ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚どころの特上ごはん62…鳥取・賀露漁港 『かろいち』の、ベニズワイガニ

2007年02月26日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 各地の漁港を訪れていると、カニが水揚げの主力、という土地に出くわすことがある。水揚げ地だからもちろん鮮度は抜群、そして値段も割安でたっぷり食べられる… ということはさすがになく、鮮度が良くてモノがよければ、やはり値段は高い。カニというと高級魚介、かしこまった料理という印象が強く、しかも分解してほじるのに熱中していると店の人の話を聞き漏らしたり、丸1杯食べても満腹感はイマイチ…。同じ額の予算があるなら、安いローカル魚を色々頂くほうが好みなのは、カニに原因があるのではなく、自分の不器用さと食欲ゆえか? 値段も数百円程度、食べるまでのプロセスに手間いらず、なんてカニなら、こんな私でもカジュアルにどんどん頂けるのだが。

 このたび訪れる鳥取や境港といった日本海沿岸は、まだ松葉ガニの解禁には早い。2日目に訪れた、鳥取の賀露漁港に隣接する直売所「鳥取港海鮮市場かろいち」も、各店の店頭には解禁になったばかりの底引き網漁でとれ、その日に水揚げされた鮮魚がズラリ。そんな中、カニを扱っている店も結構目立ち、何と松葉ガニもちらほら見かける。まだ解禁前なのに不思議に思い、最奥に位置する鮮魚店『若林商店』のおばちゃんによると、鳥取近海とは漁期が異なる北海道から取り寄せたズワイガニ、その名も「北海ズワイガニ」とか。ここは場所柄、関西方面からの旅行客や買い物客が中心らしく、カニ好きの関西人御用達の「本場」としては、端境期でも切らす訳にはいかないということか。

 北海ズワイガニは高級品らしく、スチロールの箱にゆったりと収まって、ブクブクと泡を吹いて元気そうである。その隣には対照的な扱いで、店頭にどちゃっと山盛りの山積みにされている、深紅の体に細長い足のカニ。こちらは解禁になったばかりの、ベニズワイガニだ。北海ズワイガニよりひと回り小さい子分、といった感じで、品札に目をやると3枚で2000円程度と、「親分」よりもゼロがひとつ少ない値段にビックリ。甲羅の大中小、足の太い細いなど大きさは様々、「手にとって、好きなのを3枚選んでいいよ」とおばちゃんが勧めてくれる。松葉ガニに比べて相当大雑把な扱いだが、かえって庶民派ローカル魚ならでは、という雰囲気。持って重さを比べていると、足の太さで値が違い、ハサミが太いのが身が詰まっているよ、と選別のアドバイス。「身が詰まっているといっても小さいなりに、だけどね」と笑っている。

 ベニズワイガニは呼称に「ズワイガニ」と付くけれど、松葉ガニとは別の種類のカニである。松葉ガニに比べるとやや小柄、名の通りゆでる前から鮮やかな紅色をしているのが特徴。賀露漁港が誇る、お手軽な値段の地のカニ、かと思ったら、賀露漁港は松葉ガニ漁が専門でベニズワイガニ漁はやっていない、と店のおばちゃん。かろいちで扱っているベニズワイガニは、県内の浜坂や境港、香住で揚がったものという。ちなみにベニズワイガニは、全国シェアの6割が境港のものとか。いわば境港を中心とした、鳥取沿岸のローカル魚介ということだろう。「ベニズワイガニは本来はカニ缶、つまり缶詰用のカニで、昔は鮮魚としては売らなかった。でも今は安い上に身が甘いので人気が出ている」とおばちゃんが話すように、松葉ガニと値段が10倍ほど違う割に味に極端な差はない、との意見も。「旬の松葉ガニは絶品だけど、この時期の地元の味ならベニズワイね」と勧められて足を一本、ぺキッと折って渡されたのをしゃぶってみると、確かに瑞々しくホロリとした食感に、ほんのりとした甘さが漂う。

 試食でいただいたのが松葉ガニだったら、味見した以上買わないと、でも高くつくな、などと心配のあまり落ち着かなくなるところだが、お手ごろ値段のベニズワイガニなら気楽なもの。あとで2、3枚買っていくことにしよう、とのんびり試食を続けていたら、気に入ったのなら真ん中にある広場にあとで行ってごらん、とおばちゃんが教えてくれる。この日はかろいちの「秋の味覚魚まつり」が行われていて、サービスでベニズワイガニ汁がお客に無料で配布されるという。会場ではすでに大きな鍋がグツグツ、中には大量のベニズワイガニが入っている様子。紅色の足が、何本も覗いているのが見える。

