ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカルベジタでヘルシーごはん…竹原 『農家レストラン西野』の、竹原たけめし

2016年03月25日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
瀬戸内食材探訪は、尾道から竹原へ。「マッサン」の舞台として知名度が近年上がった、安芸の小京都である。名の所以は竹林が多いことにあり、ご当地野菜として名高いのがタケノコ。3つの料理を売りに出しており、「農家レストラン西野」にてそれぞれを味わった。

「竹原たけめし」は、広島のおいしいもの選手権「OC-1」で入賞したご当地料理で、タケノコを用いた押し寿しとちらし寿司がメインの膳。さっくり軽やかなタケノコは青い香りが清々しく、春の息吹が溢れかえっている。おかずも竹原ご当地の品をつけるのが決まりで、タコは三原に隣接の忠海が水揚げだけに、シコシコと甘い。吉和町の名産・ジャガイモは、ポテトサラダに。ねっとり濃厚なのは、赤土質の土壌ゆえの身の詰まり方だとか。タケノコのかき揚げも、サクサクと軽い。

同行の方は、上記のジャガイモとタコを用いた「竹原いもたこカレー」を試食。さらに店の西野さんが、「竹原バーガー」をかなり推してくれ、追加でわざわざ作っていただいた。米粉のバンズに、タケノコの照り焼きに、吉和町のジャガイモと地元銘柄牛の峠下牛のコロッケが挟んである。昨年鳥取で開催された、ご当地バーガー選手権に出展したものの、入賞を逃して4位だったのが相当残念だった様子。テイクアウトしたので、しっかり味わって評価しなければ。

和膳に洋食にテイクアウトと、三種揃った竹原タケノコグルメ。地産品のPRに、頑張ってもらいたいものだ。

ローカルベジタでヘルシーごはん…高崎 『高崎そだち』生産者探訪4

2015年12月07日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、後半は国府地区にある国府野菜本舗にお邪魔した。店内に並ぶ地場産野菜の中でも、視察のお目当ては長〜いにんじん。1メートル近くあるそのフォルムこそ本来のにんじんの姿、というと、驚く方も多いのではなかろうか。

国分にんじんは正式な名を「国分鮮紅大長人参」といい、大正期にフランスから入ってきた種を改良し、当地に根付いた種である。界隈は榛名山の噴火による火山灰性の土質で、柔らかく肥沃なため野菜の栽培に適していた。このにんじんも昭和30〜40年代には国府地区を代表する農作物で、種が前橋の種苗会社から全国に販売され広まったことから、日本の長にんじんのルーツともされている。

当時はにんじんといえばこの長い種が中心で、市場流通の半分以上をしめていたこともあった。しかし生活様式の変化で、その長さが仇となる。長すぎて冷蔵庫に収まらない、少子核家族化で量が多すぎるなど、需要は短根種へとシフトし生産量が激減。市場でも、その姿を見ることがなくなってしまったのである。

現在は地元の農家一軒で細々と生産するだけとなったが、近年になりこの伝統野菜を伝承させるべく、農業組合法人国府野菜本舗が中心となり動き出す。就農者ほか援農の協力者もあり、栽培の継承と拡散が進んでいる。量的に現状はこの直売所とイオン高崎のみの扱いだが、需要の伸びに合わせ生産者も増えてきているので、今後の動向に期待がかかる。

栽培はその長さゆえ、手間と労力がかかるのが致し方ないところ。生育に時間を要するため、種を蒔くのは7月の20日前後と、普通のにんじんより早い。梅雨明け頃は天候が不安定なため発芽が難しいのに加え、芽が出ても土づくりがおろそかだと、まっすぐ伸びてくれない。冬場の収穫も、長さ相応に根がしっかりつくから、抜くことができず掘りかえさなければならず、なかなかひと苦労といえる。

一方で食味の方は、身が固く締まっているので煮崩れづらく、煮物など加熱調理にはもってこい。松前漬けに使うと味と発色が良く、キムチにも向いているそうである。甘みも糖度10度と高く、加熱するとさらに2度ほど上がるので、子どもに好まれるのだとか。店舗の一角ではジェラートを扱っていて、国分にんじんほか名産の焼きまんじゅうミルクに桑茶の、群馬名産トリプルを味見。果物的な甘さにほんのり土の香りがよぎり、まさに上州の大地を味わうごとくの力強さである。

