ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん11…ラーメンガイドの仕事で発掘した店・満州軒は最近コンセプトが変貌

2005年10月27日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 いまから10年ほど前に、東京と神奈川のラーメン屋のガイドブック編集に関わったことがある。当時はまだラーメンブームが巻き起こる前でラーメンに絞ったグルメガイドは少なく、あっても丼を原寸で掲載するのが売りの、大判のビジュアルムック程度。実用性を重視したラーメン屋のカタログ本が他になかったおかげで、東京、神奈川ともに数百軒ものラーメン屋を1冊にまとめたこの本はそれなりに注目され、売れ行きもまずまずだった。

 当時はラーメン本が少ない上、今のようにインターネットも普及していないから、掲載するいい店の情報収集には四苦八苦したことを覚えている。中でも神奈川で評判のラーメン屋の情報は特に乏しく、知り合いのおすすめや、自分が知っている店もずいぶん加えたものだ。だからこの本、実は自分の家の近所のラーメン屋が結構載っている(笑)。最寄りの京急杉田駅の駅ビルにある「満州軒」もその1軒で、最近リニューアルしたというので訪れてみた。かつては「赤ひげ」という店名で、激辛の「ドラゴンラーメン」が主力だったが、券売機の案内によると「あっさり」「こってり」「激辛」など4つのカテゴリーがあるよう。辛味一辺倒から、様々な味や香りの構築を楽しむスタイルに変貌したようである。

 かつては5段階の辛さから選べるドラゴンラーメンのファンだったが、新カテゴリーからぜひ激辛以外を試してみたい。おすすめなのか、店の人のTシャツには「さかな節醤油ラーメン」と大きく書かれているのが気になる。壁に貼られた説明によると、ウルメ、カツオ、サバ、焼いりこなどでとった一番ダシをあわせたスープとあり、これはあっさり系のようだ。ひかれるが結構空腹なので、こってり系の「こがしネギ醤油味玉」を頼むことにする。運ばれてきた丼を見る分には澄んだスープがあっさりした印象で、スープの一角には真っ黒な物体が浮かんでいる。「かきまぜないで、麺をここにくぐらして食べてください」と説明する店の人によると、これが味の秘訣のこがしネギ油とのこと。

 まずは麺をそのまますすってみると、とんこつ独特のくせと甘みがどっしりした味わい。次に例の油をくぐらしてから口に運ぶと、こってりした中にスープの甘みがより強調され、くせは逆に抑えられているよう。麺にこげたネギの粒粒がからみ、燻したようなキリッとした香りが実に後をひく。食べ応えある太麺をモグモグと食べ終わった頃には、スープ全体に黒い油が広がってしまった。お腹と相談して、思い切ってご飯を追加。スープにぶち込んで味玉を割って、ごはんとスープと半熟卵を一緒に食べるとこれがもうたまらない。

 この店、最近はラーメンファンに知られるようになり、店頭には情報誌の掲載記事の拡大コピーがいくつか掲げられていた。でもおそらく、最初にとりあげたのは自分が関わったラーメンガイドだと思う。この店以外でも、後にほかのラーメンガイドにも載ったり、中には雑誌やテレビの特集にとりあげられた店も。自分が最初に発見した店が後に評判になるというのは、ちょっと誇らしい気もする。(2005年10月1日食記)

※明日から週末にかけて5日ほど出かける関係で、今週は週末の投稿はお休みします。次回は来週火曜に投稿予定。出かけた先でどんなローカルごはん、魚どころの特上ごはんに出会うか乞うご期待!


極楽!築地で朝ごはん12食目・コーヒースタンドシープ…休市日の築地は、お魚よりも洋食がオイシイ

2005年10月26日 | 極楽!築地で朝ごはん
 今日は久々に、日曜祝日ほか平日に月2回ある休市日にぶつかってしまった。はじめて築地を訪れた日もたまたま休市日で、9時頃に訪れたら築地は何て空いているんだろう、と勘違いしたものだった。場外市場は普段の賑わいがうそのように閑散としていて、開いている商店や飲食店もまばら。間が悪くこの日に訪れてしまった観光客は、最近場外でよく見かけるようになったチェーン系の寿司屋に収まっている様子である。こういった店は市場の動向に関係なく営業、中には24時間年中無休なんて店まであるが、市場が休みなのに一体どこからネタを仕入れ、どんなものを客に出しているのだろうか。