 配布開始の時間にはまだちょっと早いけれど、若林商店のおばちゃんが、鍋の面倒を見ている親父さんと交渉。味見役をやりますから、ということで、一般のお客よりフライングさせてもらった。「一番乗りで食べると、カニ味噌がたっぷりだからうまいよ」と親父さんによそってもらった椀からはたっぷりの味噌汁の中から足が3本、はみ出すようにのぞいている。そばにあるテーブルに腰を下ろして、さっそく汁からひとすすりする。味噌味がやや薄い分、カニの香ばしさがよく出ている印象で、親父さんの言うとおりこれがカニ味噌ならではの味のよう。続いて足をつまんで身をひっぱり上げると、ふたつに断ち割った半身がそのまま入っていて、豪快というか大サービスだ。足を胴から外して、節を折った拍子に汁がビュッ。足はストローですするようにツルリと頂くとトロリと甘く、胴は殻ごと口に入れてしゃぶると、しっとりとした身がいっぱい。不器用な自分でも思ったよりも食べやすく、気が付くと椀の中には殻の残骸だけとなった。

 店頭で足を試食させてもらい、遅い朝食代わりにカニ汁ですっかり温まったら、若林商店に引き返してベニズワイガニを買っていかない手はない。底引き網の魚介についてあれこれ教授いただくなど、お世話になったお礼も込めて、おばちゃんにベニズワイガニと、ついでに生の北海ズワイガニもリクエスト。足が太いのを見繕ってくれて、合わせて5枚ほどのカニが発送用のスチロール箱の中に仲良く納まった。さらに列車で食べるといい、とおまけにアゴちくわもサービス。礼を伝えると、「しっかり勉強していった?」と笑いながら、自分の顔を手のひらでピタピタとやられてしまった。松葉ガニのような高貴さ、気品はないけれど、押しの強い庶民的な味というイメージの「地ガニ」ベニズワイガニ。高価な上食べるのがめんどくさい、という自分のカニに対する認識が少しは改まったのは、元気なおばちゃんの勧めのおかげか、それとも簡単に食べられ、しかも安い(というかタダの)カニ汁のおかげか。(2006年9月24日食記)

魚どころの特上ごはん61…鳥取・賀露漁港 『かろいち』で、底引き網の魚介を見物

2007年02月24日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 賀露漁港へ向かうバスに乗ろうと、ホテルからバスターミナルに向かう途中、鳥取駅前で面白い銅像を見かけた。大和時代の装束をまとった男が、ウサギに向かって何やら諭している様子。「おきのしま」という島から因幡国へと、ウサギがワニの背中を伝って渡ってきた、という、出雲神話で有名な「因幡のしろうさぎ」の1シーンである。因幡国とは今の鳥取県のことで、渡ってきた海とはもちろん、9月に解禁された底引き網漁が最盛期の日本海だろう。神話では、ウサギにだまされて飛び石代わりにされたワニが怒って、ウサギの皮をはいでしまう、というオチだけれど、何隻もの船が網をじゃんじゃん引っ張りまわして騒々しい日本海を、ワニはどう思っているんだろう、あれ、そもそも日本海にワニなんているんだろうか。

 賀露漁港へ向かうバスは鳥取駅を出ると、市街を抜けて田園地帯、さらに郊外の住宅街の中を進んでいく。坂道を登ったところで、眼下にパッと広がる凪の海。漁港へ向かうのに、全然海らしさを感じないな、と思っていたところで、ハッとするほど鮮烈なインパクトだ。その坂道を下るとようやく、漁師町風情の漂う細い路地へと分け入り、抜けたところで海、というより幅広の河口に面したバス停へと到着した。「鳥取港はここだよ。かろいちへはあっちへ向かってちょっと歩くかな」と運転手に教えられ、ここで下車。市街を流れる千代川の河口に位置するこの鳥取漁港、西日本有数の貿易の拠点で、大型船舶が停泊できるバースが整備されるなど、大規模な港湾設備が充実している。そして西浜地区に位置する漁港が、通称「賀露漁港」。こちらも立派なコンクリートの岸壁に、大きな体育館のような荷捌き所、そして周辺にも漁業関連施設がずらり。山陰の漁港、と聞いて、たたきつける波濤に耐えるようにたたずむ、小ぢんまりした港を想像していたが、実に大型で近代的な漁港だ。とはいえ土曜日は競りがないらしく、寄航している漁船の数はまばら。巨大で近代的な分、かえって閑散とした印象が強まってしまう。岸壁を歩いていて見かけるのは釣り人ばかり、まるで巨大な釣堀のようにも見える。

