ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん117…青森 『味の札幌大西』の、味噌カレー牛乳ラーメン

2011年06月29日 | ◆旅で出会ったローカルごはん

  このところ、青森で人気沸騰のB級グルメ、かつご当地ラーメンが、この味噌カレー牛乳ラーメンだ。青森味噌カレー牛乳ラーメン普及会のHPによると、その名の通り味噌をベースにカレー粉、牛乳を入れたラーメンで、バターのトッピングもポイント。味噌のコクにカレーの刺激、牛乳のまろやかさ、さらにバターの風味が絶妙なバランスを醸し出す。30年以上の間、青森市民に愛され続けるソウルフードである。

 このラーメン、そもそもは札幌の味噌ラーメンにルーツを持ち、札幌ラーメンの元祖ともいわれる「満龍」から独立した職人と、そこの常連だった大西氏が札幌ラーメンを内地に伝えるべく青森に開業した「味の札幌」が起源。市内の古川に店を構え、札幌直伝の味噌ラーメンを出していたが、焼き干しや煮干しをスープのベースにしている青森において、なかなか浸透しなかった。そこで昭和40年代に、味噌や醤油や塩をベースにしたラーメンに、カレーか牛乳を加えた物を出すと意外な人気に。また中高生の間でこうした組み合わせを試すのが流行っており、その中で昭和53年ごろに定着したのが、味噌カレー牛乳ラーメンなのだ。

 駅前の津軽の郷土料理屋で地魚を肴に「田酒」や「じょっぱり」で酔った後、締めのラーメンを「味の札幌大西」へと頂きに行った。創業から「味の札幌」を支えてきた大西文雄が作る、味噌カレー牛乳ラーメンの元祖だ。飲食店が集まる古川町の一角にあり、外観は町にある一般的なラーメン屋の店構え。カウンター中心の店内はテーブル席も数卓あるなど、意外に広々している。21時をやや過ぎているため、店内にはお客の姿は少なく、飲んだ締めにやってきた感じのサラリーマン風酔客が数人、自分と同様にカウンターに腰かけている。

 ラーメンは味噌ベースのスープにモヤシとわかめがたっぷりのり、上にはバターがトッピング。見た感じは典型的な札幌ラーメンの造形で、麺も黄色の中太縮れ麺。特徴あるスープをまず一口すすってみると、牛乳のとろみが最もダイレクトに感じられてかなりまろやかな味わいである。一方で思ったほど味噌の香ばしさ、カレーのスパイシーさやそれらを合わせた濃厚さが感じられず、かなりさっぱりした印象。しゃくしゃくと瑞々しいモヤシをいただき、スープに絡みのいい麺をすすり、気分と食感はまさに札幌ラーメンそのものだ。

 

 名前からしてドロドロっと濃厚なスープをイメージした分、少々不意打ち。ライバル?とされていた焼き干しや煮干しラーメンの、魚介のとんがった風味のラーメンも味わってみたくなった。(2011年6月22日食記)


ローカル魚でとれたてごはん98…青森 『アオモリスープ』の、地元産ホタテとイカのカレー

2011年06月28日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 
 東北新幹線の延伸で注目を浴びている青森は、駅周辺に続々と新たな観光スポットがオープン。ちょうど1万円で乗り放題のJR東日本パスや大人の休日パスなどのお得きっぷの有効期間もあり、このところ日帰りで訪れる観光客が急増しているという。
 自分も昼過ぎに青森駅に到着、お昼はお好みで具材をのせられることで評判の「のっけ丼」をやっている古川市場に行こうとしたら、たまたまこの日はお休み。なので人情市場とタイプは正反対だが、しゃれた雰囲気のベイエリアへ。A-FACTORYはその名の通り、青森の名産品特産品を扱う施設で、青森ならではの食やみやげ、特産物の店が集まった、みやげと食の一大テーマパークである。
  
