなのか甘くフルーティな味わい。飲んだ締めに、懐かしのカレーを頼んでみようと思ったが、ボリューム満点のポキサラダを平らげたらすっかり満腹に。魚と野菜、そしてあっさり塩ダレで、ヘルシーにお腹いっぱいとなった。

 帰りの電車の中で、キッズプレートについていたおもちゃの袋を開けると、文具セットのキャラクターが「リロ&スティッチ」なのが、なかなか細かい。思わぬおみやげに喜ぶ娘に、「フラダンス、やってみる?」と聞いてみたら、「う~ん…」との反応。あの衣装と振り付けがちょっと恥ずかしいらしいく、「フラガール」でも「ケツ振れねえ」「ヘソ丸出しでねえか」と、のダンサー募集のシーンで女の子たちが逃げ出していたっけ。
 ということで、娘の目指せ・蒼井優は、本人がのらずにあえなく断念となった。それではチアダンスでがんばってもらって、目指すは松浦ゴリエちゃん!(ちょっと古いか?)。 (2008年7月27日食記)


魚どころの特上ごはん80…銚子 『さかな料理みうら』の、希少で高価なイワシ尽くし

2008年08月20日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん


 
ここ数年、イワシの漁獲量が極端に減り、問題になっている。日本のマイワシの漁獲量は、
80年代の豊漁期には年間400450万トンを数えていた。しかし、その後は減少の一途をたどり、90年代に入ると5070万トン、さらに200年代になってからは、4~5万トンで推移という状況。最盛期から10年間で10分の1に、さらに次の10年間で、わずか1%になってしまったのである。
 
イワシの水揚げ量が日本一、そして、総水揚げ量の約半分をイワシが占める銚子を訪れたのは、イワシの不漁がピークの頃だった。ポートタワーに近い銚子第二漁港を訪れると、ちょうど巻き網船が水揚げ作業を始めたばかりだ。傍らで眺めていると、クレーンで吊った大きなタモ網で、船倉から大型トラックの荷台へと、イワシが積み込まれていく。網から岸壁へこぼれ落ちたのをカモメが狙い、中にはビニール袋片手に、一緒に拾い集める地元の人の姿も。

 
そんなのどかな水揚げ風景の一方、銚子のマイワシも水揚げ量の減少が深刻だ。8090年代前半に年間1519万トンだったのが、2000年代に入ってから1~2万トン前後と、こちらも10分の1である。利根川の河口に位置する銚子第一魚市場へと引き返して、界隈の鮮魚店を散歩していても、イワシに関してはいい話題がない。
 
「この間、水揚げをやっていた巻き網船は、40トンの漁獲のうち、サバやアジなどを分けて残ったマイワシは、たった40キロだけだったよ」と、鮮魚店街の中の1軒、『三浦丸』の店の人がこぼす。ほかにも、巻き網1回でザル1杯ぐらいしかマイワシがとれない。セグロイワシが100トンとれた時も、マイワシは大振りの樽1杯ぐらいしか入っていなかった。など、不漁にまつわる話は止め処ない。

 イワシの話が続きながら、店のおばさんは、店頭に並ぶ品々をあれこれと説明してくれる。肝心のイワシも、セグロイワシの丸干しに並んで、マイワシの丸干しもちゃんと置かれている。銚子で水揚げされるイワシは、主に3種類。セグロイワシはカタクチイワシとも呼ばれ、煮干にされる小振りのイワシ。ウルメイワシは丸干しやメザシで知られる、中型のイワシである。
 
そしてマイワシは大きさ別に呼称があり、1520センチ程度が「中羽」、20センチ以上が「大羽」と呼ばれる。生干しのマイワシは、ちょうど中羽ぐらいの大きさで、ひと箱15匹ほど入って1000円ちょっと。セグロイワシのほうは、マイワシの3倍以上入っているのに、値段は半分程度だ。

 
よくとれていた頃に比べると今は値段が10倍近い、との店の人の話によれば、マイワシの浜値はかつてキロあたり100円もしなかったのが、近頃は500円ぐらいから、高い時には1000円を超えることもあるとか。「下手すりゃ、鯛よりも高いよ」との言葉通り、マイワシは今や、高級魚の仲間入りをしたのかもしれない。
 