 天気は快晴、右手には水平線で接する、秋晴れの青空にベタ凪の碧い海。荒波逆巻く日本海、というイメージとは対照的な中、気持ちよく港町散歩を楽しむこと10分ほど。ようやく左手のやや高台に、「かろいち」と書かれた大きな倉庫のような建物が目に入ってきた。こちらは閑散とした漁港とは対照的に、広い駐車場には大型バスやマイカーでほぼ満車の状態。まだ昼前だというのに、観光客や買い物客で結構な賑わいを見せている。正式名称は『鳥取港海鮮市場かろいち』。隣接する賀露漁港ほか、県内の主な漁港でその日に水揚げされたばかりの鮮魚を扱う直売所である。館内にはいくつもの鮮魚店をはじめ、干物や練り物といった加工品を扱う漁協の直売所、さらに農協の直売所に郷土のみやげも揃い、フィッシャーマンズワーフというよりは「観光物産店」「道の駅」といった感じもあるか。いけすを備えた食事処や寿司店、海鮮料亭など、食事処も充実。まさに海産物の総合マーケットといった感じの施設だ。

 場内狭しと並んだ鮮魚店では、スチロール箱に色々な魚を詰めて売っていたり、大箱にドンと大物の魚を一匹入れて売っていたり、台の上にカニや小魚をズラリ並べて売っていたり。さすが漁港に隣接の直売所、どこも素朴な港の魚屋風情が漂っている。この時期は9月解禁の、隠岐の近海を漁場とする底引き網漁の漁獲が豊富… とは、昨晩飲んだ居酒屋「ぐらっちぇ」で、お兄さんにレクチャーして頂いた成果が出ているというもの? 見たところカレイが種類豊富で、煮つけや干物にするやや高級な赤ガレイ、身が水っぽく安価な山ガレイ、干物中心で白っぽいエテガレイなど。イカは茶色っぽい白イカに、昨日刺身で頂いた黒っぽいシマメイカ(スルメイカ)は、箱売りで結構安いようだ。どの魚も水揚げ港の札付きで、網代、境、鳥取などの札がのっているのがさすが、県内の漁港直送、といった感じ。昨晩、店で話を伺ったり、刺身で食べた魚を、こうして丸一匹の姿を「実地学習」していくのは何だか楽しい。

 鮮魚店をあちこち覗いて場内を歩いているうちに、気がつけば市場の最奥まで来てしまった。店頭を眺めて話だけ聞いては買わずに次の店へ、と飛び石のように鮮魚店を点々としているのは、まるで因幡の白兎のごとし。でもこのまま何も買わないと、市場を出る前に皮をはがされかねないか。最奥にある「若林商店」で、腰をすえて品定めして、何かひと箱買っていくことにしよう。出迎えてくれたおばちゃんは、どうぞ、ゆっくり勉強していってねと、皮をはがれそう(?)どころかとても親切。この時期は赤ガレイやモサエビ、白ハタが旬とのことで、お勧めはモサエビ、というあたりは、昨晩のレクチャー同様である。見た目はというと茶色っぽく、ずいぶん地味な印象で、鮮やかな赤色が食欲をそそる甘エビの方がうまそうだ。味が濃厚で野趣あふれる風味のため、「刺身もいいけど甘エビよりも身にこくがあるから、塩焼きがおすすめ。うまいエビなのに、PR不足ね」と店のおばちゃんの話すとおり、ご当地で食べてこそうまい「ローカル魚」だろう。

 同様に白ハタも、あまり聞きなれないからこの地方のローカル魚と思ったら、ハタハタのこととか。本場、秋田のより脂がのってうまい、とおばちゃんが胸を張る。秋田が誇る地魚という印象が強烈だが、日本海沿岸では賀露漁港での水揚げ量は屈指、本場の秋田へ回しているほどというから恐れ入る。そのすぐそばに並んでいる魚の「視線」を感じて振り向くと、白っぽい太目のドジョウのような魚体に、つぶらな菱形の瞳がキラキラ輝いているのが何とも愛らしい。これまた珍しいローカル魚「ドギ」。底引き網でとれる深海の魚で、今はまだ身がやせているが、冬になると太くなり、味噌汁の実にするという。汁椀のなかからこの瞳で見つめられたら、ついつい食べるのをためらってしまいそうだ。余談だが、白兎の皮をはいだワニも、山陰地方のれっきとした地魚だ。ワニといっても地元ではサメのこと、と説明するまでもなく、日本海にクロコダイルやアリゲーターがいる訳ない。境港や島根県の大田市などに水揚げされ、鮮度落ちが遅いために古くから山間部へ運ばれて食べられていたという。