 ここは駅周辺に最近増えた物産展の中では一番品物の質がよく、入口周辺は物販コーナーの「マルシェ」で、津軽ファーマーズクラブ、野菜ソムリエなど、生産者の顔が分かる農産品や加工品が多い。りんごジュースも種類豊富で、低農薬や無添加など安全やクオリティの高さを競っている。みやげは青森シードルがおすすめ。館内にあるシードル工房では、日本一の生産地である青森りんごから、県産のふじとジョナゴールドを使用した青森シードルを製造。ガラス張りの工房ではシードルの醸造工程を見学でき、2階のレストランの一角ではカード式でサーバから各種試飲ができる。
 物販の奥はフードコートになっていて、イートインが可。グリル番紅花は八甲田牛、長谷川自然豚、青森シャモロックなどの地元産の銘柄肉を素材に、十和田で人気のバラ焼きや牛丼、親子丼といったメニューが楽しめる。 
 
 
ベイブリッジの直下にあるA-FACTORY。青森シードルはおみやげ向き
 
 
 その中から選んだ『アオモリスープ』は、青森近海で取れた旬の魚と丹精込めて育成された地野菜を素材に、青森の旬をスープで提供。地元の魚介を使った料理で注文したのが、八戸産マイカと陸奥湾ホタテの白カレーに、陸奥湾ホタテのクラムチャウダーである。
 カレーは地元産の牛乳をたっぷり使ってあり、穏やかでスープ屋ならではのほっとするルー。辛さは全然なく、クリーミーなスープご飯風。イカもホタテもともに夏前が旬で、季節の味わいがあふれる味。イカは旬で身がホッコリと厚く、サクサク、繊維がきめ細かい。銅の中央部はふっくらと甘みがあり、先端部はクキクキと香ばしく部位によって味わいが違う。ホタテは小粒だが柱の繊維が太く、磯の香りが舌をつつむよう。ヒモがザクザクとホタテの味が詰まっている。青森の最近の名物といえば、味噌カレー牛乳ラーメンというのがあるが、料理に地元産の牛乳をたっぷり使うのがご当地の食文化か。
 
 
カレーは辛さがあまりなく魚介の味が楽しめる。スープには大ぶりのホタテがゴロリ
 
 
 一方、スープはじゃがいものポタージュで、こちらも青森県産野菜に県産牛乳をたっぷり使っている。すりおろしたジャガイモとニンジン、刻んだ玉ネギが入っていて、特に地物のジャガイモポタージュと地元産のホタテの組み合わせが見事。貝の滋味を根野菜のまろやまな優しさが包み込んでいて、貝柱のツルツルした舌触りがれしい。ホタテは乳製品との相性が良く、貝の香りが際立ってポタージュというかクラムチャウダーのテイスト。
 施設は青森ベイブリッジの直下で、大きな窓から湾を行き交う船を見ながらいただける。窓口でてきぱき対応してくれる青森美人?のお姉さんも気持ちいい。(2011年6月22日食記)

梵天の麻辛丸@銀座

2011年06月21日 | 町で見つけた食メモ

東北へ赴くのは今夜からなので、日中はまだ銀座で仕事中。あまりに蒸し暑いので、汗をかかない昼食にと仕事場の人に「梵天」というつけ麺屋を教えてもらったが、「麻辛丸(ましんがん、と読む)」との激辛汁を選んでしまい、大汗だくで何の意味もなし。つけ麺にしては珍しく自家製麺で、複雑に辛く酸味のある汁によくからみ、これは病みつきになる系。なぜかBGMがずっとサザンで、「ふぞろい」のさえない世界観を妙に思い出してしまった…。


ローカル魚でとれたてごはん97…小笠原 『勘佐』の、海洋島ならではの地魚料理

2011年06月20日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 

 小笠原は6月中にも、日本で4番目の世界自然遺産として登録される。他の陸地とつながったことのない海洋島で、小笠原諸島にしか存在しない固有種が豊富、かつひとつの種が環境に適応して進化、分化していく「適応放散」が多く見られることが、認定の理由として挙げられている。

 この2月に小笠原を訪れた際は、世界遺産への認定を前にした頃で、アクティビティのガイドや宿の人や観光協会の職員など、行く先々でその話題が挙がっていた。ホエールウォッチングを楽しんだ晩に訪れた、父島・二見にある居酒屋「勘佐」でも、カウンターで隣席の地元の客と世界自然遺産の話題で盛り上がる。

世界自然遺産への認定理由が固有種にあるなら、酒の肴も固有種ならぬご当地料理や地魚を中心にオーダーしたい。この店は小笠原で創業40年近い老舗で、島魚をはじめ島寿司に亀料理、島野菜といった、島の食材を使った料理や島に根付いた郷土料理が豊富だ。

 