 市場が閉まっている日にわざわざ魚料理を食べることもなく、こうした賑わう店を素通りしてこの日も新大橋通りへ。喫茶と軽食の「コーヒースタンドシープ」で、洋食で朝ごはんとした。ほとんどの店が休みのこの通りに観光客の姿はなく、この店も市場関係者がやってきてはスパゲティなどをテイクアウトしている程度。そんな客がいないカウンターに腰掛け、メニューをひと通り眺めてオムハヤシを頼むことにする。この店の人気メニューで、日本橋などの名店で本格的に修行したという御主人自慢のハヤシルーが、市場で働く人たちに好評を博しているという。

 市場のオムライスとは果たしてどんなものだろうか、と期待しながら待っていると、ハヤシルーの真ん中にふんわりと卵に包まれたオムライスがのった皿が出された。ハヤシルーはかなりゆるく、具のタマネギと肉がほとんど溶けてしまっている。その中には卵を2つ使った大きめのオムライス。まるでスープの中にポッカリ浮かんでいるようだ。オムライスを崩してたっぷりのルーに混ぜて頂くと、半熟卵がトロリ、ルーがもったり甘くなかなかいける。卵の中は白飯で、数十種類の香辛料を使ったルーがよく合い、甘い中に後からピリッとした辛さが刺激的。付け合わせの福神漬けとピクルスの酸味が、口直しにありがたい。

 後からやってきた同席の外国人客も同じものを注文、店の人にスプーンを勧められたが、箸で上手に食べている。箸の使い方がうまいことはもちろん、築地にやってきて寿司でなくあえて洋食を選ぶとは、この人たち実はかなりの日本通、そして築地通?(2004年6月9日食記)

町で見つけたオモシロごはん10…上村家御用達のイタリアン&炭火焼 カウベルでハッピーバースデー

2005年10月25日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 家族で食事に行く際、焼肉屋ならあの店、寿司屋ならこの店など、ジャンルによって決まった御用達の店がある方も多いのでは。先日投稿した焼肉の「東天閣」ほか、わが家でもそんな店がいくつかあり、10月は家内と娘の誕生日があるおかげで、こうした店からバースデーサービスつきの案内状がいくつか届いた。そこでふたりの誕生日それぞれの特典が使える日を選んで、手作り窯焼きのピザやパスタ、備長炭を使った炭火焼のステーキの店「カウベル」でみんなで食事をすることになった。

 店はJR根岸線港南台駅からクルマで10分ほど、環状4号線沿いにある。イタリアンと炭火焼がメインのためボリュームがあり家族連れにはもってこいだが、油断して頼みすぎつい食べ過ぎてしまうことも。いつもはピザかパスタを数皿に、1品料理を組み合わせるところを、メニューにある季節限定「秋のとり分けセット2人前」にひかれる。おとなふたりはそれにして、子供たちはおのおの好きなピザを注文、バースデーサービスのウェルカムドリンクで乾杯したら、ささやかなお祝いの始まりである。

 最初に運ばれてきたのはサラダ。しかも野菜の皿と別に、ワゴンにのって直径数十センチはありそうな巨大なチーズが登場した。係のお兄さんがへらのようなものでチーズの表面をしごくと、するすると薄く削れていく。それをたっぷり野菜にのせたのが、店自慢のシーザーズサラダだ。こだわりの新鮮野菜に、濃厚でこくがあるグラナパダーノチーズがよく合い、サラダといってもなかなかどっしりした味わいの一品。どうやら人気メニューらしく、食事の間じゅうチーズのワゴンがフロアを行ったり来たりしている。

 サラダのあとはピザとパスタがひとつずつ続く。それぞれ3種類のなかから選べ、ピザは北海道白樺鶏とコーンのチリマヨネーズ、パスタはカボチャとブロッコリーのクリームソースを選んだ。ここのピザは生地が厚手でしっかりしていて、窯焼きのため外はパリッ、中はしっとりと食べごたえがある。その上半熟卵がのったビスマルク、キノコとツナの木こり風の子供たちのピザもつまんだので、このあたりでお腹がいっぱいになってきた。パスタは細麺でさらりと甘いカボチャクリームのおかげで、するすると入っていく。