 と、ローカル色が強い個性的な地魚についつい興味がそそられてしまったが、日本海のキング・オブ・地魚といえば、何といってもカニだろう。鳥取県は全国のカニの水揚げ量で、常に上位4位に入り、鳥取市の1世帯あたりのカニの年間購入量は、全国でトップという、まさにカニ処、カニの国だ。店頭にドッと山積みにされている紅色鮮やかなカニは、9月に解禁になったばかりのベニズワイガニ。賀露漁港ではベニズワイガニ漁は行っていないため、店に並んでいるのは境港など、県内の別の漁港で水揚げされたものである。そして11月1日の解禁になると、かろいちにもいよいよ冬の味覚の王者・松葉ガニのシーズンが到来する。だがこの時期にも、あちこちの店頭で松葉ガニが並んでいるのを、結構見かけるのが不思議だ。おばちゃんによると、「あれは松葉ガニじゃなく、北海ズワイガニ」。松葉ガニとはズワイガニの雄を指す山陰地方での呼称だから、つまり「北海道でとれたズワイガニ」である。ズワイガニは山陰地方と北海道では漁期が違うため、このあたりの禁漁期には北海道のズワイガニが入ってくる。カニ処だけに、端境期とはいえズワイガニは品切れ、という訳にはいかないからなのだろうか。

 この店の店頭のは紋別から生で空輸しただけあり、店頭で泡を吹いているほどのイキの良さである。たっぷりの塩を加えて20分ほどしっかりゆでるか、足に切れ目を入れて焼きガニにするとうまい、と勧めつつ、「松葉ガニの漁期まではこれを扱うけど、味はやっぱり地物が一番」とおばちゃんは正直だ。この時期にカニを食べるなら、詰まり方は北海ズワイ、味のよさはベニズワイと、もうひとつのお勧めであるベニズワイガニについては、次回にて。(2006年9月23日食記)

町で見つけたオモシロごはん80…新橋 『伍味酉』で、名古屋コーチンを頂きつつ名古屋の未来を考える

2007年02月22日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 大盛況のうちに終わった2005年の「愛知万博」が、この国に伝え残したメッセージは何だろう。自然との共存の大切さか、新たな技術進歩への期待か。いや何といっても、その筆頭は「名古屋グルメの日本席巻」と思うのは、多分私だけでないはず。味噌カツ、天むす、名古屋コーチンなど、東京周辺でもこうした料理を普通に出す店が、ずいぶん増えたような気がする。

 その後2年近くが経ち、現在の万博会場は、そして名古屋はいったいどのように変貌を遂げたのか、と関心をもつ人は、多分私も含めあまりいなくなったのでは(笑)。地元はそんな状況に一念発起してか、名古屋を中心とした愛知県の観光懇談会が東京で行われることになり、自分も招待して頂いた。この懇談会、ここ数年毎年行われていて、いずれも名古屋グルメの地元の有名店の東京店で開催されてきた。今回の会場は『伍味酉』という店。名古屋ではよく知られた、手羽先が評判の居酒屋である。最初に参加したときは味噌カツの「矢場とん」銀座店、その翌年は名前は忘れたが、同じく銀座でずいぶんファッショナブルなのにフードは名古屋流、という面白い店、そして今回は手羽先と、毎年趣向が変わっていて楽しい。

 来年の会場は味噌煮込みうどんか、はたまたひつまぶしか… など、少々気の早いことを考えながら、新橋駅から歩くこと5分ほど。手羽先とのことなので、最初に参加したときの庶民的路線なのか、と思ったところ、席に通されて少々驚いた。暗めの照明に簀の子風の壁面装飾、天井はブラックでパイプがむき出しと、前衛的というか個性的というか。「フランス人のデザイナーにお願いして、内装は凝りました。もっとも、名古屋の店は普通の古い居酒屋風ですが」。店はハイソだけど味は土着、と笑う主催者の説明によると、本店は名古屋の栄にある、昭和31年創業の老舗で、本場・名古屋直送の純系名古屋コーチンと、八丁味噌を素材にした郷土料理が自慢という。この日は名古屋コーチンを用いた各種料理が頂けるとのことで、ぜひとも「土着の味」を満喫することにしよう。

 乾杯、とともに伺った同席した役所の方の話によると、市街には今年と来年に高層ビルが立て続けにオープンするほか、名古屋テレビ塔のリニューアルに名古屋開府400年など、「ポスト万博」の話題はそこそこあるようだ。話が盛り上がりつつ、最初の1品であるどてみそ串かつと手羽先揚げを肴に、ビールをグイッ。味噌カツといえば、揚げたてのトンカツに味噌ダレをかけたのが思い浮かぶだろうが、実は味噌カツのルーツは、屋台で串カツをどて煮(スジの味噌煮込み)のタレに誤って落として食べたらうまかったのが起源、なんて説もある。だからこのように串カツスタイルで頂くのが、元祖流なのかも。味噌は例の「八丁味噌」で、赤黒い見た目がかなりくどそうだけど、サラリとした食感で意外に軽い。そしてもう一品の手羽先揚げは、もとは捨てる部位だった手羽先に、タレをつけて揚げただけのシンプルな料理。骨を外すのに悪戦苦闘しながら、歯でこそげるようにして頂くと、甘めの味付けに皮がパリパリ。身が少ないから、皮の食感とタレの風味を楽しむ料理のようだ。

