かなり以前にここで焼肉屋を取り上げたときに、「焼肉屋ではここが我が家御用達の店」と書いたような気がする。子どもを抱えた家庭にとっては、ちょっとお高いジャンルの外食は子連れでも落ち着けること、加えて食べ盛りの子どもを連れていても予算的に安心できることが何より重要。さらに大人も納得の味ならば言うことなしだが、そんな条件にかなった店はなかなか見つからないものだ。勢い、焼肉とかステーキ、寿司など、ちょっとお高いジャンルの店ほど、一度条件に合う店が見つかれば、ついつい同じ店にいくことが多くなる。
で、寿司屋となるとお手軽なのは回転寿司、となる。我が家の場合、全皿105円を売りにしている「無添くら寿司」がこのところ人気で、4人で行ってビールを飲んでも5000~6000円程度で納まってしまうのは、何にせよありがたい。先日キリンビールの工場を訪れた、横浜臨海部のスタンプラリーの続きを翌週に行った帰り、夏休み中に続いたバイキングから趣を変え、晩ご飯は「まわる寿司」という流れとなった。臨時収入があってちょっと懐が暖かく、この日は私のおごり、を高らかに宣言。いざ、ごひいきにしている新杉田駅近くの「くら寿司」へと向かった。人気店のため、夕方早めに行かないと待つことになるが、まだ17時半ぐらいだから大丈夫、と訪れたところ、店をぐるりと囲む駐車待ちのクルマの列! 今までこんなに混んでいるのは見たことがなく、今日は敬老の日だからキャンペーンでもやっているのだろうか。
夕飯時直前でこれでは、クルマを停めるまでに1時間近くは掛かりそうなのでこの日は寿司は断念… といきたいところ、すでにすっかり気分は回転寿司モードになっている子ども達が納まりそうにない。そこで訪れたのは、自宅のすぐ近くにある『ジャンボおしどり寿司』。連休の最終日のためここも結構混んでいて、30分ほど待ってから掘り炬燵式の座敷へと落ち着いた。子ども達はさっそくコンベア側の席について、うれしそうに回ってくる皿を狙っている様子。でもここでは、いつもの「くら寿司」の調子で好きにとらせる訳にはいかない。確かにここも、我が家の御用達回転寿司の一軒だが、子どもが寝静まったのを見計らって家内と二人で食べに行く、といった感じ。つまり、ネタがいい分ちょっとばかり高く、皿も底値の100円皿にはじまり140円、180円、240円、280円、350円、400円、500円、550円、700円、そして1000円、と何も全部書き上げることもないか。とにかく、100円均一のくら寿司の勢いで、気ままにじゃんじゃん好きな皿をとられてはたまらない。私のおごり宣言は、あくまでくら寿司を想定した上での宣言である。
てな訳で、スタート前に子ども達にルール設定(?)と、「赤いふちの皿(=100円)、青(=140円)、緑(=180円)は好きにとって食べていいけれど、それ以外の色や柄の皿を取る場合は事前に申告すべし」として、それではいただきます。マグロにアマエビ、玉子、巻物など、それなりに楽しんでとっている様子で、ここはサビ抜きがないため、一丁前に板前の兄さんに直接オーダーしている。「活け」「朝とれ」「直送」と但し書きがあるネタは流しつつ、自分も400円皿の生サバではなくしめ鯖、240円皿のアオリイカは見送ってスルメイカ、ボタンエビもスルーしてアマエビへ。安い皿といってネタがイマイチということはなく、特にしめ鯖は脂がよくのっていて、この日一番の掘り出し物といった感じか。
回転寿司といえば、一昔前はいわゆる安かろう何とやらで、高価な寿司を手軽に食べられる分、味や食材の質には目をつぶって、といったイメージだった。よく言われるのが「代用魚」「加工」「化学調味料」の3つの問題。代用魚は文字通り、安い類似種の魚を使うことで、例えばアワビと名乗りつつ南米産のロコ貝、エンガワも正体はヒラメでなく巨大カレイのオヒョウ、クルマエビも東南アジアのブラックタイガーなど。加工については、さすがに近頃は人造イクラは見られなくなったものの、植物性脂を添加して脂ののりをよくしたり、白身をきれいに見せるため漂白したりといった手が加えられることも。そしてネタの旨みを補うため、何と醤油にあらかじめ化学調味料を加えるなんてのも。それがこのところのブームでは、様子が変わってきたよう。きちんとしたウニやイクラ、アワビ、中トロが手頃な値段で頂けたり、水揚げ直送を売りにするなど、従来のネタに加えてこうした目玉商品を揃え、ネタの質がかなり良くなっているようである。