そんなマイワシの丸干しは丸々と太く、胴に黒い星がきれいに輝いている。鮮魚よりも長持ちするよ、軽くあぶるだけでうまいよ、との勧めに、ひと箱買っていこうかな、とひかれてしまう。ついでにたっぷり入って値段も割安な、セグロイワシの丸干しもひと箱お願いしたら、合わせて随分おまけしてもらった。セグロイワシはともかく、漁獲量が少ないマイワシまで安くしてもらい、恐縮である。



三浦丸の店頭。銚子周辺の近海魚が、鮮魚・加工品とも様々揃う



 
店の2階は活魚料理屋になっており、おまけしてもらったお礼に、その『さかな料理みうら』で食事をすることにした。階段を登って奥のテーブル席へと落ち着き、品書きを開くと、銚子漁港で揚がった地魚の料理が充実している。店の人によると、春~夏は天然の岩ガキ、秋はサンマ、冬はアンコウなどが店の看板料理という。
 
そして銚子の看板料理といえば、やはりイワシ料理は欠かせない。単品料理もいくつかあるので、かわりにイワシの刺身と、イワシ天ものった市場天丼を頼む。まずは刺身を肴に、ビールの中ビンをグラスに注いでグッ。ピカピカ光る薄ピンク色の刺身は時節柄、脂は控え目で、あっさりと上品な風味。鮮度がいいから香りが甘く、小骨が柔らかいので実に食べやすい。一方、天丼にのるイワシ天は、刺身より身がたっぷりついており、柔らかくほっこりした味わい。こちらは青魚独特の香りが強く、濃いめのつゆとのバランスがいい。

 
空のグラスに、通りがかった店の人がビールを注いでくれたので、銚子で揚がるマイワシの漁場はどのあたりですか、と話しかけてみた。するとすぐ沖合、岸から漁船が見えるぐらい近いよ、と教えてくれた。年中とれる魚だけど旬は5~6月。特に梅雨時のイワシは脂ののりがよくて最高、と話すように、この頃のイワシは「入梅イワシ」の名で珍重される、銚子の期間限定のブランド魚介なのだという。
 
ここ数年は不漁だが、マイワシの漁獲量の増減には周期があり、過去およそ数十年~百年の周期で漁獲量が増減している。さかのぼって数字を追うと、明治中期から大正期まで不漁の後、昭和初期に年間160万トンほどの水揚げがあってから、豊漁が戦前まで続く。それが戦後になると、30年近く不漁。そして昭和40年頃からは、年間400万トンの水揚げの年があるほどの豊漁期となる。90年代から2000年になり、深刻な不漁期に入ったことは、前述の通りである。
 
こうした豊漁、不漁の原因は諸説ある中、黒潮の流れの変化や地球温暖化による気候の変動で、マイワシの産卵場や稚魚の生育海域の環境が影響を受けた、というのが一般的だ。平成に入ってからの不漁も、黒潮の大蛇行の影響で、海水温が上昇して餌のプランクトンが減少したり、稚魚が流されて餌場に行けなかったりしたことが、主な原因といわれている。中には捕鯨禁止措置のため、増えすぎたクジラがイワシを大量に捕食したせい、という意見も。



市場天丼は、イワシの天ぷらほかボリュームがある


 貴重なイワシ尽くしの食事に満足して、銚子駅へ引き返す。途中、駅前の商店街の一角の「サーディンファクトリーで、缶の中で熟成する「缶熟」が売りのイワシの缶詰を3つばかり購入。銚子駅へと向かうその姿は、片手にイワシの缶詰が入った袋を提げ、もう片手には、イワシの丸干し入りの大箱をふたつぶら下げて、と大荷物。みやげのイワシはたっぷり大漁で、帰りの列車に乗り込むことになりそうである。(1月中旬食記)