国分にんじんの復興は、農業というよりは地域おこしです、と話す代表の方。ともあれ、貴重な地場の食材と食文化を守り伝えるその姿勢は、賞賛に値する。かつては周辺はにんじんの開花期に、霧で霞むようだったそうで、いつの日かその眺めが再び拝めるよう、見守っていきたいものだ。

ローカルベジタでヘルシーごはん…高崎 『高崎そだち』生産者探訪3

2015年12月07日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、続いては榛名地区のゆあさ農園にお邪魔した。榛名梅林は東日本屈指の梅の産地として知られ、この農園では有機栽培した梅、自然塩、天然水を使った、無添加の梅干しを生産している。

使う梅の品種は「白加賀」「梅郷」「紅養老」「織姫」「甲州」。梅の有機栽培をしているのは高崎ではここだけで、加工も一緒に有機認証をとっているところは、全国でも少ないという。使用する自然塩は、伊豆大島の「海の精」、石垣島の「石垣の塩」といった国内産のみならず、フランスのゲランドやヒマラヤ岩塩やウユニ塩湖の塩など、海外の名だたる塩まで幅広い。

パッケージにはそれぞれ、塩の銘柄が書かれたシールが貼られ、5種の梅と15種の塩の組み合わせで、各々異なる味わいに仕上がっている。食べ比べると塩分のとんがりや丸み、梅の甘さや濃さといった、食味の差が分かるような。ご主人いわく、材料は梅と塩のみの混じりけなしなので、梅の熟度と塩加減のみの勝負。文字通り、「塩梅」で決まるのだそう。酸味が強く塩分も高めだけれど、精製塩ではない本来の味なのだとも。

ここの製造工程は、通常の品だと6月に漬けて、11月に新ものが出回り始める。最近は「熟成梅」のニーズもあり、平成20〜22年に仕込んだ5年もの、さらに20年ものの梅干しなんてのも。「高崎・榛名の梅」とのラベルが巻かれた木箱に、恭しく5粒並んでおり、100g2000円のプレミア。高いから、売れ残ったら10年後に30年ものとして出すかな、と笑ってらっしゃるが、しっかり漬かりやや黒っぽい見た目は、なかなかの貫禄ものだ。

こうした多彩な商品展開の背景の一つに、東日本大震災での原発事故の影響もある。梅に関しては風評のレベルだったにもかかわらず、売り上げは半減。顧客もそれ以前と比べたら、かなり入れ替わってしまったという。しかしながら取組は一定の成果を得て、最近は毎年定期的に塩の銘柄指定で買ってくれるお客もいるとか。「梅干しは強い有名銘柄がある中で、うちは名前よりも安全と信用で売っていきたい」と話すご主人。なのでスーパーなどの大手流通には乗せず、直売を中心にお互い顔が見える流通を意識されている。

ちなみにご主人、家業を継いで就農される前は電機メーカーのエンジニアで、エコロジーへの意識も高い。農園の建屋にはソーラーパネルが設けられ、剪定した梅の枝を燃料にした「バイオモス(=梅を燃す)」と称するボイラーで給湯と暖房を賄う。強烈に酸っぱくしょっぱい、ここの梅干しの個性の強さは、自然と大地の恵みとご主人のこだわりが、がっちり込められているからかも知れない。

ローカルベジタでヘルシーごはん…高崎 『高崎そだち』生産者探訪2

2015年12月07日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、若手の就農者の話にも出てきた「くらぶち草の会」の主催者の方に、続いて話をうかがった。農薬や化学肥料に頼らない、無農薬有機栽培に取り組んでいる生産者団体で、新規就農者を積極的に受け入れ取引先も確保し、事業としての農業がこの土地で展開できる支えとなっている。

この組織が立ち上がったのは、2005年のこと。就農家の高齢化が進み後継もなく、地域農業存亡の危機が目に見えてきたことが、大きな理由である。以来、会の新規就農者は21世帯で、年に1〜2組のペースで増えている。もっともこれだと離農する数に追いつかず、既存の農家の耕作規模に比べると新規就農者のそれは小さいため、なかなか生産量が上がらない苦労もある。

そんな中での会の強みは、契約栽培で販路が確保されていること。基準さえクリアできていれば一定の価格で買い取ってくれ、生産物の6割は決まった売り先を斡旋される。農協依存の流通だと、トップレベルの技術による規格対応が要求されるところ、新規就農者にはありがたい仕組みである。そのため売上基準は農業委員会制定の数字をクリアしており、年収で家族が充分暮らせるのも、安心して当地に就農できる基盤だろう。

