ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん47…横浜・横浜スタジアム 『崎陽軒』の、野球観戦に欠かせないシウマイ

2006年06月08日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 横浜に住む人にとって、「ふるさとの味」とは何だろうか。自分が挙げるとすれば、『崎陽軒』のシウマイが思い浮かんでくる。横浜駅など市街の主な駅のホームには、赤い箱のシウマイやシウマイ弁当を売る崎陽軒の売店がキオスクと別にあり、中では真っ赤なチャイナ風コスチュームのシウマイ娘(娘…でない人も多いけれど)がお出迎え。お昼ご飯にシウマイ弁当を買ったり、仕事から帰ってビールのつまみにシウマイを買って帰ったり、と、旅行に行くわけではないけれど普段から結構お世話になっている気がする。地元、テレビ神奈川で流れる「おいしいシウマイ、崎陽軒~」のCMソングは、神奈川県民なら口ずさめる人も多いのでは。

 崎陽軒のCMが印象深いのは、このローカル局でよく見ている、横浜ベイスターズ(かつては横浜大洋ホエールズ)の試合の合間に流れていたせいもある。ごひいきのこのチームの試合を、たまに横浜スタジアムで観戦することもあり、そのときにシウマイはお決まりのアイテム。先日、息子と二人で横浜スタジアムへ久々に観戦に行った際も、関内駅を降りるとスタジアムへ急ぐ前に崎陽軒の売店へ直行した。自分はシウマイひと箱にビールのロング缶、息子は弁当をあれこれ検討の上、「中華弁当」に決定。1塁側の内野スタンドへ落ち着くとベイスターズが勝っているものの、すぐさま相手チーム・日本ハム新庄選手のホームランが飛び出し、ゆっくり弁当どころではなさそうな試合展開である。

 崎陽軒の創業は明治41年と古く、文明開化の地・横浜にあって、外国と日本の食文化を融合させた、独自の料理を目指してきたという。そんな中で横浜ならではの名物を、とシウマイが作り出されたのは昭和3年のこと。横浜でシウマイというと、中華街との結びつきが想像されるように、当時の崎陽軒の社長が中華街のシューマイを各店食べ歩いて、味のヒントを得たといわれている。といっても崎陽軒の「シウマイ」は、中華料理の「シューマイ」とは味も製法はもちろん、表記の仕方も? 異なるところが面白い。

 この日の試合は壮絶な打ち合いで、息子のごひいきの佐伯選手がすぐにソロホームランでお返し。そして私が期待の若手、吉村選手も2本目の特大ホームランを放ち、気分も良くなったところでようやくビールとシウマイをあける。崎陽軒のシウマイの大きな特徴は、弁当や持ち帰り向けに「冷めてもおいしい」という点。豚肉に加えて、オホーツクのホタテの貝柱を加えることで、独特の旨味と味わいを出しているという。おかげでスポーツ観戦のお供にはもってこいで、箸で弁当を食べていると肝心のハイライトシーンを見逃すこともあるが、これなら楊枝1本でつまみながらゲームに集中できる優れものだ。

 東京ドームではドーム弁当やジャビット弁当、神宮球場には霞ヶ丘弁当にホームラン弁当、さらに千葉マリンでは選手ゆかりの弁当など、野球場には名物弁当あり。息子の中華弁当はスタジアムの売り子も売っている、横浜スタジアムのナンバーワン人気の弁当である。エビチリにエビマヨ、カジキの中華揚げに五目XO醤炒めなど、本格的な中華惣菜が盛りだくさんで、のんびり食べては、ホームランのたびにバンザイと忙しそうだ。多村選手の本日2本目のホームランも飛び出し、ベイスターズの圧倒的な展開にスタンドは大盛り上がり、ビールもシウマイも試合は7回なのになくなってしまい、この分では160キロピッチャーの抑えのエース、クルーンが出てくるまでに酔いが醒めてしまう。

 観戦の記念に、息子にクルーン選手のサインボールを買うついでにスタンドの売店に寄ると、スタジアムオリジナルパッケージのシウマイ弁当を発見。ちなみにシウマイ弁当はスタジアムでの横浜球団公認弁当とのことで、横浜ふるさとの味と、我が横浜ベイスターズとのコラボが妙にうれしくなり、ビールとともにこれも購入。シウマイ弁当と追加のビールでさらに気勢を上げて応援し、今日のところは圧勝すれば、今シーズンダントツの最下位という現実を、ひととき忘れることができるかも(泣)…。(2006年6月9日食記)