魚どころの特上ごはん79…高知 『国民宿舎桂浜荘』の、藁焼きカツオのタタキ

2008年08月17日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 

 
 「はい3本!」「では5本!」
 威勢のいい掛け声の後には、杯をグイッと飲み干して、さらにその繰り返し。南国高知・坂本龍馬ゆかりの桂浜に面した、『国民宿舎桂浜荘』での宴席では、「箸拳」の掛け声が各所で飛び交って、盛り上がりを見せている。
 この日は高知での酒席ということで、いつも以上にしっかりと気合を入れて臨んだ。何といっても、土佐は酒どころであり、豪快な「いごっそう」の気質で知られる。土佐で言う少々は「升々」を意味する、地元の人は朝や昼から飲み始め、ペースは落とさずそのままつぶれるまで飲み続ける、など、日本屈指の酒好き、酒飲みの地であるイメージが強い。今日の宴席の参加者の半分近くは、地元の方というから、土佐の酒飲みのペースを体を張って? しっかりと楽しんでみたい。

 隣り合った、高知で観光土産の店をやっている方に、挨拶とともに地酒「土佐鶴」を酌される。返杯しようとすると、「返杯は、それを空けてだよ」。土佐では日本酒は勧められたら、「一気空け」が当たり前。また、同じ杯を使って差しつ差されつ、が当地流なのだそうである。さっそく自分の杯をサッと飲み干して、それを相手に渡してご返杯。
 高知の銘酒といえば「土佐鶴」のほか、「司牡丹」「酔鯨」あたりが一般にも知られている銘柄だろう。高知県には18の酒蔵があり、一般の辛口よりもさっぱりとした淡麗辛口のため、新鮮な魚介料理に合うように思える。
 名物のカツオのたたきや皿鉢料理といった、土佐湾で揚がる魚介を使った料理が根付いているのも、酒との相性に関わりがあるのかもしれない。この日の卓にも、カツオや鯛の刺身に大きな伊勢海老、さば寿司に海苔巻きなど田舎寿司、さらに各種天ぷらや煮物などがあふれるほどのった大皿が、卓にいくつもドン、ドン、と並んでいて壮観だ。
 一説によるとこの皿鉢料理も、酒飲み向けに生まれた料理なのだそうである。土佐の酒飲みはこの大皿料理と、あとは酒さえあればオーケーで、宴席が始まったらこれを好き勝手に小皿に料理を取りながら、ひたすら飲む。自分も、好き勝手にやらしてもらっているが、隣席の人と話しては杯に酒を注がれ、飲み干しては返杯、とやっていると、この大皿料理よりも酒のピッチのほうが、勢い上がっていってしまう。

 それを繰り返していると、座が盛り上がるに連れて次第にきつくなってきた。先方は酔いが回ってなのか、それとも確信犯か、ふと見ると返杯がビール用の大きなコップに並々と注がれてしまっている。
 このペースに合わせていくには少々大変そうなので、目先を変えようと、無謀にも土佐の酒席の座興を先方に挑むことに。土佐の伝統的な宴会遊びである「箸拳」である。2人対戦で行い、袖元に隠して差し出されたお互いの箸の数の、合計を言い当てるゲームで、2連敗したほうが杯を空ける決まりになっている。板場に「塗り箸を3組お願いしま~す」と声をかけただけで、「は~い。で、お銚子は何本お持ちしますか?」と、さすが分かってらっしゃる。
 
やり方は、6本のぬり箸を互いに3本ずつ持ち、交互に本数を隠して場に出した後にオープンして、合計の本数で勝負が決まる。先手は合計が3本に、後手はか5本にれば勝ちで、どう出させるかの巧妙な駆け引きが勝負を分ける、酔った頭でやるにはなかなかの心理戦でもある
 
自分は1本を隠して、「3本!」との掛け声でまず先手。後手の隣席の方も、数本隠して「5本!」と掛け声。オープンしたら先方は2本所持、見事自分の勝利である。結局、結構勝ってしまったため、宴の後半はあいにくというか幸いというか、あまり飲まずじまいで済んだ。続々加わってきた、地元の人同士の対戦は、勢いや独特の節、しぐさがあり、郷土芸能風でなかなか見ものだ


   
左は箸拳につかう塗り箸。右は卓に置けない「べく杯」 ※画像はイメージ


 
ほかにも、刺身のつまの菊を、盆の上に逆さにした猪口のひとつに入れ、囃子とともに盆をまわして順に開き、花をあてた人が開いている杯全部に注がれて飲む「菊の花」。底が天狗やひょっとこの面を模していて、安定が悪く飲み干せないと卓に置けない杯「べく杯」など、とにかく酒を飲む方向につながる座興が、まだまだいろいろと続いている。
 
「開けて楽しい菊の花~」の囃子とともに、盆が回ってくる頃には、自分は土佐ペースにダウンの様相である。こういう時ほど、結構「当たり」を引いてしまうほうなので、戦々恐々と盆を待つが、つぶれてもここに宿泊するのだから、誰かが部屋に引きずっていってくれるだろう?