倉渕地区は中山間地域のため、傾斜を切り開いた小規模の畑が多い。一般的に新規就農者の耕作規模は、5年で1ヘクタールに及ぶのがやっとだそうで、初めはこの大きさがかえって適してるとも。新規就農者は農業技術が未熟な反面、大卒や社会人経験者が多く、流通や経営をはじめ異業種の知識があるのも、当地にとってのメリットになっているという。会の方いわく、農業経験者や後継者は辛さや厳しさを知ってしまっているので、未経験者のほうが先入観がなくかえって良いとも。

ひと通りお話を伺った後に、所有の畑を見せていただいた。ターツァイ、水菜、白菜が主な産物で、ターツァイは9月に植えて、いまが収穫期だそう。深い緑の瑞々しい葉物が、冠雪を抱く浅間山の麓に萌える様は、当地の農業の未来を表しているかのように眺められた。

ローカルベジタでヘルシーごはん…高崎 『高崎そだち』生産者探訪1

2015年12月07日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん

高崎ブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、最初の訪問先は倉渕地区へ。合併で編入された旧倉渕村で、長野県に接する県境に位置する。ちなみに高崎市、南は埼玉県境にも接しており、合併による市域の拡大が伺える。

倉渕地区は「オーガニック」、すなわち有機農業が根付いた地域である。各地から農業家の方や就農希望者が学びに来ることも多く、中にはそのまま就農する若い農家も多いそうである。この日お会いした方は、そもそも食の安全への意識が高く、奥さんの希望もあり6年前にこの地に就農したとのことだった。

倉渕地区には「くらぶち草の会」という、無農薬・有機の先駆け的な組織が根付いており、新規就農者を積極的な受け入れる環境があった。この方によると、草の会で研修を終えると即、就農でき、らでぃっしゅぼーやや東都生協、大地を守る会などとの取引があるためすぐに出荷ができるなど、恵まれた環境にあるとという。他所からの就農は何かとハードルが高い中、すぐに事業が展開できるというのは、なかなか優れている。

ご自宅でお話を伺った後は、クルマで5分ほどの所有の畑を見せていただいた。中山間の土地柄、小規模の畑を数箇所に渡り提供されており、案内いただいたところも程々の広さの印象。経営作物としては小松菜や白菜をメインにやっており、小松菜は5〜6月に植えて10〜11月に収穫のサイクルで栽培しているそうである。ほかニンジンやホウレンソウ、カブ、キャベツあたりが、主力の経営作物なのだとか。

その隣の畑では、直売用の西洋野菜が栽培されていた。流行りのロマネスコをはじめ、プチベール、ケール、ルッコラ、さらに黒キャベツ、冬キャベツなど。いずれも冬場に旨味が増すそうで、特にキャベツは霜のおかげで甘みが出るという。この大きな寒暖差は、600〜850メートルと標高が高い土地柄ならではのメリットかも知れない。

ご主人によると、標高が高いことはほか、虫が少ないことにも繋がり、無農薬をやりやすい環境なのだという。一方で畑が小さいため、大規模化が難しいというデメリットもある。家族経営が適正規模の広さは、新規就農者の身の丈ではあるのだが、事業拡大を目指すには足かせになるのが、痛し痒しでもあるようだ。

販路が確保されているのも、安定収入が保証される一方で、様々な制約もある。各流通先からのオーダーが草の会に集約され、個々の生産者に年間の生産ノルマが割り当てられるのだが、そのリクエストへの対応がなかなかピタリとはいかないらしい。見せていただいた畑の小松菜は、今年は暖かかったため大きくなりすぎ、規格外になってしまったとか。そんな想定外もあるため、常にオーダーより多めの生産量を確保する必要があるという。「自然が相手なので、経験が浅いとなかなか気候の変化を読みきれません。つくづく、古い営農者の勘の凄さを実感します」とは、若い就農者の本音だろう。

商品価値のある作物を展開したいです、とのご主人のところでは、食用ほおづきを推しているそう。新規参入の就農者から、利益を生む農業経営者へ。倉渕地区の有機農業は、日本の若い農業家にとって求める未来予想図が描ける環境なことを、彼らの言葉の端々から感じ取れた思いがする。