町で見つけたオモシロごはん46…横浜・みなとみらい21 『開港祭』で見つけた、神奈川の地酒あれこれ

2006年06月07日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 私事ながら6月1日は結婚記念日、と先日の話で記したが、6月1~2日は同時に横浜港の開港記念日でもある。式を挙げた日は、会場の横浜グランドインターコンチネンタルホテルに隣接する臨港パークは「開港祭」で盛り上がっていて、様々なイベントを行っていたり、泊まったホテルの部屋から花火大会が見渡せたりと、賑わいが挙式に華を添えていたことが思い出される。そのせいか、毎年記念日にはお祝いも兼ねて、このイベントに遊びに来ている。ずっと子連れだったが、今年は子ども達は学校だったり幼稚園へあがったりで、10年目にして初めてカミさんと水入らず? でみなとみらいへと繰り出していった。

 横浜港に面した臨港パークの会場には様々なブースや露店が並び、初日の午前中なのにまずまずの人出である。ちょっとしたクイズやアンケートでグッズをもらえたり、試供品のプレゼントをやっていたりと、あちこちで色々なものがもらえるのが楽しい。コカコーラのイベントではルーレットでグッズが当たり、宅配業者のスロットゲームにチャレンジしてみたら子ども向けのおもちゃが大当たり。気をよくしてジャルのビンゴゲームでは機内食用のおつまみが、さらにボトルカバーを配る行列についていると長崎のブースで配っている薩摩揚げやかまぼこがもらえるなど、例年になく「収穫」状況はよろしいようだ。

 会場を小一時間歩き回ったところで、両手は入手したプレゼントやパンフレットでいっぱいになってしまった。イベントが多いエリアをちょっと離れて、会場の奥のエリアへも足をのばしてみる。お茶やコーヒー、パンなど、神奈川県のメーカーや生産者のブースがいくつか並び、いわば県の地場産品を扱っているよう。県内各地の商店街が加盟する商店街連合会で使えるカードを作ったら、商品券を2000円分もらえたので、せっかくらだからこれらの店で地の品物を買っていくことにしよう。すると目に入ったのは、酒瓶がずらりと並んだ一画。神奈川県内の地酒らしく、津久井町の「巌の泉」、伊勢原の「相模大山」、相川町の「祭り晴れ」など、全国あちこちの銘酒を旅で飲み歩いていた割には聞き慣れない酒ばかりだ。前掛けを締めたお兄さんに「いかがですか、神奈川のお酒です」と勧められてひと口試飲。ラベルを見ると「琴姫」という酒で、程良い辛みがあり、くせがなくなかなかいける。

 「神奈川は箱根や丹沢など、いい湧水に恵まれています。特に丹沢山系の水はまろやかなので、酒の仕込みに向いているんです」と話すお兄さんは、都筑区の港北ニュータウンに店舗がある『酒のうちの』の方とのこと。神奈川県の酒造メーカー15蔵の蔵元から直接取り引きしているだけに、神奈川の地酒の品揃えには自信があるという。水はもちろん、近頃は仕込みに使う米も酒米を県内でつくっているそうで、農家と契約し、産地から直接取り引きしたものを使っているのだとか。素材についてはまさに生粋の、神奈川の地酒といえるだろう。先ほどの「琴姫」も、松田町にある中澤酒造の自信作。丹沢山系の伏流水を仕込み水に使い、酒米も社員が田植えから収穫まで関わったという有機農法の酒造好適米を使用。すっきりした飲み口が、実に後を引く。

 もらったチラシには、ほかにも県内各地で醸造されている銘柄が記されており、海老名や厚木、茅ヶ崎など、ベッドタウンにも蔵元があるのには驚いてしまう。勧められるがままに試飲をお代わり、今度はなるべく辛口のを頼むと、「火牛」という銘柄を勧められた。純米酒にこだわる小田原の相田酒造店の酒で、県下で唯一、箱根水系の水で仕込んだ酒とのこと。日本酒度プラス5と、かなり鋭角的に鋭い味わいだ。開港祭の特別価格でいずれも1000円なので、どれか1本買っていくことにして迷うが、ふくらみのある味わいが気に入ったので「琴姫」に決定。

