ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ホテルオアシス中央@新今宮

2018年06月30日 | 宿&銭湯・立ち寄り湯
昨夜泊まった新今宮界隈は、楽天で調べると1500円クラスがゴロゴロ出るあのエリア。何度か泊まった「オアシス中央」、今回は4900円だがこの日の大阪市街のシングル最安値。部屋はコンパクトだがフローリングで清潔感にあふれ、この手の宿ではめずらしくユニットバス付き。コーヒー無料のロビーはシティホテル顔負けと、満足度は高い。近隣には激安スーパー「玉出」もあり、飲み歩きはちと怖いので晩御飯はここで。バランスよく300円也。

ローカル祭りのハレごはん…岸和田・だんじり祭り/『歩っ歩や』の、かんとだき

2018年06月30日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
だんじり祭りと並ぶ岸和田のシンボルといえば、市街にそびえる岸和田城だ。楠木正成の一族・和田高家が築いた城で、そもそも「岸」という地名の場所を「和田」氏が治めたことが、市名の由来という。白亜の眩しい天守は周囲を堀に囲まれており、この外周がだんじり祭りのラストを飾る「宮入」のルートになっている。紀州街道から難所の「こなから坂」を駆け上がり、堀に沿って西〜南〜東と城を4分の3周して、隣接する岸城神社の境内へと入っていく。豪壮な天守を巡り廻る、装飾が満載の勇壮なだんじりは、さぞかし絵になるシーンだろう。

こちらも天守を見ながら堀を半周して、岸城神社の境内へと足を向けた。岸和田城三の丸に鎮座しており、もともとこの地にあった稲荷社に五穀豊穣を祈願した祭りのため、一説ではだんじり祭り発祥の地ともされている。9月の例祭の際には、市街を曳き廻されただんじりが15台、宮入して勢ぞろいする様が壮観だが、今の境内は夏の装い。七夕の竹飾りや夏越の祓えの茅の輪が据えられ、輪を八の字に潜り無病息災祈願してしばし佇むと、あたりには軽く響く風鈴の音しか聞こえてこない。鳥居越しに城から入ってくるだんじりの宮入の熱気を、想像するのが難しいほどの静寂さである。

祭のルーツである社、臨場感ある映像を見られる資料館、城から旧街道への巡行ルート。由縁のある場所にひととおり場所に足を運んだら、だんじり祭りへの理解が深まったのと合わせ、印象もずいぶん変わったような。最後はだんじりも走行する岸和田駅前商店街のアーケードで、ハレごはんをいただいて締めくくりとしたいところだ。祭の地の商店街らしく、一般の商店に混じり提灯屋や足袋や晒しを売る店が混じる中を歩くと、駅のそばでカウンターのみの小さな飲み屋に出くわした。店頭の「年がら年中『かんとだき』」の貼り紙にやった、とばかり、この「歩っ歩や」に腰を据えることにした。

扉をくぐるとまだ16時のせいか、店のおばちゃんと常連らしい親父さんがひとり、カウンターを挟んで談笑していた。隅に留まって生ビール、そしてさっそく「かんとだき。ちくわとダイコンとゴボ天と厚揚げ、あと玉子もね」。すぐにおばちゃんは手際よく、奥の鍋から各種盛って出してくれた。どれも汁の色が程よく染みて、いい味が出ているよう。長いちくわはほんのりダシの香りが漂い、ゴボ天はゴボウの土の香りがどっしり根をおろす。ダイコンは箸をかけただけで切れる柔らかさで、煮崩れないギリギリの締まり加減がいい。

概ねの想像通り、かんとだきとはいわゆる「おでん」のことだ。期間中には各家庭でつくられ、祭りを観に町へ来た親戚一同に供されるほか、各町の曳行の本部、町中の屋台など、あちこちで味わわれる。まさにだんじり祭の際のもてなし食、かつ参加する者の食でもあり、くるみ餅とこの時期が旬のワタリガニと並ぶハレごはんなのだ。ちなみに漢字で書くと「関東炊き」で関東から伝わった料理、との説があるが、「広東(かんとん)炊き」であり中国伝来を主張する派もいる。ともあれこの店で「年がら年中」供されているような、関西に根付き親しまれている料理なのは、間違いないのではなかろうか。

町歩きの後だからか昼酒がまわったからか、5品のかんとだきをさっと平らげたら、沢の鶴の冷酒を追加して、地ダコのつくりに明太ポテサラと止まらない。続くは泉州のローカル地魚・ガッチョ(ネズミゴチ)の唐揚げに、泉州水ナスのお浸しも控えている。だんじり祭りゆかりのアテに、杯を傾け続ける一夜。ふと窓越しのアーケード通りに目をやれば、だんじり会館で見た火入れ巡行の灯りが、酔うほどに揺れて見えてきたような気がした。