 味噌カツの味噌ダレの材料にもなっている八丁味噌は、まさに名古屋庶民の味、ソウルフードといっても過言ではないだろう。名古屋から30キロほど東に位置する岡崎に醸造元があり、大豆と水と塩だけからつくる甘い「豆味噌」。以前工場で醸造過程を見学したことがある、と話すと、名古屋は「モノづくりの街」、今後は工場見学など、産業観光も柱にしていきたい、なんて話も出てきた。トヨタの「産業技術記念館」にノリタケのミュージアム、さらに瀬戸や常滑、有松といった伝統工芸の町など、見て、遊べて、学べて、ついでにおみやげも、という体験観光は、これから注目されるかも知れない。もちろん食文化だって、体験観光のひとつの要素だ。せっかくだからご当地である役所の方に、地元でも人気の「名古屋グルメ」の店を挙げてもらったところ、みそかつの「矢場とん」に、手羽先は「山ちゃん」と「風来坊」、ひつまぶしは熱田神宮前の「蓬莱軒」、さらに、実は台湾料理じゃないんだけど、と笑いつつ、台湾ラーメンの「味仙」といったところがピックアップされた。

 続く串焼きからいよいよ、本格的名古屋コーチン料理の登場だ。もともと愛知では、江戸期・尾張藩の頃から鶏の飼育が盛んで、明治期に旧尾張藩士を中心に養鶏の技術が工夫・改良され、この「名古屋コーチン」という品種が確立したという。一方、評価が上がるにつれいわゆる「まがいもの」が、幅を利かせるようになってしまった。そのため現在では名古屋コーチン普及協会の会員が、公認の種鶏場より供給された種鶏を、名古屋周辺で生育させた鶏のみが「純系」名古屋コーチンと名乗ることができる。この店で扱っているのも、もちろん「純系」だ。その貴重な串焼きは、コーチンつくねと肉皮ネギの2種。地鶏、といえば独特のくせがあるのだが、つくねをひとかじりするとコクのある澄んだ旨み、ほんのりと香る甘味に絶句。肉皮ネギもまた同様、力強い味と雑味のなさは、さすが地鶏の中の地鶏、といった感じである。そしてそのまま名古屋コーチン鍋に突入である。肉とつくねに白菜、エノキ、シメジを煮込み、これまたつくねから頂くと甘いこと。砂糖っぽさのないギリギリの甘味で、もったりした食感もまたいい。肉の方は鍋で頂くと串よりも旨みがしっかりと濃く、煮込んでもダシガラにないからゆっくりと頂ける。

 煮込んだ肉からつゆに甘味が出て、それが野菜の味のいい下支えにもなっている。その最良の鶏のダシで雑炊、ではなく、そこは名古屋グルメ。鍋の仕上げに入れるのは飯でもうどんでもなく、きしめんだ。きしめんは普通、広めの麺を醤油やカツオのダシで頂くけれど、旨み濃厚な名古屋コーチンスープで頂くと、平麺に味がいっそう良く染みる。例えれば豪華なチキンラーメンのような、締めの麺ものを頂いたところで、ちょうど宴たけなわ。味噌カツや名古屋コーチンのように、インパクトの強さと分かりやすさが、今後の名古屋観光のキーワードでは、などと結論になっているようななっていないような感想を述べて、席を立った。おみやげにと渡されたのは名古屋名物のういろう、そしてその手提げ袋の派手なこと。真っ赤な地に手羽先、味噌煮込みうどん、台湾ラーメンなどのイラストがデカデカと描かれ、電車の中で注目されること必至だ。これぞインパクトの強さに分かりやすさ。しっかりごちそうになったのだから、しっかり提げて名古屋の宣伝をしながら帰るとするか。(2006年12月食記)

町で見つけたオモシロごはん79…横浜 『横浜金沢七福神めぐり』の、お接待の七草がゆ

2007年02月20日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 「春の七草」を7種全部、すらすらと挙げられるだろうか。せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草、が正解。ではそれぞれ、一体どんな草花かご存知だろうか。ちなみにごぎょうとは「ははこぐさ」という、田んぼのあぜに生えている草で、ほとけのざはシソ科の「おにたびらこ」。せりやなずな、すずなとすずしろは言うに及ばす… か? 正月が過ぎて1月7日に頂く「七草がゆ」は、これらを炊き込んだお粥で、時期になるとスーパーなどで七草全種をパックで売っているのを目にする。昔は野や田んぼで摘み草で収穫してきたのだろうが、近頃は摘み草はおろか、七草がゆを食べること自体、少なくなってしまった。1月7日といえば仕事始めを過ぎているし、すっかり通常の生活のリズムになってしまっているため、そんな風習があったことをつい、忘れてしまいがちだ。