このおしどり寿司は横浜周辺を中心に20店舗を構えるチェーンで、地の利を生かして地元相模湾や東京湾で水揚げされた、地魚を積極的に使っているのが売りである。しかも仕入れは業者任せではなく、自社の担当者が直接セリに参加して食材を手配するというこだわりようだ。この日もボードには、先ほどの松輪港水揚げのスズキや朝とれのトビウオに並んで、長井港の生鯖、直送の黒ムツなど、専門の寿司店顔負けの品揃えがうれしい。中には予算内カラーの皿にのったのもあり、自分が頼んだスズキはシャッキリした白身が瑞々しく、シャコも旨みが程良く身がホロリ。息子もこれはどうだろう、といいながらトビウオを頼んでいて、なかなか通のネタ選びである。この店は板場をぐるりと囲むようにカウンターが配置されていて、中央にある大きな生け簀では、活けの鯛やカンパチが元気良く泳いでいる様子も見える。
突然、店内にガランガランと鐘の音が響き、まな板に大きなマグロがドン、と置かれた。恒例のマグロ解体ショーの始まりである。マイクでの解説に従い、外された頭が運ばれ、私たちの目の前のカウンターへドン。子ども達は初めて見るマグロの大頭に驚いている様子だ。この店で使っているのは、生の本マグロかインドマグロ。この日解体されているのは中ぐらいのサイズで、さく取りされてすぐに握られ、お客の注文のたびにおろしたて、握りたてが運ばれていく。中でも限定品の頭肉、ほほ肉、カマトロは、できると同時に注文が殺到。安皿ばかりでなく、ちょっとは子ども達にいいところも味わってもらおう、とほほ肉の握りをひと皿確保した。頭肉、カマトロとともに、中トロや大トロに匹敵する柔らかさと脂ののりの、隠れたおいしい部位だ。軽くあぶってほんのり赤身が残るぐらいで、見たところレアのステーキのような感じ。見るとさっきのマグロの頭から、ほほの部分だけが欠けている。
という訳で、みんなそれなりに好きに食べて、おかげさまでごちそうさま。肝心のお会計がちょっと心配だったが、「ルール設定」が功を奏してか、4人で1万円に全然届かずに収まった。安くお手軽のため、子ども達との食事はいつもファミレスやファーストフード、寿司も回転寿司になってしまうけれど、小さいうちからきちんとした味を覚えてもらうためにも、たまにはちゃんとした店に行かないといけない。だから回転寿司ながら100円寿司よりもネタがちゃんとした、こうした店はちょっとありがたいか。まあ、100円寿司での遠慮のない注文の様子を見ている分には、カウンターのみのお店はまだちょっと怖いかも。(2006年9月18日食記)
で、寿司屋となるとお手軽なのは回転寿司、となる。我が家の場合、全皿105円を売りにしている「無添くら寿司」がこのところ人気で、4人で行ってビールを飲んでも5000~6000円程度で納まってしまうのは、何にせよありがたい。先日キリンビールの工場を訪れた、横浜臨海部のスタンプラリーの続きを翌週に行った帰り、夏休み中に続いたバイキングから趣を変え、晩ご飯は「まわる寿司」という流れとなった。臨時収入があってちょっと懐が暖かく、この日は私のおごり、を高らかに宣言。いざ、ごひいきにしている新杉田駅近くの「くら寿司」へと向かった。人気店のため、夕方早めに行かないと待つことになるが、まだ17時半ぐらいだから大丈夫、と訪れたところ、店をぐるりと囲む駐車待ちのクルマの列! 今までこんなに混んでいるのは見たことがなく、今日は敬老の日だからキャンペーンでもやっているのだろうか。
夕飯時直前でこれでは、クルマを停めるまでに1時間近くは掛かりそうなのでこの日は寿司は断念… といきたいところ、すでにすっかり気分は回転寿司モードになっている子ども達が納まりそうにない。そこで訪れたのは、自宅のすぐ近くにある『ジャンボおしどり寿司』。連休の最終日のためここも結構混んでいて、30分ほど待ってから掘り炬燵式の座敷へと落ち着いた。子ども達はさっそくコンベア側の席について、うれしそうに回ってくる皿を狙っている様子。でもここでは、いつもの「くら寿司」の調子で好きにとらせる訳にはいかない。確かにここも、我が家の御用達回転寿司の一軒だが、子どもが寝静まったのを見計らって家内と二人で食べに行く、といった感じ。つまり、ネタがいい分ちょっとばかり高く、皿も底値の100円皿にはじまり140円、180円、240円、280円、350円、400円、500円、550円、700円、そして1000円、と何も全部書き上げることもないか。とにかく、100円均一のくら寿司の勢いで、気ままにじゃんじゃん好きな皿をとられてはたまらない。私のおごり宣言は、あくまでくら寿司を想定した上での宣言である。