 

 

訪れた時期はちょうどザトウクジラのウォッチングシーズン。

下左は小笠原を代表する景勝地の南島・扇池、下右は兄島瀬戸を見下ろす長崎展望台

 

まずはビールとともに、亀煮込みを注文する。カメ肉を塩と焼酎で煮たもので、島に各種あるカメ料理の中でもポピュラーかつ、古くから食べられていた料理である。カメ一匹のうち、柔らかく生で食べられる部位は3割ぐらいで、他の大体の部分は固かったりくせがあるため、煮込みなど熱を加えた料理に用いられる。

 俗に小笠原の亀煮込みは父島では塩味、母島は醤油味といわれるが、家庭料理のため店や家ごとに味付けや使う部位は様々だ。ご主人によるとこの店は内臓のみ使うのが特徴で、ショウガと砂糖をしっかり効かせた、甘めの味付けに仕上げている。管状の腸やスポンジ風の肺、レバー風の肉片などがあり、トロトロの玉ネギが甘い。

食用にするのはアオウミガメで、離島である小笠原ではかつては貴重なたんぱく源だった。3月~5月頃に交尾のために島の周辺へやってきて、五月~八月にかけて各地の海岸に上陸して産卵する。現在では捕獲時期や年間の捕獲頭数が決まっていて、島の料理屋では冷凍して通年「島の味覚」として供している。

アオウミガメは海草を主食とするため淡泊でくせがなく、例えると鳥モツ煮のようにあっさり食べやすいが、地元の人が食べるものは独特の臭みを風味として、あえて残しているのだとか。

 

 

 

前日に「丸丈」で頂いた島魚料理の数々。左上から時計回りに、オキサワラのヅケをタネに

握る島寿司、亀ポン酢、亀の空揚げ、亀雑炊

 

亀料理に続いて地魚料理を選ぶべく、品書きが書かれた黒板を眺めてみると、潮汁、あら煮、メアジ刺身、ダルマ刺身など、小笠原の地魚料理にマークがついているのが親切。マークを参考に、マグロの血合焼きとチギの天ぷらを頼み、締めに島魚の握りをお願いすることに。

マグロの血合焼きは見た目が真っ黒というか濃茶で、いかにも血の色っぽくインパクトがある。食べてみると普通の焼き魚に比べて身の味にコクがあり、色が濃い部分ほど濃厚。赤身の部分が加熱されて味が凝縮しているようで、血の部分がそれに加えて旨味を強調している。下処理がきちんとされているため臭みはまったくなし、アラの部位だが地魚としての扱いが熟達しているのを感じさせる逸品である。

 

 

二見集落の中心部に位置する勘佐。右は勘佐の亀煮込み

 

小笠原周辺の海域は、回遊してくるメバチマグロやビンナガマグロ、キハダマグロ、メカジキが分布しており、これらを狙ったマグロ漁が盛んである。主要な漁法の「小笠原式深海縦縄漁」は、長さが1~2キロの縄に深さ600メートルほどの枝針をいくつもつけて、30~40キロに渡って点々と流すもの。メバチマグロやカジキマグロが主要な漁獲で、漁獲金額もカジキ類とマグロ類が上位を占めているのだが、最近は漁獲量が減少傾向という。

父島近海の主な漁獲はほか、一般的にオナガと呼ばれるハマダイにレンコダイ、ヒメダイ、ムロアジなど、やや沖合ではカンパチ、ヒラマサなども水揚げされる。小笠原の魚がうまい時期は冬で、カンパチや島寿司の材料にするオキサワラなどは、二月頃までは脂がのって身の味もいい。ちょうどザトウクジラのホエールウォッチングの時期とも重なっていて、クジラと遭遇して旨い島魚を食べて、と、小笠原の旅に最適なシーズンのようだ。

天ぷらのチギは聞きなれない魚だが、ハタの仲間でバラハタのことを指す。円い形の天ぷらが二切れほど出され、白身がしっとり、脂がトロトロのソフトな食感。ジューシーな割には脂っこくなく、身の締まりもムツとカジキの中間ぐらい。つゆよりも塩で味わう方が、その素性を楽しめる。

 

 

左は身の味にコクがあるマグロ血合い焼き。右は脂がのった白身のチギの天ぷら

 

