津波の被害が岩手県最大だった大槌町も、厳しいながら漁業復興が進んでいる。地盤沈下で半分水没した船着場からは、ワカメやホタテの養殖の小舟が出ていく。近くのプレハブには、水産加工業者が作業にいそしむ。船や漁業者が減った中でも、復興の息吹は着実に感じられるようだ。
お昼をいただいた『復興食堂』の、プレハブの建物の壁には、「大槌魂」との文字に立派なサケが跳ねるポスターが目を引く。店のお客が記した寄せ書きの文字に、「鮭は戻った。大槌も頑張れ」とあり、店の方に聞いたところ、町の魚に制定されているサケも、沖合の定置網で少しずつ揚がり出しているという。
注文した人気メニューの「おらが丼」も、大槌の地物のサケの親子丼。煮たサケのほぐし身をあんにからめ、上には醤油漬けのイクラがたっぷりのっていて、まさに大槌ブランド魚の贅沢な親子丼である。やや若い新もののイクラがプツプツと瑞々しく、和風ダシのサケの身のあんがトロリ。被災地を見学した後のインパクトに、優しくホッとできる丼である。
ご主人によると、この食堂を始めてから、店にやってきて偶然再会できた、町の人もいるとか。生まれた川に帰って来始めた大槌の秋サケのように、被災した大槌の方々が帰ってくる店としても、頑張ってほしいものだ。