 そして熱々の鉄板でジュウジュウ音を上げながら、角切りステーキが運ばれてきた。サーロインの切り落としを使っていて脂身が少なく、さっぱりしたオニオンソースのおかげで、満腹で覚悟していた割にはもたれず結構いける。備長炭焼料理も店の看板だけに、サーロインやヒレ、モモにハンバーグと充実。使っている肉は宮崎県有田牧場の霧島牛などで、店の貼り紙によると「神奈川県で一番安心、安全、美味しいステーキが食べられる店を目指します」とある。飼料はトウモロコシなどをメインに抗生物質や薬は使わず、ほか水や飼育方法にもこだわって安全、健康に育てられているという。こうしたトレーサビリティ(生まれや育ち。誰がどんな飼料、どのような環境で育てたか)が明示された店は、大変心強い。牛肉はBSEへの対応策がいく分不透明なまま、アメリカ・カナダ産牛肉が年内にも輸入再開される見通しとなっただけに、家族で食事をする際はなおのこと、味以上に食の安全性が重要なのである。

 …とちょっと難しい話になってしまったが、ふたり分で150グラムのステーキを平らげたらすっかり満腹(このステーキ、何とライスがついていて、ピザとパスタをあれだけ食べた後はさすがに食べられず)。何とか食べきれてひと安心、と運ばれてきたデザートを見てびっくり! 何と、デザートもピザだ。イチゴやオレンジ、ブルーベリーなどのフルーツとアイスクリームがのったこのデザートピザも、バースデーサービスのひとつである。食べてみると生地は薄めでクレープのような食感、甘いものは何とやらというように、満腹にもかかわらず2,3切れ軽く頂いてしまった。主賓のふたりも満足そうで、次回に案内状が届くのは私の誕生日か、はたまた結婚記念日か、ともかくお楽しみである。(2005年10月23日食記)

魚どころの特上ごはん8…大きくつくるコツは? 中央水産研究所でちくわづくりにチャレンジ

2005年10月24日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
 横浜市金沢区にある、水産総合研究センターの中央水産研究所が一般公開するとのことで、自宅から程近いこともあり訪れてみた。JR新杉田駅から、東京湾に面した埋め立て地を走る新交通システム・金沢シーサイドラインに乗って市大医学部駅で下車。施設は横浜市大病院の向かいにあり、周囲は倉庫や事業所が立ち並ぶ殺風景なところである。いかにも研究施設といった外観の建物を入ると、意外にも子供達や家族連れでけっこう賑わっている様子だ。研究所の一般公開といっても堅苦しい展示ではなく、ヒトデやカニとふれあえるタッチプール、どじょうのつかみどり体験、記念品がもらえる投網体験など、何だか縁日の出し物みたいな楽しいコーナーがあちこちにある。

 中でも申し込みが殺到、大好評を博しているのが、水産加工品の製造体験である。人造イクラとカニカマはすでに定員で締め切られていて、残っていたちくわ製造を申し込んでみた。これも順番待ちで、クイズ大会に参加したり、お魚ペーパークラフトをもらったりして時間を潰すこと1時間。配られたエプロンをつけると、係のおばちゃんにまな板の前へ案内された。おばちゃんに教わりながら、ちくわづくりのはじまりである。

 この日の材料は、タイ産シログチとアラスカ産スケトウダラの冷凍すり身で、東京湾でとれた地元柴漁港であがったタチウオなども材料になるとのこと。これに片栗粉、卵白、砂糖、食塩、みりんなどを加えて、ミキサーで撹拌して粘りを出す。まな板の上にはすでにこの状態のすり身がのっていて、製作体験はここからである。まずは細長い形をした「つけ包丁」という包丁ですり身をこね、たたく。空気をしっかり抜くのがポイントで、ベタベタ叩いてはベチャンと叩きつけ、とくり返してみる。空気が抜けたところで、厚さ5ミリ、大きさ15センチ四方の形にのばすのだが、結構粘りがあって包丁にまとわりつくため、途中でちぎれたりいびつな形になったりと、なかなかうまくいかない。見かねたおばちゃんがサッと広げて、包丁で四辺をトントンと切って整形、見事なものである。