島魚の中でも味が良いのはハタ類で、島の魚として知られるのがアカバだ。内地で高級魚のアカハタのことで、水深100メートルぐらいまでの深さのところに生息しているのを、主に釣りで漁獲する。厚い白身に弾力がありしっかりした食べごたえで、島では味噌汁や煮物にするほか、旅行者には丸ごと一尾の唐揚げも人気がある。

天ぷらのバラハタもアカバと同様、外見は赤い色をしており、小笠原周辺で見られる「色つき」の魚の中でも、味がいい部類に入る。兄島海域公園でシュノーケリングで見られる魚も結構食べられるものが多いそうで、白い魚体に黒の縦じま模様が入ったロクセンスズメダイやオヤビンチャは、島の居酒屋では唐揚げなどで品書きに載っているとか。

締めに頼んだ島魚の握りは、三種のタネが赤、白、ピンク、銀と、色合いがそれぞれはっきりしていて美しい。蛇腹にされたマグロは紅色がやや明るく、口にすると普段食べているマグロよりやや味が淡めで、身の弾力がしっかりしている。弾力は水揚げ地ならではの鮮度のよさ、身の淡さは同様に熟成が軽めだからなのかも。

ほか身が厚くねっちょりと粘りあるソデイカは、体長80センチ以上、体重20キロに達する大型のイカである。赤く大柄な魚体から想像できないほど、タネが真っ白。メアジは脂ののりが相当強烈で、普通のマアジよりも大味で豪快な食味が島の地魚らしい。

 

同席した方は水産関係にも詳しいようで、アカバはアカハタの類似種だが微妙に違いがあるとか、オガサワラアカエビも伊勢エビに似ているがヒゲやトゲの数が若干違うとか、島魚のうんちくにも花が咲く。姿も味も内地のそれとはやや異なる独自性が、東京から1800キロ離れた離島の島魚ならではなのかも知れない。


町で見つけたオモシロごはん136…横浜・開港祭に出店の、日立の口福アンコウ唐揚げ

2011年06月11日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


 6月2日は横浜港の開港祭で、例年だとみなとみらいの臨港パークを会場に、様々な露店が並びコンサートや花火などが開催される、横浜の一大イベントである。しかしながら今年は、震災の影響による自粛傾向のせいか、会場は赤れんが倉庫に隣接する赤れんがパークへと変更、花火など派手な行事は行われない、コンパクトな形となった。
 また梅雨時に開催されるので例年天気に恵まれないが、今年は雨が一段と強く、テントのブースをあれこれ見物する余裕もない。そんな中、通りすがりに見かけたのが、なんと吊るし切りにされて頭と背骨だけブランと吊り下げられた、あわれアンコウ君。今年は震災で被害を被った地域が出店していて、これは日立市の海産物販売ブースで扱われているアンコウをさばいた残骸らしい。

 
あわれ吊るし切りにされたアンコウ君。口福アンコウの幟が雨の中がんばっている

 ブースを覗いてみると、久慈浜のシラスや地場産のワカメなど、日立の地物の海産物があれこれと販売されている。久慈浜はかつて、水産関連の記者の合同取材で訪れたことがあり、小型底引き網が主流のため様々な魚種が水揚げされた、豊かな漁港だったことを思い出す。
 特にアンコウは、日立のブランド魚として売り出しており、「口福(こうふく)アンコウ」とのネーミングもされている。特に日立は通年アンコウが食べられる町として売り出しており、特にややあっさりした春先のアンコウがおすすめとも。
 俗に「七つ道具」と呼ばれる白身や皮、エラ、胃袋、キモなど、残すところないアンコウの身が、ブースではテイクアウト用の唐揚げで販売されていた。震災への協力も兼ねて購入したら、骨にへばりついた身やとげのようなものがある部位、フルフルとゼリーのような部位など。いわゆるアラの唐揚げで、立って食べるのには少々苦労するけれど、アンコウならではの部位ごとの多彩な味わいがうれしい。

 茨城は日本で3本の指に入る水産県で、特にシラスとアンコウは、茨城の水産業の旗印的なローカル魚。ブランド名のように、地魚を食べに日立を訪れる人の口に福を、そして日立や茨城県全体に福が来るよう、今後の漁業復興に注目したいところだ。(2011年6月2日食記)
※日立の口福アンコウについては、詳しくはこちらの現地を訪れたルポを参照ください↓