 今年の暦は、仕事始めの後がすぐに週末、さらに成人の日も加えた3連休となり、なかなか正月ムードが抜けきらない。3連休の中日の日曜には、自宅近くの七福神めぐりのスタンプラリーが催されることになり、家族みんなで出かけることとなった。「横浜金沢七福神」めぐりは、金沢区に点在する7つの寺社を巡り、参拝してスタンプをもらうという趣向で、我が家の毎年年始恒例行事のひとつにもなっている。自宅最寄の富岡八幡宮をスタートに、布袋尊の長昌寺、福禄寿の正法院、弁財天の瀬戸神社へ。寺社は京急線で3駅ほどの広範囲に点在しているため、歩きではなくクルマを利用、おかげで楽々、順調にスイスイと進む。大黒天の龍華寺や毘沙門天の伝心寺あたりは、古くからの漁師町風情が今も残るエリアで、漁師にとっての鎮守様や菩提寺といった感じか。巡るにつれてどんどん海のほうへと向かっていくのが、ここの七福神めぐりならでは、といった感じである。

 最後に残った「宝蔵院」は、東京湾に面した柴漁港に近い、昔ながらの漁師町に位置する寺である。シーサイドラインに沿った、海の公園沿いの通りから、行き違いもやっとなぐらいの細い路地を何とか登り、やや高台にある寺へと到着。小ぢんまりした境内からは海のほうが一望でき、かつての海岸線と、その先の埋め立てられたエリアがなんとなく分かる。さらに遠くにそびえる、横浜八景島シーパラダイスの展望塔。かつて安藤広重が浮世絵に描いたという「金沢八景」の景勝のひとつ、「乙艫の帰帆」と称される海岸風景を頭の中で想像して、目の前に広がる風景と比較してみる。

 ここで寿老人のスタンプを押してもらって、七福神めぐりは無事終了。駆け足で寺社をまわったため、ちょっと一休みしていきたいところだ。すると境内の一角で、大きな鍋で何やら炊いているのを見かけ、足を運んでみると「七草粥」との貼紙が。七福神めぐりの参拝者向けのお接待らしく、境内で立ったまま頂いたり、本堂の階段に腰掛けて食べている人の姿も見られる。お昼もまだだったので家族全員分の4つお願いすると、大きな鍋から椀に盛りながら「本堂のほうへ運ぶから、どうぞあがってお待ちください」とのこと。本堂の中に食事と休憩用の席が設けられていて、お茶とお茶菓子まで用意されている。お言葉に甘えて皆で腰を下ろし、七草粥とお菓子で遅いお昼兼喫茶タイムとした。

 そもそも七草粥は、正月にご馳走やお酒をたくさん頂いて疲れ気味の胃腸を休めるための料理とか、正月料理から日常の食生活に戻る区切りの料理とか、目的は諸説唱えられている。1月7日の朝に無病息災を祈願して頂くのが慣わしとされているが、実際にはこの頃に春の七草はまだすべてがそろっておらず、家庭にある野菜を7種ほど適当に刻んで入れるのが一般的なのだとか。確かに七草のなかでも、すずな(カブ)とすずしろ(大根)、あとセリ以外は、家庭ではちょっと手に入りづらいのだろう。ちなみに七草を正しくすべて入れると、かなり青臭い粥になってしまうらしい。この日頂いた粥も、すずな、すずしろにせりに加え、餅を加えてあるのが面白い。ひと口頂くとほとんど味がついておらず、素材の味そのまま、究極のあっさり味だ。確かに草の香りが鮮烈だけれど瑞々しくもあり、草の生命の息吹きを感じる味である。すすっては、卓上にあった塩を適度に振り、を繰り返し、さらりとあっという間に頂いてしまった。

 この日は空がすっきりと晴れ渡っており、足元からビシビシと凍みるような冷え込み。加えてこの正月は、少々過食、過飲気味だったから、こうしたあっさりと温かい食事は実に身にしみる。例年だと忘れがちな1月7日の七草がゆも、暦のおかげ、そしてスタンプラリーのおかげで、今年はありがたく味わうことができた。この後はゴール地点である横浜八景島シーパラダイスへ、スタンプの台紙をもって行くと、記念品が頂ける。そういえば八景島ではちょうど、秋田の物産フェアをやっている真っ最中だ。七草がゆで胃腸の調子も上がってきたことだし、地酒の試飲にテイクアウトのキリタンポ、横手やきそばと、七福神めぐりの精進落としを楽しむとしようか。(2007年1月7日食記)