 自分の好きなものに商品券を1000円分使わせてもらったので、あとはカミさんにまかせて向かいの和菓子のコーナーへと足を運んだ。戸塚に店舗を構える「横浜風月」のブースでは、昔戸塚宿の商人が盗賊を避けて山中に小判を隠したことに由来する「小判最中千両箱」を試食する。小判の形がユニークで、自家製の甘さひかえめなあんがなかなか上品。ほかの菓子との詰め合わせを、こちらも1000円で購入した。それぞれ好みの品を入手できたし、もう両手が荷物でいっぱいということもあり、少々早めだがこのあたりで会場から引き上げることに。ところで酒は手に入れたものの、肴のほうが少々心もとないようだ。JALのイベントで手に入れた機内用のおつまみと、長崎のかまぼこがあるので、今日のところはよしとするか。(2006年6月1日食記)

町で見つけたオモシロごはん45…横浜・中華街 『酔仙酒家』の、深夜に頂く中華定番コース料理

2006年06月03日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 以前、夜遅い時間に中華街で食事しようということになり、行き当たりばったりで市場通りのとある店に入ったことを書いた。テレビや雑誌で紹介されたらしい店のようだったがかなりぞんざいな対応をされ、別にあった本命の店のほうに行けば良かったかな、と後でちょっと悔やんだものだった。そこは中華街でも遅くまでやっていることで知られる店で、平日でも夜中の3時ごろまでは開いている。そのため料理人など中華街で働く人が、店を閉めてから食事しにくることもあるとか。本職の料理人たち御用達の店とは、何だか期待がもてる。

 そんな訳でカミさんとともに、再び夜の0時ごろに家を出発、目指すは横浜中華街。私事で恐縮だが、日付変わってこの日は結婚10周年の記念日である。日中はお互い仕事があり、ようやく落ち着いたこの時間に、ささやかながら食事をして祝おう、ということになった。吉浜橋近くにクルマを停め、西門通りを中華街のメインゲートである善隣門へ。いつもなら豚まん屋や雑貨の店などが並び賑わっているが、今ははどこもシャッターが閉まって閑散としている。そんな中、目指す『酔仙酒家』は、西門通りと福建路の角で、黄色い看板が煌々と照っている。こんな時間なのに、店頭では何と、中華まんやシュウマイなどの点心を売る売店が出ているのには驚きだ。

 さすがに店内には客の姿は1組だけで、一画では店の人たちがまかないの焼きそばを食べている。深夜ながら店の人に気持ちよく通され、中程のテーブル席へ。この間入った店で座らされた、トイレの真ん前の狭い卓とは違い、ゆったりと落ち着ける広さだ。メニューを開くと値段別にコースが数種類設定されていて、前菜と主菜、スープなどがそれぞれ選べる「セルフチョイス方式」になっているのが楽しい。相談の上、前菜を1皿、主菜を3皿に、スープとご飯物、さらにデザートつきのコースを注文。記念日だし、一番高いのにするか、とも思ったが、この時間にあまり食べ過ぎるのも心配と、それより2つ下の値段のにした。代わりという訳ではないが、紹興酒はいつもよりちょっと高いのを1本頼み、さっそくおめでとう、の乾杯。大きめのグラスに注ぎ、前菜のクラゲや蒸し鶏、チャーシューをつまみながらぐっとやると、値段のせいかいつも飲んでいるのよりもマイルドで厚みのある味わいで進む。

 10年間の思い出話? に花を咲かせながらグラスを傾けているうちに、料理の皿が順に運ばれてくる。この店は主に広東料理を中心に各種中国料理を出しており、200種を越えるという一品料理も評判が高い。遅くまでやっている営業時間だけでなく、家庭的な味付けにアットホームな雰囲気もあって、中華街の中では固定ファンの多い店という。コースで選んだ3皿は、細切り豚肉とピーマン炒めに酢豚、車エビのチリソースと、比較的定番のメニュー。エビチリは大きなエビがたっぷり入っていて、プリプリと熱の加え加減が絶妙だ。四川風の辛いのを想像していたら甘めのあんがかかっていて、酢豚と味付けが少々かぶってしまったか。細切り豚肉とピーマン炒め、すなわちチンジャオロースは肉に下味がついているなど仕事が丁寧で、シャッキリしたピーマンやタケノコに、旨みを封じこめた肉との相性が絶妙。定番メニューとはいえ、手の込んだ深い味わいである。

