ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

東天閣@川崎

2013年01月27日 | 町で見つけた食メモ
「孤独のグルメ」マンガ版に出てくる店の聖地巡礼で、総本山といって異論ないのが川崎・セメント通りの東天閣。いわずと知れた名セリフ「うぉオン」の、五郎さん御発声の店だ。マンガに登場するのは本店で、横浜駅西口ほか子安、川崎の幸と加瀬と5店を構えている。実は「こどグル」に登場する前から、我が家の公式焼肉店として普段使いしており、ポイントをためていたりウェブ会員になっていたりと、何かとお世話になっている。

そのおかげで、家族の誕生日や店のアニバーサリー、四季折々の祭事に合わせ、案内状や割引券を頂戴する。今日は2013年の年賀状についていた、2013円割引の期限が迫っていたので、第二京浜沿いにある川崎幸店を訪れた。カルビ3種盛りやハーフ盛り合わせあたりが、1500円程度で盛りが多く食べざかりの子連れにはありがたいが、今日は割引券分の贅沢とばかり、カイノミ、中落ち、マルチョウ、ナンコツあたりの単品も攻める。卓に並べたら、なかなか彩り鮮やかだ。

炭焼きの炉に全部ずらりと並べたら、次第にいい音立てはじめ、今年の初焼肉へのワクワク感が盛り上がること。「俺の肉が、泣きだした」とは、テレビ版の松重氏演ずる五郎の、八丁畷のひとり焼肉店の名セリフだっけか?

町で見つけたオモシロごはん…ふるさと祭りの、久慈まめぶ汁

2013年01月18日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
昨年の秋に岩手県の震災被災地を視察した際、北三陸の観光担当の方に、「北のコナモン博覧会」という食キャンペーンの話を伺った。小麦や大豆の粉食文化が浸透している当地の、文字通り粉モノ料理を食べ歩くイベントで、八戸せんべい汁にひっつみなどは聞いたことがある人もいるのでは。

そのひとつの「久慈まめぶ汁」が、東京ドームで開催中の「ふるさと祭り」に出店すると誘いをいただき、ブースにお邪魔して一杯ごちそうになった。澄まし汁の見た目はけんちん汁に似ていて、煮干しのダシが香ばしい。ニンジンにゴボウの根野菜は、どれもホッコリ甘い土の味。シメジはシャックリと、香気あふれる山の味。焼き豆腐にはダシの味がじっとり染み、日本人なら誰もがフッと笑顔が浮かぶ、安らぐ味だ。

そして「まめぶ」は、名前からして麸をイメージしていたら、小振りの団子か丸餅のようだった。モチモチと柔らかな中身は何と、刻んだクルミと黒砂糖がこっくりと甘いこと。思わぬ仕掛けに、またまた笑顔が浮かんでしまう。

昔は貴重だった砂糖を用いているように、まめぶ汁はかつては「ハレ」の料理だった。当時は野菜ほか、小麦や大豆も各家庭で栽培していたため、豆腐も自家製でキノコも山で採取した天然ものだったそうである。精進料理でもあったので具には肉は使わず、ダシも干しシメジやシイタケでとっていたとも。普段使いの地方の味ながら、食材に目を向けるとかつての豊かさが、ちょっと懐かしく、うらやましく思えたりする。

B級グルメ大会入賞の味とか、名物どんぶり対決とか、会場には「祭り」だけに華や色のある食があふれている。そんな中でのこの汁、素朴で飾り気はないが、日本の根っこの味のように思える。「北三陸出身じゃない方でも、味わった皆さん懐かしい、とおっしゃいますね」との言葉が、やけに印象に残った一杯だった。

旅で出会ったローカルごはんbyFb…元箱根 『箱根関所旅物語館』の、箱根コロッケ定食

2013年01月11日 | ◆旅で出会ったローカルごはん

 お昼前に元箱根へやってきたら、ゴール地点はすでに各校の応援団が盛り上がりを見せている。箱根駅伝往路のゴールまではまだ1時間ほどあるが、気勢を上げて母校の到着を待つ熱さときたら。ちょうど小田原で山登りの走者にタスキが渡ったころで、強風で極寒の中を箱根の山に挑む彼らを、文字通り熱く待ち受けている。

 沿道に待機する前に昼食をとろうと、遊覧船のターミナルにある「箱根関所旅物語館」へ。ローカルミートの箱根山麓豚を使ったメニューが並び、カツ煮定食にカツカレーなど、こちらも食事で母校の「勝つ」に気合を入れたくなる。が、箱根コロッケ定食にふらりと惹かれ、大学学食風の定食で質実剛健な応援ごはんに。

 三つ並んだ俵型のコロッケをひとつ、カシッとかじると、揚げたての衣がからり、中はホクホクねっとり。たっぷりのつぶしたジャガイモに山麓豚のミンチが少々で、ジャガイモは三島の馬鈴薯を使っている。箱根西山麓の火山灰地で栽培され、甘みが強くホテル御用達のブランド野菜。ご当地コロッケで知られる三島コロッケを思い出す、シンプルながらホッとする味だ。

 ジャガイモはランナーのエネルギーにもなる炭水化物も豊富だから、おかげで応援する側のパワー充填も十分。カツのように勝利への縁起の韻を踏みたいけれど、箱根コロッケ=箱根でコロリ、になったら洒落にならない?