魚どころの特上ごはん60…鳥取 『ぐらっちぇ』の、底引き網の魚介と砂丘の味覚

2007年02月18日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 瀬戸内から宇和海、太平洋と、漁港の町を巡ったこの夏は、「酷暑」と表現できるほど厳しい暑さだった。9月の終わりに近づき、幾分気候が落ち着いてくると、今度は日本海の魚介がおいしくなる時期だ。秋から冬にかけては、日本有数のブランド魚介である松葉ガニやブリが注目の的となる一方で、近海の底引き網漁も最盛期を迎える。「魚どころ」日本海の、高級魚から大衆魚まで、おいしい地魚がそろうシーズンの到来である。そんな訳で、2006年秋の食紀行に選んだのは、鳥取の2大漁港ともいえる賀露漁港と境港漁港。解禁されたばかりの底引き網の地魚にターゲットを絞り漁港を歩いてお魚を頂いて、といきたい。さらに「宍道湖七珍」と称される宍道湖の湖魚も注目、そして新そばのシーズンを迎えた出雲そばも見逃せない、ということで、松江や出雲にも足を伸ばすことに。例によって3泊4日の旅程にしては食べたいもの盛りだくさん、うまいもんてんこもりの旅となりそうだ。

 夕方に銀座での仕事を終えて羽田空港に直行、最終便に飛び乗って1時間半ほどで鳥取空港に着陸した。鳥取駅前にあるホテルにチェックインした頃には21時をまわっており、こんな時間だけどやはり、地魚を肴に地酒で一杯、で旅の口火を切りたいものだ。ホテルのフロントに教えてもらい、繁華街の末広通りへと足を向けたところ、沿道には居酒屋やバー、小料理屋などの明かりがいたるところに灯っている。さすがは鳥取随一の繁華街、とまずはひと安心。その一角に見かけた『居酒屋ぐらっちぇ』を、このたびの旅の記念すべき1軒目とし、めでたく暖簾をくぐった。3、4人程度のカウンターと小上がりだけの小さな店で、若い兄さんが板場を、お姉さんが接客を担当している。金曜のこの時間なのに客は自分だけと少々さびしいが、カウンターに腰掛けると手持ち無沙汰だったのか気を遣ってか、あれやこれやと話しかけてくる。高知生まれという兄さんは、東京にはいい料理屋が集まっているね、秋葉原やTDLとか行ってみたいな、など、ずいぶん東京への憧れが強い様子が、何だか素朴で面白い。

 ホテルでもらったグルメガイドによると、この店は山陰の旬の食材を使った板前料理に素朴な家庭料理、酒の肴向けの一品料理と、幅広いジャンルの料理が自慢、とある。山陰の旬の食材の中でも、気になるのはやはり、魚料理。まずはビールと、突き出しをつつきながら、兄さんから旬の魚や鳥取の漁業について、食べ歩きの旅の始めに情報収集である。今は9月に入り底引き網漁が始まったばかりで、主要漁獲であるベニズワイガニがちょうど走り、という。「ズワイガニ」と名がつくが、山陰の冬の味覚の王様である「松葉ガニ」とは別の種類の、やや値段が安いお手ごろなカニ。本家・松葉ガニのほうは漁期が11月からなので、まだ地物は出回っていないという。ちなみに鳥取近海での漁は、夏の岩ガキと冬の松葉ガニが漁獲の中心で、「底引網→岩ガキ→底引網→松葉ガニ漁→底引網… の繰り返しだね」と兄さん。

 そこで解禁したばかりの底引き網でとれる魚種を尋ねると、「9~12月だとベニズワイガニ、スルメイカ、イワシ、サバ、白ハタ、ブリ、ツブ、ヒラメ、赤ガレイ、モサエビ…」ときりがない。エビはモサエビをはじめ、色々な種類がごっちゃにとれるという。味がいいのは鬼エビで、名の通りとげが多く軍手でつかんでも痛いほどとか。イカは白イカ(マイカ)をはじめ、スルメイカ、さらに安いシマメイカなど、こちらも種類が豊富だ。お兄さんのお勧めは、値段の安いシマメイカ。身はやや黄色がかっていて、刺身よりも塩辛に向いているそうで、たっぷりのワタに塩を振って後から身をあえると最高、とのこと。今が旬の白ハタも、脂がのった白身がうまい、と、これからの旅に期待が持てそうだ。底引き網漁の漁場はやや遠い沖合で、漁獲される魚介は、郊外の賀露漁港に水揚げされる。鳥取では沖泊して魚倉が一杯になるまで漁をするため、漁期が長いという。

