ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん117…日比谷 『味噌汁家』の、30種類もそろう味噌汁各種

2008年02月17日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


 毎年この時期に行われる、名古屋周辺の観光懇談会が、今年は日比谷の「素材屋」にて催された。毎年、地元でも名だたる名古屋グルメの東京店が会場とあり、ことしも手羽先や味噌カツをしっかりと堪能。駅前のミッドランドスクエアをはじめとする高層ビルの建築ラッシュに、サツキとメイの家を中心とした万博跡地の自然公園など、万博終了後も相変わらず名古屋は元気、加えて名古屋グルメも依然、強い魅力のある観光要素であることを再認識した会だった。
 宴たけなわとなったところで、この日のもうひとつの約束、はしご酒の予定が迫ってきてしまった。当ブログで何度も出ている熊本の友人が突然上京、渋谷に宿泊しているので、ぜひ飲みたいとのこと。渋谷なら山手線脇ののんべい横丁で、焼き鳥を肴に一杯か、などと、宴の会場を思案していたけれど、今日はこの冬一番のきつ~い寒さで、日比谷シティ地下にあるこの店から、再び地上に出るのが億劫だ。

 で、氏の携帯に電話して、会が終わる時間を見計らってこの素材屋へ呼び出すことに。地下街にはほかに飲み屋がいくつもあったから、場所替えのために外に出ないで済みそうだ。21時やや前になって氏が到着。激寒の中を地下鉄を乗り継いで素面でやってきたのに対し、自分は一席終わってすっかりでき上がりと、なんとも対照的な状態で久々の再開の挨拶を交わす。
 とりあえず「素材屋」を後に、落ち着ける店を探して地下街を彷徨う。寿司屋、鶏料理、そば居酒屋と並ぶ中、奥まった一画に大きな木の扉が目を引く店を見つけた。まるで古民家の玄関のような重厚さで、中は窺い知ることができないが気になる。そして店頭の店名には「味噌汁家」なる文字。



大きな木の扉が目印。中も木調の民芸風


 はしご酒の合間に味噌汁はありがたい、と木の扉を押してみると、中はいわゆる民芸風内装の居酒屋のよう。奥のテーブルについて品書きを開くと、店名ゆかりの味噌を使った料理に、肴も種類が豊富に揃っている。
 品書きを開いたところが焼鳥の欄だったので、焼鳥の串盛りと、締めの味噌汁の前にちょっと汁物が欲しくなったので、モツ煮も注文。先に運ばれてきたビールで再開の乾杯と、まずはひと息つく。
 店名からして味噌汁の専門店のように聞こえるが、この店、肴もかなりバラエティに富んでいる。魚介類を使った前菜に焼き物や煮物、和牛の刺身や煮込みといった肉料理なども。中でも鶏料理は充実しており、使っている鶏はさっきの名古屋コーチンに対して、鳥取の大山地鶏。味噌に鶏といえば、さっきまでいた「素材屋」の名古屋グルメを思い出してしまう。

 運ばれてきたモツ煮は味噌はドロリと赤黒く、見るからに濃厚な感じ。名古屋名物の豆味噌、八丁味噌かと思ったらそうではなく、特製の合わせ味噌を使っているとある。やや渋めでほんのり甘く、トロリとよく煮えたモツにいい味が染みている。湯葉が入っているのが珍しく、ゴボウ、ニンジン、ネギといった根野菜もたっぷり。ツルリ、ホクホクと対照的な食感がうれしい。
 一方、大山地鶏の焼鳥串盛りはグイグイと歯ごたえが強く、身の味がしっかりと味わえる。能書きによると、軍鶏を原種に交配して肥育した地鶏で、その日に締めた鮮度抜群のものを使用。身に弾力があり脂肪分が少ないのが特徴で、オリジナルのタレで焼いた香ばしさもあり、ビールが進む味だ。串盛りでビールが空いたところで、モツ煮には焼酎といきたいが、自分は酒のほうはそろそろいっぱいいっぱい。あっさりメニューのゆばこんにゃくわさび煮を追加、酒は薄めのサワーにして、マイペースで進める。