ローカル祭りのハレごはん…岸和田・だんじり祭り/『こふじ食堂』の、くるみもち

2018年06月30日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
沿道の民家が壊される。転落した怪我人が出る。大阪・岸和田の「だんじり祭」に関連して、耳にしがちなニュースである。細い道を木造の地車「だんじり」が激走するといった、荒くれた危険な祭りのイメージがついてまわるが、それだけ地元の人たちの熱が入った祭とも捉えられる。そこでだんじりの巡行ルートをたどる、岸和田さんぽへ出かけてみることに。巡行のルートや祭事の要衝といったゆかりの地を訪ねれば、町の印象とともに祭の知られざる表情も、垣間見られるかも知れない。

まずは祭の基本を抑えるべく、蛸地蔵駅が最寄りの「だんじり会館」へとやってきた。ちょうど祭りの映像の上演時間で、市街を高速で曳行されるだんじりの様子が写される中、注目はやはり旋回させるシーンだ。「やりまわし」と呼ばれるこの技、屋根にのった「大工方」が方向を指示し、直前直後を引く「前梃子」「後梃子」が梃子を押し引きして旋回させている。と書いてしまえば簡単そうだが、前梃子はブレーキでピンポイントで減速させたり、後梃子は数本の綱をタイミング合わせて引いたりしないとならない。曳く者全員の息が合わないと、きれいに旋回させることはできないのだ。

映像でやり回しを見たら、実際に巡行現場を見てみたくなり、だんじり会館の見学後は巡行ルートである紀州街道をたどってみた。かつて大阪高麗橋から和歌山まで湾岸の町々を結んでいた幹線街道で、城下町を行くためところどころが見通しを遮るよう、不規則に折り曲げられている。これらS字カーブにクランクではやり回しが行われるため、狭い難所ゆえの人気の観覧スポットなのだ。その場に立ってみると道幅が狭く折れ曲がりもきつく、これはまわりにかすってもぶつかっても不思議はない。しかしながら先ほどの映像では、街道に沿って滑るようにだんじりが流れており、まさに曳行衆の技の賜物だろう。

やり回しポイントの周りには店舗や民家も普通に並んでおり、祭の際には突っ込まれるかも知れずヒヤヒヤなのか、逆に慣れっこなのだろうか。並びの中には甘味の店もあり、散策の半ばでもあるのでひと休み、とこの「こふじ食堂」の扉をくぐってみた。品書きになかったが、ローカル和スイーツの「くるみ餅」も扱っているとのこと。地元では、親戚一同が集まってだんじり祭りを観覧する際に供される菓子だから、祭りをたどるさんぽのブレイクにはピッタリである。

出された小鉢にはクルミを使った餡が入った餅…ではなく、茶色の餡に小ぶりの白玉が浮かんでいる。餅を小豆や枝豆の餡でくるんだことが名の由来で、あんころや仙台のずんだ餅に近い菓子である。この店の餡も枝豆餡で、小豆餡と比べて甘さは穏やかなのに、まったりと濃厚なこと。小ぶりな白玉のツルンと軽やかな舌ざわりに、サラリとした餡と枝豆のツブツブした対比が心地よい。甘味屋らしく頭のてっぺんまで痺れる激甘さが、猛暑の散策のあとに嬉しく、まさに体ごとくるみ取られてしまったかのようだ。

窓のすぐ外は紀州街道で、近くでだんじりがきれいに旋回走行をする様を思い浮かべつついただけば、祭の印象もひとしおか。にしてもこのやり回し、直角旋回もS字走行も滑り流れるように駆けていく様は、優美ですらある。荒くれ者が屋根で跳ね、力技で方向を変えてだんじりをブン回す、といった荒々しい祭りのイメージがちょっと変わったのは、ハレスイーツの優しい甘さの影響かも知れない。

こふじ食堂のくるみ餅@岸和田

2018年06月30日 | 旅で出会った食メモ
9月の祭の際は市街各所に屋台が並び、家庭でももてなしの料理が供される。そんな祭ゆかりの「ローカルハレごはん」探訪、まずは和スイーツの「くるみ餅」。親戚一同が集まって、だんじり祭りを観覧する際に供される菓子で、クルミを使った餡が入った餅…ではなく、餅を餡でくるんだことが名の由来だ。餡の材料は大豆や枝豆で、あんころや仙台のずんだ餅に近い。

紀州街道のクランクそばにある甘味処「こふじ食堂」のくるみ餅は、白玉を茶色い枝豆餡でくるんである。小豆餡と比べて甘さは穏やかなのに、まったりと濃厚なこと。小ぶりな白玉のツルンと軽やかな舌ざわりに、サラリとした餡と枝豆のツブツブした対比が心地よい。甘味屋らしく頭のてっぺんまで痺れる激甘さが、猛暑の散策のあとに嬉しく、体ごとくるみ取られてしまったかのようだ。

窓のすぐ外は紀州街道で、高速疾走していくだんじりを思い浮かべつついただけば、祭のハレスイーツらしさもひとしおか。