ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

高崎そだちてくてくさんぽ8

2016年08月30日 | てくてくさんぽ・取材紀行
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、農産物の生産者を中心に回る中、最後に畜産事業者から「江原養豚」さんに伺った。銘柄豚「えばらハーブ豚 未来 」は、抗生物質や合成抗菌剤を一切投与せずに育てた、安心と安全にこだわった豚肉。と文字にするのは易しだが、その生産の実現への苦労、質に対する思いの深さに、なかなか聞き入ってしまうひと時だった。

こちらで無投薬飼育を始めた2000年は、EUが発育目的の飼料添加をやめたのより5年早く、当時の日本では例がない。そのため、まずは無投薬の定義づくりから始めねばならなかった。一般には肥育期間の180日中、3分の2は国指定の抗生物質入りの餌を与えるところ、ここでは離乳させながら餌付けを始めてから、出荷するまで一切与えない。加えてハーブや有機酸、乳酸菌、各種ビタミンの中でもEを強化して配合することで、安全かつ栄養価の高い豚肉に仕上げられているのである。これらのおかげで獣香が抑えられたり、保存性がよくなったり、アクが浮かない質になったりと、無薬プラスアルファのプレミアにも繋がっている。

徹底した無投薬飼育は、初年度の実験段階では一定の成果を得たものの、事業化には数々のハードルが立ちはだかっていた。病気感染のリスクで死亡率が高いのに加えて肉付きも悪く、ロス分のコストがかさむのに卸値は下がる悪循環。3年目には経営的な限界が迫り、ほぼやめることを決めた時期もあったそうである。それでも生き残りを賭けてこの飼育に臨み続けたところ、4年目に豚舎の菌環境が安定。豚が死ぬ数が減り太ってきたのだ。ここから経営が持ち直し、現在は無投薬豚の代表的銘柄として、えばらハーブ豚の名が知られるようになったのである。

飼育環境の安定による成果は、生産と流通に関わる指標的数字にも現れている。病気等のために投薬したため、無投薬飼育から分けた「保護豚」の割合が低下、飼育環境の微生物が安定するまで10年かかったというわけだ。食用に適さない内蔵の比率で家畜の健康度を示す「内蔵廃棄率」も向上、その成果として肥育期間がいくらか短縮され、価格も全国の豚肉の平均価格よりややプラスまでもってきた。薬を与えないことではなく健康管理を徹底し、それに効果のある飼料投与がプレミアです、と生産者。「JAS認定」「無薬」「NonGM(飼料に遺伝子組換穀物の不使用)」の安全の3本柱が揃う生産者は日本ではほかになく、「競争しなくてもよい豚肉」との言葉に自信がみなぎる。

「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」といった有機宅配大手の取り扱い、ぐるなびの「ベストオブメニュー」や料理王国の「食の逸品コンクール」の入賞など、品質への評価も高まってきている。そうした中でも「自分で考えた言葉で売ること」を大切にして、他者との比較ではなく自らの品物の特性をいかに伝えるか、を心がけているとも。先頭を走って事を成すことは厳しくリスクは大きいが、真の「ブランド」はそれを乗り越えないと標榜できないとの言葉には、経験ゆえの説得力がある。

健康で楽しく食事をしてもらい「幸福感を感じられる豚肉に」とは、生産者発流通者へ料理人へ消費者への、いずれにも共有・共感できるメッセージに感じられた。

美食材Lohasのえばらハーブ豚 未来@高崎

2016年08月30日 | 旅で出会った食メモ
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、ランチは「美食材Lohas」にお邪魔した。この後訪れる江原養豚の「えばらハーブ豚 未来」を使った料理を味わうのだが、野菜類のうまさもまた、ひとしおだった。

バーニャカウダは高崎の契約農家の野菜が大盛りで、ピーマンは甘くキュウリが瑞々しくダイコンは舌でほぐれる柔らかさ。アンチョビソースが素性を引き立て、体がきれいになる思いがする。

シマアジのグリエの自家製のサルサソースには、高崎産トマトを使用。添えてあるナスも倉賀野産で、フレッシュなソースがレアで身が締まったシマアジを、すっきりさせてくれる。