ゆばこんにゃくわさび煮(左)と、野菜たっぷりで赤味噌のモツ煮


 スタートが遅かったせいかオーダーストップが意外に早く感じ、ここでいよいよ味噌汁をオーダーしよう、と品書きの味噌汁の項をみてびっくり! その数何と30種類の味噌汁が、見開きにびっしりと記されている。入っている具と、後ろに使用している味噌の種類がカッコ書きで記されており、ざっと眺めていると目移りしてしまうほど。
 具は豆腐にわかめ、揚げ、なめこ、しじみといった定番から、里芋にベーコン、ブロッコリーにミニトマト、ジャガイモとアスパラにバターといった珍しいものも。味噌は信州赤味噌に白味噌、仙台味噌、麦味噌など全国から取り寄せており、味噌の合わせ方と具との組み合わせで、これだけの種類の味噌汁を用意している。まさに味噌汁の専門店、こちらは、名古屋の八丁味噌もちゃんとある。
 これだけの数の味噌汁から、ベストのひとつを選ぶのはなかなか厳しい。店のお兄さんに相談したところ、「普通の椀よりやや小さめなので、数杯飲まれるお客さんもいますよ」とアドバイス。結局しじみとなめこ、ニラと卵の、定番の2杯をお願いすることにした。

 酒を飲んだ締めに椀物が出されるとホッとするが、それが2杯並ぶとちょっとしたボリューム感だ。先にニラ玉のほうから味見。こちらは信州白味噌で、味噌のくっきりした甘さがニラの刺激を際立たせる感じ。フワフワの半熟卵が優しい味わいで、故郷、田舎の味噌汁といった素朴な感じである。
 一方、シジミとなめこの味噌汁は信州赤味噌で、比較的なじみのあるスタイル。渋めの味噌にツルリ、シャクシャクとした歯ごたえのなめこがピッタリ合う。何といってもシジミは、酒の後にはにうれしい具。滋味あふれるエキスに加え、身も小さいながら底にいっぱい入っている。ともに熱々なのがこの寒さにはありがたく、ゆっくり交互に味わいながら宴も締めくくりに。

 本当はもう1杯、変り種の味噌汁も飲みたかったが、無能力の大食らいを揶揄する「馬鹿の三杯汁」になってしまうので、2杯飲み干したところで店を後にする。23時前とまだ宵の口、はしご酒なら新橋まで戻り、烏森神社周辺の立ち飲み屋になだれ込むか。
 今は
熱々の味噌汁のおかげで今は体が汗ばむほどで、ビルを出て地上の極寒に触れるのに、少々躊躇してしまう。どこかでもう1軒飲んだとしても、締めには再び味噌汁で暖まりたくなるかも。それとも先日、太るからと自粛を志したはずの、「飲んだ締めにはラーメン」となってしまうのか?(2008年1月24日食記)


町で見つけたオモシロごはん116…日比谷 『素材屋』の、名古屋ローカルグルメ

2008年02月11日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


 ここ数年毎年この時期に、名古屋周辺の観光をPRする会合に参加している。愛知万博が開催された2005年以降、毎年行われていて、万博後のリバウンドで観光客が減ってしまうのを懸念してなのだろう。とはいえ、万博会場の跡地を人気のあった「サツキとメイの家」を残して自然公園として整備したり、名古屋駅前に大規模なショッピングモール・ミッドランドスクエアがオープンしたりと、名古屋の観光はその後も話題に事欠かず元気いっぱいだ。
 もちろん、名古屋の観光要素の目玉である「名古屋グルメ」も、注目度の高さは相変わらず。味噌カツ、天むす、手羽先など、東京へ進出した店も少なくなく、この会合も毎回、そんな東京進出の名古屋グルメの店で行われていた。銀座の味噌カツ「矢場とん」、新橋の鳥料理「伍味酉」と、東京へ進出した地元の名店での開催が続き、今年はどんな店で何がいただけるのか、楽しみである。

 当日はこの冬一番の寒さで、内幸町駅から会場である日比谷シティへ向かう途中、ほんのちょっと地上を歩いただけで、厳しい寒さが身にしみる。こんな日は名古屋コーチンの鍋であったまりながら熱燗を傾けて、などと期待しつつ、地下2階の飲食店街にある『素材屋』へ。座敷へと通されると、すでに鶏鍋らしい準備ができている様子。
 開宴に先立ち、関係者からの挨拶があり、愛知万博のおかげで名古屋の魅力の認知度はアップ、来訪客も増えたが、まだまだ東京や大阪には追いつかない。これからも観光促進に変わらず力を入れていきたいと、現況と展望に力が入る。乾杯の後にも引き続き伺った話によると、昨年もテレビ塔のリニューアル、栄に相次いでブランドショップが出店、駅前にはルーセントタワーやスパイラルタワーなどショッピングビルがオープンするなど、名古屋は引き続き変貌を遂げているという。加えて2010年の名古屋開府400年も間近で、それに合わせて名古屋城本丸御殿が整備されるなど、万博後の大規模イベントとしてPRに躍起になっているようである。