 土佐の酒の質がいいのか、楽しく気分良い宴席だったおかげか、翌朝は何とか二日酔いを免れた。昨晩の皿鉢料理に続き、この日も土佐の名物料理が楽しみだ。カツオのたたき、それも藁焼きのタタキで、この宿では豪快な藁焼きの実演を、見物できるのである。
 
昼食時、太平洋を一望するレストランへと足を運ぶと、すでにテラスには大きなドラム缶が据え置かれていすぐに板場から、節におろされたカツオがのった皿が運ばれてきたので、自分も外のドラム缶の脇へと移動。炎にあぶられるカツオの迫力ある様子を、直近で見てみることにする。
 
ドラム缶の中の藁に火をつけられると同時に、「てっきゅう」と呼ばれる大きなフォークのような道具節がのせられ、ドラム缶の上にかざされた。最初のうちは、ブスブスと白煙が上がる程度だったのが突然、真っ赤な炎がバッ、と一気に立ちのぼりビックリ。高さ1~1.5メートルほどあるだろうか。



藁焼きのタタキは、冷水で冷やさずに頂く


 
カツオのタタキはもともと、漁師が浜でカツオの皮目をあぶって食べた「焼き切り」という料理が起源とされている。あぶることで脂を適度に落とし、脂と身の旨みを引き出し、さらに殺菌作用もあったのだという。当時は浜の松葉を燃やして焼いていたといわれ、現在ではガスや炭火であぶる中、藁焼きはもっともタタキに適した調理法である。
 
その大きな理由は、高火力で瞬時に熱を加えられること炎が最も上がった短期間に、表面だけをむらなくあてるのがポイント、と焼き手の方が話す。藁はストロー状の構造になっているため燃えやすく、瞬時に800度近い高火力となるとか。そのため、火が通りすぎないようにするのが難しく、確かに真横で見ているこちらも、あぶり焼きにされているように熱いぐらいだ。
 
節の外側がほんのり薄茶色になったら、一度返して反対側もあぶる。1~2分で炎からおろされた節は、そのまま調理台へと運ばれていった。

 
そして氷水に浸して熱を冷ましで、と思ったら、そのまま包丁で切られていくではないか。通常、店で出すタタキは、焼き上がってから客に出すまでに時間があるため、身の中まで熱が回ってしまう。それを防ぐために、普通は焼いた後に氷水で冷やすのだが、藁焼き実演では炎から下ろしたのを手早く切って、すぐにお客に出す。熱が芯まで回る前に食べられるので、氷水で冷やす必要がないのである。
 
という訳で、運ばれてきた器には、1センチほどと厚めに切られたタタキが、数切れ載っていた。箸でつまんでみると、外側はしっかり焦げ目がつき、中は艶かしいピンク色だ。薬味はっぷりのニンニクやネギ、タレは柚子酢や土佐醤油など、地域によって様々だがここでは生のニンニクスライスに、室戸の天然塩かワサビをつけて食べるのがまた、独特。さっそく塩を軽くつけて、ひと切れ頂く。
 
外側は焼き魚のようにホクホクと香ばしく、中は身がしっかり締まっている。中心は焼けていないが、ほんのり温かいぐらい熱が通っており、おかげで血のにおいはせず、甘味がじっくりと楽しめる。何といっても燻製の香りが強いのが、焼きたての藁焼きならではの特徴だ。いわば、スモーク鰹といった味わいで、燻された芳香がより、食欲をそそる。



外は高温であぶられて、中は生の絶妙の火加減


 今の時期のカツオは初ガツオは過ぎ、戻りガツオには早いため、脂が少なくあっさりしており、脂がのったカツオだとまた、印象が違うかも知れない料理長の話によると、土佐沖の戻りガツオの最盛期は、10月から11だそう
 
