ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

一献一品出合い酒@小竹向原

2014年01月31日 | ◆一献一品出合い酒
環七との合流そばにある創作鳥焼「五鐵」にて、生ホッピー×とろとろ塩煮込み。仕事のパートナーといつもよりちょっといい店で懇親するなら、主役の焼き鳥の前に大衆焼き鳥屋ならではのサイドオーダーとの、このコンビが似合う。

銘酒に希少な焼酎と、目移りする酒揃えから「生」の潤しさにひかれ、ジョッキの一杯に。琥珀色一色の輝きから麦のまろやかな甘さがほとばしり、シュワシュワと喉へと滑りポッと熱さが胃に灯る。小鍋の土鍋でクツクツ、煮えたてホカホカの煮込みをつまむと、熱さがさらに二重三重。塩味ネギだくのさっぱりさに、トロトロフルフルのモツの柔らかさが、スカッと爽やかに抜ける酒をまた呼び込む。どっちも大衆酒場の定番ながら、どこか洗練された組み合わせな一期一会。

せんべろテイストないつもの店も落ち着くが、たまには名店でうまいものを攻めるのも、互いの英気を養うのにもってこい。酔うほどに飲むほどに仕事談義も盛り上がり、次々浮かぶネタが身を結べば、こっち持ちの勘定の元は楽にとれるというもの? 一献一品の小さな酒宴、今宵も天下泰平なり。

一献一品出合い酒@渋谷

2014年01月30日 | ◆一献一品出合い酒
東口そば、線路沿いののんべい横丁入口にある「会津」にて、榮川生貯蔵酒×山芋焼き。旧友との久々の再会でじっくりと杯を交わすなら、狭い横丁の狭い店での口開けの一杯らしい、このコンビが似合う。

屋号と赤提灯に惹かれて戸をくぐり、奥の角の並び席が旧交を温めるのにもってこい。挨拶がわりのビールが空いたら、屋号ゆかりの地酒に行かぬわけにはいかない。ペシッ、とプルをひき、缶からそのままいきたいところをグラスにあけてクイクイッ。口腔いっぱいに華やかにふくらむ薫り越しに、田圃が広がり浮かぶかのよう。歯ごたえサクリ舌触りネバリの山芋は、泥臭い素朴さが里の恵みらしいこと。飲むほどにつまむほどに、酔いの向こうに会津盆地が揺らめくかのような一期一会。

コーナー越しの同席客と、いつの間にか話の花が咲き、マスターを交え屋号の談義が盛り上がる。終電も過ぎさらにひと缶、ふた缶とプルがひかれ続け、宵越しの酒がいつしか庄助さんの朝酒と化す勢いに。一献一品の小さな酒宴、朝まで天下泰平なり。

町で見つけたオモシロごはん…小竹向原 『五鐵』の、創作鳥焼

2014年01月29日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
昨夜の一献は、有楽町線小竹向原駅に近い焼き鳥「五鐵」にて。池波正太郎の作品から名をとった屋号だけに、しゃもならぬ薩摩地鶏の串焼きがどれもうまい。

マスターおまかせでお願いしたところ、シャキシャキのネギにふっくら正肉のネギマ、歯ごたえザシザシと心地よい砂肝、味の濃い希少なセセリ(首)と、部位ごとに異なる食味食感が楽しい。肉汁したたる炙りレバーは、ねっとりこってりにごま油がガツンと、体の隅々まで覚醒するかのインパクトだ。

さらに「創作鳥焼」と称するように、定番にこだわらないオリジナル串も面白い。見た目も華やかなつくねのバルサミコソースは、黄身の甘みとソースの酸味が際立ち、まるでオードブルのごとく。梅しそササミマヨネーズは、梅マヨの酸味同士の相乗効果が食欲をそそる。

最近はあまり飲めなくなったが、今夜は珍しくビール、生ホッピー、一ノ蔵、そして「魔王」と、グランドスラム(ちゃんぽんとも言う)達成に。副都心線のおかげで、横浜まで乗り換えなしで帰れるようになったし、この界隈で腰を据えて飲める一軒になりそうだ。

町で見つけたオモシロごはん…渋谷・のんべい横丁 『会津』の、栄川など

2014年01月28日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
昨夜は渋谷・のんべい横丁デビューを果たした。山手線の築堤脇にある小路に、5人も入れば満席の正方形の小店が、肩寄せ合うように密集する、まさに昭和の線路端飲み屋街。小路を歩けば、おみやげの折の紐をつまんでふらつく酔っ払いとか、ギター背負った流しの兄さんとかに、すれ違いそうな味のある風情である(古すぎ?)。