 となれば、今日の宴も今後の名古屋観光にひと役買うであろう、名古屋グルメが主役ということか。まずはローストチキンから頂くと肉の味がしっかりしていて、さすがは名古屋コーチンと思いきや、「これはコーチンじゃなく、普通の鳥だそうです」と関係者のひとりが苦笑。ならば、と鶏鍋に箸をのばしたところ、これも名古屋コーチンかどうか定かではない様子。
 過去に開催された会の会場は、いずれも名古屋のガイドブックに必ず載っている名の知れた店ばかりだった。一方、今回の会場である「素材屋」は、名古屋グルメを全面に押している店ではない。名の通り、食材にこだわった料理がコンセプトという居酒屋で、東京周辺でも比較的見かけるチェーン店である。「毎年開催しているおかげで、会に使えそうな都心に店を出している名古屋グルメの店が尽きてきて…」そろそろネタ切れです、と関係者は笑っている。



素材屋の水炊き。鶏はあいにく名古屋コーチンではない


 もっともこの店、名古屋に全く縁がない訳ではない。第1号店がオープンしたのが、実は名古屋の金山。チェーンも中部地区を中心に、首都圏周辺と関西地区に展開しており、いずれの地域の店でも名古屋の味覚もちゃんと扱われている。
 興味深いのが、地域ごとの嗜好に合わせて、メニューのテイストを若干変えていること。ホームページで中部エリア版のメニューを見てみると、味噌カツ、名古屋コーチン炙り、天むすに手羽先と、名古屋グルメのメニューがあるわあるわ。首都圏版は対照的に少なめで、手羽先や味噌カツ、ひつまぶしなど人気メニューが数種のみ。今は全国的に名古屋グルメは認知されているから、地元よりむしろよその地域で、名古屋グルメメニューを充実させたほうがいいような気がするが。

 この日も有名どころの名古屋グルメの料理は出されるそうで、序盤は名古屋コーチンを偲びつつ? 普通の鶏鍋とローストチキンをつまむとしようか。名古屋コーチンといえば、昨秋にこのところ世間を騒がせている「食品偽装」の話題にのぼったことが、記憶に新しい。
 そもそも名古屋コーチンはブランド鶏としての評価が高いため、以前から「まがい物」が多数出回っていると噂されていた。それが昨秋に行われた調査の結果、調査対象の2割が名古屋コーチン以外の鶏肉だったことが発覚、世論の食品偽装に対する厳しさもあり社会問題となった。純系名古屋コーチンには、「名古屋コーチン普及協会の会員が、公認の種鶏場より供給された種鶏を、名古屋周辺で生育させた鶏」という定義があるが、商品に対しそれをチェックする仕組みがなく、さらに協会非加盟の養鶏業者も存在、定義に関係なく独自に出荷しているなど、ブランドの管理基準が曖昧だったことが原因のひとつといわれている。
 今後は対策として、商品のDNA鑑定による調査を行ったり、交雑種や全く別の種類の鶏が流通していた場合は指導を施すなど、「名古屋コーチン」と名乗る商品のチェックを厳しくしていくという。が、この会の関係者によると、実際には「純系」を維持することは難しく交雑は生じてしまう、また首都圏など県外に出してしまった肉の管理はどうするかなど、問題は少なくないよう。「2月に営業を再開する赤福と同じで、健康被害はないんだけれど、一度ああいう風に報道されると、信頼回復に手間と時間がかかるのは仕方ないね」と、名古屋グルメの代表格だけにこの会の参加者も動向が気になっている様子である。