えばらハーブ豚は最初のプレートにエスカリバータ(オイル漬け)、主菜のグリルは赤ワインとショウガのソースでいただいた。

高崎そだちてくてくさんぽ7

2016年08月30日 | てくてくさんぽ・取材紀行
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、2日目は続いて「農業生産法人ホウトク」さんにお邪魔した。野菜を加工して外食産業に供給するほか、社会福祉法人と提携して収穫の代行、加工を請け負うなど「農福連携」を推進している。食品メーカーへ納める野菜の栽培を斡旋したり、加工する干し芋用のサツマイモを栽培してもらうなど、独自の生産加工の流れが興味深い。

説明の後に見せてもらった加工室には、レモン、バナナ、リンゴ、トマトなど、ドライ加工の実験中の果物や野菜のサンプルが並んでいた。珍しいのは枝豆で、群馬県は生産が随一なことに由縁するそう。さらに面白いのが桑の実で、県の産業である養蚕がらみなのだとか。桑の実は来年には商品化するそうなので、オリジナルなご当地商品として楽しみだ。

奥にはドライ製品の加工に用いる、乾燥用の機械が配置されていた、40度までの低温なのが特徴で、素材の色や栄養が壊れない利点があるそうた。特に干し芋は、乾燥すると旨みが増し黄色が鮮やかになり、おみやげにいただいたのを見るとクリアな色味で食欲をそそる。ほかにもイチジクやパイナップルなども、低温乾燥に向いているそうである。

地場の素材の加工方法としては独自性がある一方、ドライフルーツは単価が高くなるのが難点。特に機材の夏の稼働が低いことが課題で、日本では夏に野菜や果物を干したり食べたりする文化がないのが影響しているようだ。加えて高崎はドライに適した素材の産地が少なく、他県や海外などから調達となるものもあるのが、なかなか難しいとも。

とはいえ、よそでは少ないタイプの加工品、かつ高級品としての期待もでき、ブランディング次第では注目される可能性も秘める。ワインや洋酒と合わせたり、パッケージのデザインを工夫したりなどして、おしゃれな高崎の農産加工品になることを期待したい。

旅で出会ったローカルごはん…高崎 『フルーツオンザヒル』の、フローズンアイスバー

2016年08月30日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、2日目の最初は吉井町の「フルーツオンザヒル」にお邪魔した。去年オープンしたばかりで、農園にカフェが併設されている。四季折々のフルーツを提供して楽しんでもらうのを目的としており、ブルーベリー、ブドウ、イチジク、サツマイモほか、今後はレモンやグレープフルーツ、クリなども展開する予定だそうだ。ご主人はもと玩具店を経営していたが、農業に携わりたくこちらに新規就農。耕作放棄地を利用して、標高120メートルほどの高台に農園を展開している。

メインはブルーベリーで、市街を見下ろす高台に80種2000本の畑が広がる。順次実がなるため、6月から様々な種類がずっと味わえるのが嬉しい。ほかの園にはない種類もあり、一部の区画は有機認証をとっている。畑でブルーベリー狩りも楽しめ、そのまま食べられるのも魅力だ。奥寄りはブドウ棚で、シャインマスカット、フジミノリなど15種を7〜10月にかけて収穫。化学肥料は使わず、茶殻などを与えて栽培している。イチジクは有機ではないが、こちらも低農薬栽培に取り組んでいる。

カフェではこれらのフルーツを使った、アイスとジュース、ゼリーといったスイーツが揃う。フローズンアイスバーは季節により変わり、常に14種程度がケースに並ぶ。自社農園産のほか、高崎や富岡など周辺の果物を使っているが、一番人気はやはり自社のブルーベリーヨーグルトとか。生ジュースはブドウとブルーベリーから選べ、その場でジューサーにかけて作るのでとてもフレッシュ。どちらもブルーベリー食べ放題とのセットプランもあり、休日は早く売り切れてしまうほどの大人気だそうだ。

デッキでブルーベリーアイスバーをいただくと、濃厚なヨーグルトにどっしり甘いブルーベリーの粒が、なかなかの存在感。この日はあいにくの雨だが、晴れていれば浅間、榛名、妙義、赤城の山々が見通せるという。パラソルに座って、そんな眺めを楽しみながらフルーツを味わうのは、とても贅沢なひと時だろう。