 そして日本海の冬の味覚の代表格・松葉ガニも、同様に底引き網漁の漁獲だ。60~95トンの底引き網船を使って、隠岐周辺を中心とした海域の水深200~500メートルで操業する。漁期は11月1日~3月20日のため、今回の旅ではあいにく間に合わなかったが、上物で1杯で2~3万円と、旬の時期だったとしても果たして予算があったかどうか。「確かに松葉ガニは高いけど、料理屋にしてみりゃゆでるか湯通しして花を咲かせ、ドンと出しておけばいいから、ある意味楽」とお兄さん。とはいえ松葉ガニをゆでるのはかなり難しく、カニの扱いを熟知した熟練の技を要するという。特に生きたカニは危機を察知すると、足を自分で落とす「自切」をする習性があるため、生きたままいきなり湯に入れると、足がバラバラになってしまう。そこで活けのカニをゆでる前には、真水に入れて締めるのが常識なのだとか。そんなキング・オブ高級魚介の松葉ガニも、昔は今よりも値段がずっと安かった、とお姉さんも話に加わる。地元の年配の人にしてみれば、おやつがわり、こたつのみかん程度の感覚だったそうで、みかんの皮をむくようにカニの殻を割ってしゃぶって、というのも何だかすごい。

 さすがに今では、地元でも松葉ガニは贈答用にされることが多く、普段使いで食べるのはベニズワイガニや水ガ二といった、「値札にゼロがひとつ少ないカニ」という。中でもここ数年、地元で知名度がアップしているのが水ガニ。松葉ガニほど生育していない、まだ若いカニのことを指す。名前からして少々水っぽい食感をイメージする人もいるだろうが、松葉ガニにない瑞々しさと甘みが、好評を博しているという。名前から受ける印象を考慮してか、県漁連が新たにつけた呼称は「若松葉ガニ」。新鮮さと瑞々しさが感じられるのに加え、一応「松葉ガニ」を食べている気分にもなれるか。「味は松葉ガニより大きく劣ることはなく、むしろ甘みはこちらが上。何たって松葉ガニ1枚分の予算で、若松葉なら4~5枚買えるからお得」と、店の人もイチオシだ。ほか、「若」がつかない松葉ガニにも、お手ごろ値段の目玉商品があるという。それは、足が取れてしまった松葉ガニ。見た目が悪いため料理屋や旅館などに敬遠されることに加え、そこから胴に海水が入り味噌が溶け出してしまうため、値段が半値以下に下がってしまう。とはいえ、足の身の味は松葉ガニそのものだから、「お客に出すときは足をばらして、本数を合わしちゃえば分からないし」とお姉さんは笑う。この足とれのカニ、地元では「ヤッチャンガニ」と、何とも危険? な俗称もあるとかないとか。

 と、突き出しでビールを飲みながら魚の話がどんどん盛り上がり、つい料理を注文するペースが遅くなってしまった。ご講義いただいた底引き網の魚介を中心に、つくりをおまかせにしたところ、白イカ、白ハタ、カンパチ、アジ、サーモンの5点盛りが出てきた。白ハタとはハタハタのことで、日本海沿岸では鳥取の賀露漁港が、屈指の水揚げ量を誇るという。ハタハタの本場である、秋田で水揚げされるものよりも脂がのっていると評判が高く、漁獲量が多いこともあり秋田へ回しているほどとか。旬なだけの脂がよくのっていて、軽くあぶった皮目の部分が実に香ばしい。コリコリと歯ごたえがいいイカにも気をよくして、ゲソ焼きも追加で注文。こちらは熱を加えてあるので旨味が倍増、歯ごたえシコシコ、プリプリと心地よい。カンパチとアジ、サーモンのトロリとした脂にビールが進み、お次は地酒の「日置桜」をおかわり。市内の青谷町に蔵元があり、やや甘いがきつさがなく、素直にスイスイと入っていく。

 日置桜と一緒に頼んだ、大振りのラッキョウが入った小鉢にも箸が進み、程よい酸味が酒の味を深めてくれる。鳥取砂丘の周辺で栽培しているもので、その名も「砂丘ラッキョウ」。「鳥取の名物といえばやっぱり、砂丘。ラクダにのったり遊覧馬車で散策するのもいいし、ラッキョウとか梨とか特産品もあれこれあるしね」。砂丘ラッキョウ以外にも、因州和紙で地鶏卵を包み、砂丘の砂に埋めて250度の高温で加熱した「砂玉子」、さらに砂丘ラッキョウを材料にしたドレッシング「ラッシング」なんてのもあり、評判を聞いたら「う~ん…」。砂丘にまつわる酒はないの、と聞いてみたところ、ラッシングよりはおすすめです、と砂丘名物の長芋からつくった「砂丘長芋焼酎」が出てきた。ストレートでやるとグラッとするほど強烈、追っかけで水を飲みながらでないと、旅の初日からノックアウトされてしまいうだ。ラッキョウをかじり、焼酎をグッとやってグラッ、すると一瞬、競りあがる砂の丘とその向こうに広がる荒波の日本海が、パッと脳裏によぎったような気がした。(2006年9月22日食記)