暖簾をくぐったのは、入口そばにある「会津」という店。大女将が会津の出身だそうだが、ご高齢のために現在は元・お客だったという兄さんが切り回している。2、3組で満席の店内に、次々に常連客がローテしてきては、いつしか我々も加わり皆で談笑が盛り上がるのが心地よい。

屋号が会津とくれば、飲むべきは地酒「榮川」だ。カップのままで出されるのが親しみやすく、純米酒とにごりのループがとまらない。この日はあいにく品切れだったが、会津の筆頭ローカルアテ・ニシンの山椒漬けがあれば言うことなし。

スタートが22時頃と遅かったのもあり、旧友と気がつけばギリ深夜バスまで酌み交わした。同席した常連客の娘が氏と同郷の熊本出身と分かり、いつしか加藤だ細川だくまモンだ蓮根だの談義で大盛り上がりに。う〜む後で思い返したら、会津の店で飲んだ感があまり…。

ローカル魚でとれたてごはん…函館朝市『茶夢』の、イカ刺しなどイカ料理あれこれ

2014年01月26日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

自分が日本の旅に興味を持った90年代、北海道の旅は一大プロジェクトだった。上野発の夜行急行で青函連絡船に乗り継ぎ、函館へ渡り最初に寄るのは函館朝市。先を目指す者も留まり町歩きする者も、朝市の食堂で魚めしを食らうのは北海道旅行の鉄板デフォだった。

北海道の旅が空路主流になり、青函トンネルが通ってから、函館は玄関口からいち観光地に、その位置付けが変わった。次第に朝市も、観光客向けのカラーが強まっていったように思える。かつては市場の路地に点在していた市場食堂は、駅寄りの「函館朝市どんぶり横丁市場」にまとめられ、まるで都市部のフードコートのよう。ウニやイカやカニやマグロやホタテの原色カラーに加え、まるごとのイカやエビやアワビのドカ盛りもあったりと、メニューサンプルが実に華やかなこと。まるでオブジェによる、フィッシュアート合戦にも見えてしまう。

函館ローカル魚のイカを食べたいものの、どんぶり横丁ではイカ刺しやイカソーメンが1000円オーバーと、さすがに大衆魚に払う値段ではない。あきらめようとしたところで、通りの外れに品書き短冊だけの定食屋を発見。「イカわたの粕漬け」「イカの卵煮」にひっかかり、イカ刺しも単品だと800円と良心的価格だ。この「茶夢」に決定、三種丼ならぬイカ三種酒肴をアテに、サッポロクラシックで朝酒開始である。

イカ刺しは皿に山盛りで、ツマにのっているのかと思ったらすべてイカと、まさにイカ刺しの函館山。ツルツル、シャク、パキッ、トロリと、鮮度が四重奏の食感に表れており、食感ごとにただひたすら甘い。ワサビやショウガの薬味は不要で、醤油につけてズッといくだけでウットリしてしまう。イカの卵煮は、ゲソを卵と一緒に煮込んだ一品。クイッと軽くかんだらしっかりと味が飛び出してくる。淡白なゲソに、卵がイカ味を2倍3倍増させてくれる。

そしてもうひとつのイカわた粕漬けは、茶色のトロリとしたのを口にすると、内臓こなれ系の深みがダイナマイトな衝撃。レバーもチーズもフォアグラも、束になっても勝てないほどの、かなり危険で常習性を伴う味に即、熱燗に切り替えだ。辛口の「北の誉」をクイとやり、わたをひとかけら口に放ると、寝かせた深みがイカ数匹分のうまさの束。思わずひとりニヤニヤの一献である。

お姉さんによると、この時期に揚がるのはヤリイカで、柔らかく薄いからソーメンより刺身向きという。一方、わたの粕漬けにはスルメイカを使用。スルメは函館のイカのメインで、6月に解禁のため前年の12月から塩漬けして仕込んだとのこと。冷凍していないから味が抜けず、臭みが出ずにコクが出せるという。

刺身でビールをあおり、わたの粕漬けで熱燗を空け、卵の煮付けは締めごはんのおかず。粕漬けはおみやげに欲しかったが、昨年仕込んだ分は残り一本しかないらしく、「ぜひ来年また、一杯やりに来てね」観光客が主流となった朝市食堂のなかで出くわした、実力派、庶民派な一軒。懐かしさと新たな嬉しさに、これからも北の大地を目指すならまず、函館といきたくなった。