街で見つけたオモシロごはんbyFb…横浜 『スカンディア』の、スモーガスボード

2013年01月10日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 このところの横浜は、みなとみらいに注目が集まっている。ランドマークタワーやワールドポーターズ、赤レンガ倉庫といった近代的なベイエリアは、未来へ向けた「ヨコハマ」の顔なのだろう。一方で、トラッドな港町風情が残るのが、山下町界隈。大桟橋から山下公園〜中華街にかけての、異国情緒漂うオールドベイサイドは、国際港らしく「YOKOHAMA」の表記が似つかわしく感じる。

 桟橋や埠頭のたもとだけに、船員御用達のバーや食堂が点在し、古くから営業している各国料理店も目立つ。そんな中からハマのはしご酒の初っ端は、大桟橋たもとの「スカンディア」に行ってみることに。創業以来四半世紀になる、横浜随一の北欧料理の老舗で、開港記念広場に面した風格ある外観は、地元に住んでいてあこがれと気軽に入りづらさが入り混じった存在である。

 天井が高くホールのようなフロアの壁面には、木彫のレリーフが多数配され、荘厳な雰囲気に何だか押され気味に。コースが各種あるが、北欧の肴を飲みながらリラックスして楽しもうと、「スモーガスボード」をオーダーした。回転式の小卓にアペタイザーを盛り合わせたもので、いわば北欧風ビュッフェといった感じ。シーフード中心の料理には、北欧のローカル魚もちゃんとあるのはさすがである。

 となればアルコールも、ジャガイモの蒸留酒のアクアビットにして、地魚料理に地酒を合わせてみる。養殖技術が世界最先端とされるノルウェー産のスモークサーモンは、脂がほどほどで身の濃厚さがなかなか。ニシンの酢漬けは北欧の代表的家庭料理で、青魚の旨さを引き出すところが〆サバのニシン版風。ハマッたのがデンマーク産のキャビアで、パンにたっぷり盛ってガバッといけば、魚卵好きには涙もの。互いに水産大国だからか、料理法や嗜好がどこか似ているようにも思える。

 度数41度と強烈なアクアビットは、なめる程度でも顔に火がつくほどで、大さじ数杯程度と少ないのも分かる。高緯度の寒い国の強い酒を傾けつつ、同地のローカル魚も味わえるのが、港町YOKOHAMAクオリティ。ニューグランドから中華街への、今宵のハマのワールドクルージングに、いい勢いがついたような。


町で見つけたオモシロごはんbyFb…横浜・磯子 『いちばん家』の、醤油ラーメン

2013年01月09日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 突然、天からお達しがあったかのように、「あの店のアレが食べたい!」とピンと来て、頭の中が一色に。そんな食欲のわき方、経験があるのでは。しかしながら、お目当ての店に入れなかった時の落胆といったらない。「孤独のグルメ」では、五郎さんがハマったハヤシライスの店が廃業していて、代わりの店をなかなか決められないシーンがある。挙句迷ったら豪華に、とステーキを選んだものの「今日はこの味が横滑りしていく」と心のつぶやき。こういう喪失感は、高価な品で代替しても埋められないことを、軽妙に言い得ている。

 先日の忘年会の後、帰りの電車内で締めラーに「磯子家」のラーメンが、ピンと来てしまった。家系のとんこつ醤油に中太麺は、塩っ気と炭水化物を体が欲する、飲んだ後に最適。頭の中ががそれ一色となり、駅から足早に店に向かったが、同じ嗜好らしき酔客が店をぐるりと囲むように、長蛇の列が続いている。

 深夜の寒空でこの行列はご勘弁、と、酔い覚ましを兼ねてほかの店を探しながら、国道16号線沿いを歩き出す。チェーン系などやっている店はパラパラあるが、磯子家のあの味がロックオンされた状態のため、なかなか食指が動かない。せめて「家系」といきたいけれど、付近には磯子家のないのは、あいにく熟知している。

 のはずが、環状線との交差点の手前で、とんこつ醤油の香りとともに「いちばん家」との屋号を見つけた。聞くと10月にオープンしたばかりだそうで、家系とあればありがたく締めラーにさせていただく。醤油ラーメンをオーダー、麺はほぼ太麺の、がっしりした食べ応え。スープは白っぽい見た目の通り、とんこつ臭がかなり強烈で、背脂も浮きかなり手強い。家系というか、麺太め脂多めの博多とんこつラーメンといった感じか。でも五郎さん節でいえば「まずくない、決してまずくないぞ」の、ハマるとやみつき系のパンチ力である。

 物差しになっていた「磯子家」の味に比べ、脂も濃さも太さも優り、おかげで気持ちの「横滑り」もなくご馳走さま。ピンときた料理の代替には、同ジャンルのより個性が強いものが、ピタッとハマるのかも知れない。ところでこのラーメンは強力ゆえ、ピンとくる好みになるかは、もう少し酔いどれで通ってみての評価かな?