この季節に再訪したら、脂が上々でより炎を高く上げて焼かれる、藁焼きカツオのタタキが味わえるのだろうその機会にはもちろん、土佐の酒席にも再チャレンジ。昨晩以上のベストコンディションで、宴会の座興を全制覇を目指して挑みたいものだ。(6月中旬食記)


町で見つけたオモシロごはん121…港南台 『金沢まいもん寿司』の、北陸ネタの握り数々

2008年08月11日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

北陸ネタの握りのひと皿。上から赤ニシ貝、ホタルイカ沖漬け、ナメラ


 夏休みということで、この週末は上の息子が林間学校で出かけている。家内と娘と横浜で所用を済ませた帰り道、3人だけなら夕食をどこかで済ませて帰ろうか、という話に。
 娘は外食となるとイチオシは寿司、とリクエストは決まっている。寿司といってもカウンターではもちろんなく、ジュースもスイーツやフルーツも食べられる、回るヤツ。いつもは全皿100円のところで、安心して好きに食べさせているけれど、今日は食べ盛りのがひとりいないこともあり、ちょっといいネタを扱うところへ行ってみることにしようか。

 地元でネタがいい回転寿司といえば、「おしどり寿司」という人気店がある。地元相模湾や東京湾で水揚げされた、地魚を積極的に使っていることで評判で、週末の夕方となると1時間以上待ちもざらの大混雑。今日も夏休み最初の週末ということで、長時間待ちになりそうな予感だ。
 そこで、この日は昨年末に行って感じが良かった、『金沢まいもん寿司』を再訪してみることにした。JR根岸線の港南台駅からクルマで5分ほどのところにあり、環状3号線沿いのレストランが集まるモールにある。エレベーターを出ると、打ち水がした石畳のアプローチに、赤壁に赤い格子の町や風の建物と、まるで金沢の茶屋街にある料亭を想像させるたたずまいが目を引く。


北陸ネタの品書き。添えてある文句が、食欲をそそる


 こちらも店内はやや込んでおり、表示によると「只今の待ち時間30分」とある。待ちながら品書きを眺めていると、「北」のマークがついたネタは北陸直送とあり、手むきの北陸甘エビ、ズワイガニの底引き網でとれるガスエビ、幻のエビ・白エビなどが並ぶ。さらにナメラ、赤ニシ貝、ノドグロなど、北陸屈指の高級地魚もそそられる。
 そんなあなどれない品揃えのこの店、金沢港や氷見港、能登で朝とれの、日本海や富山湾のネタを売りにしている、北陸の本格派回転寿司である。金沢と富山を中心に店舗展開をしており、この港南台店は2軒しかない首都圏の支店のうちの1軒。回転寿司とはいえ、北陸のネタを食べられるのが興味深いが、そこは高級回転寿司。地物はどれもひと皿400円以上、しかもネタによってはひと皿1カンだから、1皿100円均一の店のように、調子にのってどんどんいくと大変だ。

 ようやく順番が来て、通されたのは回転コンベアから離れた座敷席だった。これならオーダーごとに握ってもらえるからいいな、と大人は喜んでいるが、回ってくるのをとるのが好きな娘は少々不服そう。とりあえず好物のイクラ、マグロにエビを頼み、何とかご機嫌を直してもらう。
 自分はまずはしめ鯖と、北陸つながりでホタルイカの沖漬けの軍艦巻きを注文。醤油漬けでトロトロ、ワタがこってり複雑にこなれたいい味の沖漬けに、締め具合が浅く脂の甘さがしっかり残るしめ鯖は、酒飲み向けのネタ、といった感じである。
 さらに品書きを見ていると、各地の有名地魚もいくつか揃っているよう。佐賀のメジマグロをはじめ、大分のシマアジ、愛媛の真鯛、下田の金目鯛など、北陸ネタを頼んでみる前に、ついつい誘われてしまう。アジ、しめ鯖、シマアジの「光り物三昧」や、大トロ、中トロ、赤身の「マグロ三昧」にも手が出てしまい、みんなで分けながらどんどん頂く。
 調味料も能登の薄味醤油を使っていたり、白身には能登の天然塩を使っているなど、このあたりにもご当地へのこだわりだろうか。酢飯が小振りなのも特徴で、様々な種類が食べられてうれしいような、その分皿の枚数がいってしまうので、予算的にこわいような。