 ここからいよいよちくわづくりのハイライト、すり身に棒をあてて巻取っていく作業にかかる。芯にするには昔は竹だったろうが、ここでは金属のパイプを芯にして、包丁をそえて巻取るようにしていく。おっかなびっくりやっていると、「包丁は30度ぐらいにあてて、小刻みに動かすといいよ」とおばちゃん。試すと確かにくるくるとうまい具合に巻かれていくではないか。水で表面をならしてきれいにしたらやっと完成! 焼き手の人に渡して、10分程でこんがり焼き上がりである。

 焼きたて、熱々のを一本頬張ると、混ぜ物が少ないから弾力がバツグン、白身がしっかりした味わいでなかなかうまい。もう少し塩味が濃い方がうまそうだが、かえって素材の味を引き出しているようだ。他の人のに比べてちょっと小柄なのは、すり身を四角に整える時におばちゃんが多めに切ったからだろうか。家庭でも、白身魚を3枚におろして骨、皮、脂の部分をとって水にさらし、フードプロセッサーで撹拌すればすり身は簡単にできるそうで、焼くのも家庭のガスレンジでできるという。家で作ってみる機会があったら、今度は整形に注意して? もっと大きくできあがるようにチャレンジしてみよう。(2005年10月23日食記)
 

極楽!築地で朝ごはん11食目・瀬川…薄めの赤身に染みるタレ・元祖ヅケ丼はそのまま食うべし

2005年10月22日 | 極楽!築地で朝ごはん
 築地での朝ごはんも、この日でついに10食を超えることになった。そこで今まで食べたものを振り返ってみたところ、ラーメン、カレーに牛丼、モツ煮丼…。何と、魚料理はわずか3食だけ! 別に敬遠していた訳ではないけれど、足がつい新大橋通り商店街に向きがちで、このあたりに多い市場で働く人御用達の店に少々片寄っていたよう。魚河岸のお膝元に毎朝通っているのだから、このあたりで海鮮丼や寿司、定食など、築地らしく魚で朝ごはんの店をもっと開拓してみることにしよう。

 …と宣言しつつ訪れたのは、結局新大橋通りの店。この通りの店でまだ行っていないところが残り少なくなってきたため、制覇してしまいたい気持ちもあるからか? 看板メニュー1品で勝負する店が多い中、「瀬川」もマグロのヅケ丼ひと筋である。ヅケとは醤油などでつくったタレに漬け込んだ、マグロの赤身のこと。創業は大正15年と古いこの店は、築地でヅケを使ったマグロ丼の元祖といわれている。壁の品書きはわざわざヅケ丼とは書かず、「まぐろどんぶり」との表記。頼むとさっと出された丼には、軽めに盛ったごはんの上に、赤黒い光沢を放つ7切れのヅケがきれいに並んでいる。

 食べる前にマグロにつける醤油を探すと、「味がついているから、そのまんま食べられるよ」と店の人が教えてくれた。言われた通りにひと切れをそのまま、ご飯とたっぷりのった海苔と一緒にひと口。刺身はかなり薄切りで、本マグロを使っているためさっぱりとした甘味がなかなかいい。これまた甘めの醤油をベースにしたタレが、マグロの旨みをいっそう引き立てているようだ。刺身は醤油に漬け過ぎると固くなるので、さっとくぐらせる程度だが、身が薄めな分柔らかく味がよく染みている。酢飯との相性もバツグンで、丼のネタには大きめに切りつけた刺身より、このように薄いほうがご飯に合うし食べやすい気がする。

 あと驚いたのは、ツマや薬味である大葉やショウガ、海苔、ワサビが際だってうまいこと。これは今後紹介する店の海鮮丼や刺身定食などでもそうで、市場に近い由に妻物や海苔などの専門店はたくさんあるからだろう。刺身を食べてご飯だけが少し残ってしまったが、これらツマに醤油を垂らしてをおかずにするのもまた、さっぱりとしてうまい。食後のお茶も同様、専門店から買っているからか非常に旨い。つい「お茶がおいしいですね」ご主人に言うとちょっと苦笑している様子。もちろんヅケ丼はいわずもがな、です。(2004年6月8日食記)