てな訳で、スタート前に子ども達にルール設定(?)と、「赤いふちの皿(=100円)、青(=140円)、緑(=180円)は好きにとって食べていいけれど、それ以外の色や柄の皿を取る場合は事前に申告すべし」として、それではいただきます。マグロにアマエビ、玉子、巻物など、それなりに楽しんでとっている様子で、ここはサビ抜きがないため、一丁前に板前の兄さんに直接オーダーしている。「活け」「朝とれ」「直送」と但し書きがあるネタは流しつつ、自分も400円皿の生サバではなくしめ鯖、240円皿のアオリイカは見送ってスルメイカ、ボタンエビもスルーしてアマエビへ。安い皿といってネタがイマイチということはなく、特にしめ鯖は脂がよくのっていて、この日一番の掘り出し物といった感じか。
回転寿司といえば、一昔前はいわゆる安かろう何とやらで、高価な寿司を手軽に食べられる分、味や食材の質には目をつぶって、といったイメージだった。よく言われるのが「代用魚」「加工」「化学調味料」の3つの問題。代用魚は文字通り、安い類似種の魚を使うことで、例えばアワビと名乗りつつ南米産のロコ貝、エンガワも正体はヒラメでなく巨大カレイのオヒョウ、クルマエビも東南アジアのブラックタイガーなど。加工については、さすがに近頃は人造イクラは見られなくなったものの、植物性脂を添加して脂ののりをよくしたり、白身をきれいに見せるため漂白したりといった手が加えられることも。そしてネタの旨みを補うため、何と醤油にあらかじめ化学調味料を加えるなんてのも。それがこのところのブームでは、様子が変わってきたよう。きちんとしたウニやイクラ、アワビ、中トロが手頃な値段で頂けたり、水揚げ直送を売りにするなど、従来のネタに加えてこうした目玉商品を揃え、ネタの質がかなり良くなっているようである。
このおしどり寿司は横浜周辺を中心に20店舗を構えるチェーンで、地の利を生かして地元相模湾や東京湾で水揚げされた、地魚を積極的に使っているのが売りである。しかも仕入れは業者任せではなく、自社の担当者が直接セリに参加して食材を手配するというこだわりようだ。この日もボードには、先ほどの松輪港水揚げのスズキや朝とれのトビウオに並んで、長井港の生鯖、直送の黒ムツなど、専門の寿司店顔負けの品揃えがうれしい。中には予算内カラーの皿にのったのもあり、自分が頼んだスズキはシャッキリした白身が瑞々しく、シャコも旨みが程良く身がホロリ。息子もこれはどうだろう、といいながらトビウオを頼んでいて、なかなか通のネタ選びである。この店は板場をぐるりと囲むようにカウンターが配置されていて、中央にある大きな生け簀では、活けの鯛やカンパチが元気良く泳いでいる様子も見える。
突然、店内にガランガランと鐘の音が響き、まな板に大きなマグロがドン、と置かれた。恒例のマグロ解体ショーの始まりである。マイクでの解説に従い、外された頭が運ばれ、私たちの目の前のカウンターへドン。子ども達は初めて見るマグロの大頭に驚いている様子だ。この店で使っているのは、生の本マグロかインドマグロ。この日解体されているのは中ぐらいのサイズで、さく取りされてすぐに握られ、お客の注文のたびにおろしたて、握りたてが運ばれていく。中でも限定品の頭肉、ほほ肉、カマトロは、できると同時に注文が殺到。安皿ばかりでなく、ちょっとは子ども達にいいところも味わってもらおう、とほほ肉の握りをひと皿確保した。頭肉、カマトロとともに、中トロや大トロに匹敵する柔らかさと脂ののりの、隠れたおいしい部位だ。軽くあぶってほんのり赤身が残るぐらいで、見たところレアのステーキのような感じ。見るとさっきのマグロの頭から、ほほの部分だけが欠けている。
という訳で、みんなそれなりに好きに食べて、おかげさまでごちそうさま。肝心のお会計がちょっと心配だったが、「ルール設定」が功を奏してか、4人で1万円に全然届かずに収まった。安くお手軽のため、子ども達との食事はいつもファミレスやファーストフード、寿司も回転寿司になってしまうけれど、小さいうちからきちんとした味を覚えてもらうためにも、たまにはちゃんとした店に行かないといけない。だから回転寿司ながら100円寿司よりもネタがちゃんとした、こうした店はちょっとありがたいか。まあ、100円寿司での遠慮のない注文の様子を見ている分には、カウンターのみのお店はまだちょっと怖いかも。(2006年9月18日食記)