味噌串カツは、名古屋名物味噌カツの原型とも


 この日に出された名古屋グルメは、全部で2種。先に出された味噌串カツは、豚肉の串揚げに甘い味噌ダレをたっぷりまぶした、串カツの味噌カツ版。味噌カツといえば、トンカツに味噌ダレをかけまわしたのを想像するが、味噌カツのルーツは屋台でどて煮の汁に、串カツを浸して温めて食べたものといわれている。だから味噌串カツは、味噌カツの原型に近いのかもしれない。味噌ダレが染みた衣がパリパリとクッキーのようで、しっかりした甘みが肉との相性がいい。
 続いて出てきたのは、皿に山盛りの手羽先だ。手羽先はそもそも、捨てる部分だったのを美味く食べられるように、タレと揚げ方を工夫したもの。皮のパリッとした食感と、香ばしいタレの味わいが身上で、ここのも表面にこってり甘いタレがたっぷりとかけられている。関節でふたつに分け、クロスした骨をねじって戻しながらバラし、骨についた肉をこそげるようにして食べる。羽の付け根の部分は意外に肉が付いており、羽の部分は皮がパリパリ香ばしい。

 宴も盛り上がり、いよいよ名古屋グルメも主役が登場か、といった頃合だが、あいにく別の約束の時間となってしまったため、宴半ばにして後ろ髪をひかれつつ、ここで会を中座することに。合流した、熊本の友人とともに流れていく先は、同じフロアにある、酒の締めくくりにありがたい意外な料理が売りの店。以下、次回にて。(2008年1月17日食記)


町で見つけたオモシロごはん115…有楽町 『中園亭』の、餃子とルースー飯

2008年02月03日 | ◆町で見つけたオモシロごはん


 自分の主な仕事先の最寄である有楽町駅界隈の風景は、この1年で大きく変わった。有楽町駅中央口を出てすぐのところにオープンした、丸井などが入った複合ビル・有楽町イトシア。そこから外堀通りを渡ると、マロニエ通りを挟んで右にはリニューアルしたプランタン、その向かいにはこれまた新たなショッピングビルのマロニエゲート。銀座を訪れる人の流れが変わった、と噂されるほどインパクトがある施設が、駅周辺に続々と出現した年だった。
 中でも有楽町の駅前、有楽町2丁目地区の変化には、目を見張るものがある。この地区、銀座というオシャレな町に隣接しながら、かつては昭和の戦後すぐの頃の雰囲気を残す、雑然とした一角だった。駅から有楽町マリオンへ通じる沿道には喫茶店に食堂、パチンコ屋やミニシアターなどがごちゃごちゃと密集。映画「三丁目の夕日」に出てくるようなレトロ東京の風景が、今では東京最先端の複合ビルに変わってしまったのは、センセーショナルな半面、古き良きものを失ってしまったような思いもやまない。

 そんな中で有楽町銀座口出口のあたりに、当時からの商店が今も変わらぬまま残る一角がある。JRの新幹線のガードに並行した、ちょうど有楽町駅前あたりを頂点にした細長い逆三角形のエリアである。改札を出ると正面には、今や銀座でも珍しくなった露店の靴磨きが並び、すぐ左は何と、店頭にバナナやみかんを並べて売る果物屋。銀座の玄関口・有楽町駅の改札を出た正面が果物屋、というのも何だかすごい。
 有楽町2丁目地区はいわば、戦後の混乱期に形成された商業地区で、地権者が錯綜しているため土地の権利関係が複雑になっている。そのためこのエリアは再開発のための地権者の合意をとり切れず、今も手付かずのままなのだという。最先端のイトシアに隣接してがんばる、昭和レトロの町並み。これまた、変わりゆく有楽町の今を象徴する風景といえる。

 仕事の合間に昼食をとりに、このあたりまでやってくると、イトシア地下1階のフードアベニューを食べ歩きしてみるつもりが、いつも吸い込まれていくのは「昭和レトロ」の方。有楽町駅銀座口出口の改札正面、三角形の頂点にあたる果物屋に隣接して、ガード下に赤を基調とした外観、店頭のガラスケースに麺や丼や一品料理のサンプルがズラリ、と、ベタなスタイルの中華の店がある。
 『中国料理中園亭』と大書された看板に、店名を「ちゅうごくてい」と読んでしまいそうだが、正しくは「ちゅうえんてい」。かなりの数にのぼる多彩なメニューを揃えていることと、明け方4時までやっていることで、食事時はもちろん夜は酒を飲む客、さらに深夜には「締めご飯」を求める客や始発まで飲み明かす客と、いつ行っても混雑している中華料理屋である。