 さらにチャーハン、カニ肉と豆腐のスープと続き、カミさんはもう満腹といった様子だ。全体的に味付けが強くないのでこの時間でもどんどん食べられ、自分が残さず平らげてしまった。デザートのタピオカココナツミルクで仕上げて時計を見ると、もう3時前。店を後に、人通りのない通りを歩きながら、それにしても10年は長かったような、あっという間だったような、と思い返してみる。こうして旅をして、うまいものを食べてはあれこれ書いて、なんて好きにさせてもらっているのも、つくづくカミさんのご理解とご協力のおかげ… っていうあたりは、紹興酒の酔いが回り過ぎた雑感、ということにしておこうか。(2006年6月1日食記)

町で見つけたオモシロごはん44…大船 『観音食堂』の、マグロにアマエビ、カンパチの刺身定食

2006年06月01日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 JR大船駅を出ると、雨がかなり激しく降っていた。日曜日、しかも行き先は江の島なのに、用件は仕事の上あいにくのこの天気。少々滅入り気味の気持ちをリフレッシュするには、昼飯にはドン、とうまいものでも食べるに限る。大船は横浜郊外のベッドタウンで、駅前にはごみごみした感じの昔ながらの商店街が広がっている。傘がないためそれほど歩き回ることもできず、横断歩道を走って渡ってすぐの店に雨宿り。するとうまいことに食堂らしく、看板にはコーラの赤い柄、そして白地に『観音食堂』の文字が。駅前の一等地にあるにしては、何とも昭和レトロな風情満点の食堂である。

 暖簾をくぐり扉を開けると、入って左はテーブル席、右奥は広めの座敷にカウンターがある。ひとつ空いていたに腰掛け、さて何を頼もうか、と壁を見ると、各種魚料理が書かれた短冊がびっしりと掲げられているではないか。刺身はヒラメにシマアジ、カンパチ、カワハギ、さらに鯨なんてのも。天ぷらもアジやキス、穴子にメゴチにハゼと、江戸前や相模湾の地魚もあるよう。刺身に煮魚、塩焼きなど定食も各種あり、魚の品揃えはかなりのもののようだ。注文をとりにきたおばちゃんに「刺身定食」をお願いすると、「お茶でよろしいですか」。他のテーブルには親父さんがひとりずつ腰を据え、昼真っからビールの追加や焼酎のお代わりで盛り上がっている。隣に座った客も「冷や」と「生中」に、塩らっきょうとホタルイカ塩辛を注文。のどまで出かかった「中ジョッキ…」の言葉をこの後の仕事を思い出して飲み込み、「…ではなくお茶で」。ごゆっくりどうぞ、の声がうれしいような、酔客の中で針のムシロなような。

 その名は観光名所でもある大船観音からとっただろうこの店、市街でもかなり古い食堂で、かつてもうひとつの名所でもあった松竹大船撮影所に出入りする俳優や女優、撮影スタッフで賑わっていたという。何と言っても魚料理はピカイチで、刺身はもちろん焼き物や煮魚なども、素材を生かした味付けが折り紙付き。よって日曜の昼下がりというのに店内はほぼ満席、みんな好みの酒でうまい魚料理をつまみながら盛り上がっている。店内ではおばちゃんが3人、きびきびと接客しており、常連らしい親父さんとの会話も楽しげ。何の話か分からないが、「私たちもみんな独身よ~」などと歓声と笑い声が上がっている。テレビでは演芸番組を放映中、激しい雨が時折屋根をバラバラと叩く音が響くなど、何だか時間が止まったようなのどかな空気が漂っている。

 刺身定食の今日の魚は、アマエビとマグロとカンパチの3種盛り。「今日はいいカンパチがはいったから、いつもよりちょっとお得よ」とおばちゃんの言う通り、これで1000円しないのは確かに安い。トロトロのアマエビに、サラリ、ふっくらした食感のマグロ、脂がのってコクのあるカンパチと、大皿にたっぷりのった刺身を順に口に運んでは、ご飯をかき込む。飯も進むが、これでビールがないとは何とも殺生。鮮度も量も申し分なく、何だか港町、漁港の町の食堂にでもいるような錯覚に陥りそうだ。

 すっかり平らげてお茶を飲んで一息、すると隣の新客が小アジの唐揚げをつまみながら、大ジョッキをグイッとやっている。おばちゃんに聞くと、日曜は夜は20時までやっていますとのこと。帰りには東京湾の地魚の天ぷらを肴に、今度こそビールで晩酌だ、と思えば、江の島での仕事もさっさと片づこうというもの? (2006年5月7日食記)