最初に頂いたホタルイカ沖漬け(左)。締めのワサビ巻き(右)は涙モノの刺激


 「ここからコンベアのをとれるよ」と、娘は座敷客がとりにこれる場所を教えてもらい、さらにサーモン、かっぱ巻きと持ってきては嬉しそうにしている。自分も目につくものをどんどんオーダーした挙句、お目当ての北陸ネタを頼む前に満腹になってしまっては、元も子もない。
 ということで、ここで北陸ネタからノドグロとガスエビに赤ニシ貝を注文した。ところが、ノドグロとガスエビはあいにく品切れとのこと。
 ガスエビは鮮度落ちが激しく、水揚げ地でしか味わえない希少なネタで、ボタンエビよりも大振りで濃厚な甘みが特徴。ノドグロは正式名をアカムツといい、地元の漁師が「白身のトロ」「魚神」と呼ぶほどの、最高の白身の魚といわれる。ともに話には聞いていたので、並んでいるときから決めていただけに残念無念。そこでピンチヒッターには、ガスエビの代わりに白エビ、ノドグロの代わりはナメラを指名することに。白エビと赤ニシ貝は軍艦巻き、ナメラは握りで出された。

 白エビは現地、富山湾に面した岩瀬で食べたことがあり、富山湾でしかとれない希少かつ優美な姿のエビである。名の通り、透き通るような白色をしており、軍艦巻き上に10匹以上はのっているだろうか。小さいながらも口の中でブッツリ、プリプリとしっかりエビの味で、艶かしい甘さの中に、ほんのり渋みがあるのが特徴。束になってかかってきて、大車エビ1本分のインパクト、という感じである。
 白エビが「富山湾の宝石」と称される一方、赤ニシ貝は「北陸のルビー」と称され、連続して北陸の宝石魚介を賞味することに。こちらはザクッ、コリッとした歯ごたえで、貝なのに磯の香りは控えめ、その分身の旨味が濃い。上品な白エビに対し、こちらの宝石は少々ワイルドかも。
 そしてナメラは、白身のもっちり感が特徴である。口の中ではまるで吸い付くような食感、味は究極の淡白で、ほんのり甘い香りが漂う程度。あまり聞きなれない魚だが、高級魚であるハタの一種で、確かに気品を感じさせるひとネタである。


北陸モノの1カン、白エビ(左奥)は金箔のせ。右は締めの加賀レンコンのつみれ汁


 北陸ネタは確かに普通のネタとはひと味違い、もう数種、といきたいところだが、その前の頼み過ぎで少々満腹に、加えてテーブルの端に積み上げられた、皿の塔の高さも気になってきた。
 品書きによると、汁物も北陸ネタが揃っていて、自分は加賀レンコンのつみれ汁、家内はノドグロのあら汁を頼んで、寿司の終わりの締めくくりとした。鶏のつみれ団子の中にサクサクの加賀レンコンが練りこまれていて、まるで加賀会席の留椀のように落ち着ける。あら汁は対照的に、骨についた身や頭のゼラチン質がたっぷりで、漁師汁らしい素朴さ。普段、回転寿司で食べるときは寿司で満腹になることが多いけれど、この日は締めの汁物までしっかり頂いて、ごちそうさま。

 ローカルな魚介でカラーを出すというのは、高級回転寿司の展開方法のひとつだろう。関東周辺では沼津、三崎、銚子などを店名に出している回転寿司もあるけれど、ここではそれよりちょっと遠方の魚どころの寿司が味わえるのが売りなのかも。
 地魚寿司を頂き、椀物も堪能して、そろそろ店を後に、と思ったら、回転コンベアから娘がデザートのスイカを運んできている。品書きには加賀のサツマイモ、五郎島や大納言小豆を使った、名物の「こだわりプリン」もあり、別腹のデザートも北陸ネタで揃えてみようか。(2008年7月21日食記)