町の中華料理屋のような外観。すぐそばにはマリオンもそびえる


 ちょうど三角形の頂点からやや下がった位置にある店のため、ガラスの扉をガチャン、と押して中に入ると、白い木のテーブルにパイプ足の赤ビニールイスが数卓並ぶ店内は、何となく台形の形をしている。レジ横のおばちゃんはいらっしゃいませ、も、こちらへどうぞ、もなくひとこと「2階へ」とそっけない。狭く急傾斜の階段を気をつけて2階へと上がると、台形の左の辺側の窓からは昔ながらのJRのガード下、右の辺側の窓からは高くそびえるイトシアと、対照的な風景なのが面白い。
 イトシア側の窓際の席につくと、配膳場のすぐ横に位置し、隣で店員3人が中国語でずっとベラベラとしゃべっている。接客係の女性はほとんど中国人らしく、ものすごい早口で激しい口調のため、口論しているのかと思ったら唐突に一同大爆笑。客がすぐ横にいても、まったくお構いなし、といった感じである。愛想がないのは単に言葉の壁なのか、それとも本場・中国流のぶっきらぼうな接客そのままだからなのか。

 壁一面には、赤い台紙に料理の写真を貼り付けたメニューがびっしり掲げられ、どれもなかなかうまそう。卓上の品書きを見て数えたところ、飯物は13種、麺類だけでなんと40種もあるのには驚きだ。
 飯物はチャーハンの種類が豊富で、ほか中華丼、五目あんかけ丼など比較的オーソドックス。麺の方は「什景湯麺(五目そば)」、「蝦仁湯麺(えびそば)」「麻婆湯麺(マーボーめん)」など、漢字4字の料理名が品書きの片面の上から下までずらりと並ぶ。中にはトマトそば、レモンそばなんて変化球も。愛想はないけれど、料理の方は本場さながらの期待がもてそうだ。
 相変わらず早口で歓談中の店の人に声をかけて、頼んだのはルースー飯。品書きには「肉絲●飯」(注・●=火へんに会)とあり、つまりチンジャオロース丼である。餃子やシューマイなど、点心はやや値段が高めなので躊躇していたら、ギョーザは3個でも注文できるとあり、サイドオーダーに決定。
 待つ間、窓から外を眺めながら、確かこの向かいには立ち食いそばのスタンドがあったな、そういえば、老舗のオイスターバーはどこに移転したんだったかな、などと、イトシアができる以前の有楽町2丁目の風景を、あれやこれやと思い出してみる。


卓上のメニューには麺と丼がズラリ。壁にも写真入の品書きがいっぱい


 先に運ばれてきた小皿の上には、餃子が3つ並んでいる。皮がむっちりとした食感で、中は肉と野菜のバランスが良くさっぱりした味わい。中華料理屋の餃子らしい、本格的なつくりである。そしてルースー飯はごはんの上に、チンジャオロースのあんがかかっただけと、見た感じはかなりシンプル。湯気が立っていないのが気になったけれど、レンゲでひとさじすくったとたんにバッと上がる。あんの片栗が濃いので熱が封じ込められていたようで、中はちゃんと熱々。この冬一番の寒さには、うれしい温かさだ。
 あんの具はピーマン、タケノコ、細切牛肉で、特にタケノコとピーマンが素材のしゃっきり感そのままで、あんがトロリ、野菜がシャクシャクと歯ごたえがいい。あんもしっかりとダシがとってあるようで、薄味ながらもいい味が出ている。店の人がテーブル上の調味料を詰め足している様子を見て、自分の卓上にも豆板醤があるのに気づく。餃子と丼にちょっと足してみたら、瞬間に体から汗が噴き出すほど強烈。これまた、身にしみる寒さにはありがたいインパクトである。


中華料理屋らしい、中園亭の本格的な餃子。値段はやや高めか?


 この三角ゾーンも駅のまん前の超一等地なだけに、そう遠くない未来に、再開発の手が伸びることは間違いない。その時、この店はどうなっているのだろう。再開発を機に、長い歴史を閉じてしまうのか。近隣に移転オープンするのか。それともこの場所に造られるかも知れないビルのフードコートの一角で、庶民的な雰囲気と素敵な接客(笑)のまま、営業を続けているんだろうか。
 ガード下側と反対側の出口から店を出ると、目の前にイトシアのビルが高くそびえている。少しは新しく変わる町の新情報のチェックもしておかないと、三角ゾーン同様に自身も銀座界隈の変化の流れに取り残されてしまうかも? 食後のお茶ぐらいは、イトシア2階にある喫茶店に寄ってみたいが、コーヒー1杯がルースー飯と同じ値段とは…。三角ゾーンが健在のうちはこちらへと足が向いてしまうことが、まだまだ多いかも。(2008年1月25日食記)