ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

妙蓮寺〜白楽 書店めぐりてくてくさんぽ1

2021年05月05日 | てくてくさんぽ・取材紀行
先日のclubhouse「今週の新着本」で、南陀楼さんが東横線の妙蓮寺から白楽界隈の古書店をとりあげていた。紹介店のほかにもあたりは書店が多いので、たどりながら界隈を歩いてみた。横浜から3〜4つ目の、各停しか停まらない小さな街だが、妙蓮寺は洒落たカフェやベーカリーが目立つ東横線沿線的な瀟洒な雰囲気、白楽は六角橋商店街の最寄りの庶民派な活気があり、対照的な街を結んで書店を転々と歩いた。

最初は妙蓮寺駅前からの通りにある「生活綴方」を目指したら、あいにくの定休日。懐かしい小学館の学習雑誌の看板の写真だけ撮っておき、向かいの石堂書店へ足を向けた。こちらは新刊書店だが、昔ながらの街の本屋の佇まいで、横浜や地元の港北区の関連本が充実している。広報誌「横濱」はバックナンバーもあり、元町特集号の歴史は長年当地に住む第一人者の杉島和三郎さんの寄稿だったので、1冊目はこれを購入。古地図関連や神奈川新聞系列のかもめ文庫も揃い、横浜関連の調べ物で重宝しそうだ。

白楽駅に向けて歩く途中、駅の手前で「Tweed Books」という古書店を発見。古い商店を改装したシックな雰囲気で、ファッションやデザイン系が中心とあるからか、他のジャンルも装丁にインパクトがある品が多いようだ。ここでなんと、長年探していたレアな掘り出し物を見つけて驚愕感涙!白楽駅付近では目当てのミヤコヤ書店も定休で、手前の鉄塔書店に寄って締めにした。パラフィンで包まれた古書が棚にびっしり並んだ、昔ながらのスタイルで、食や旅関係の本が入口まわりに多い。昭和末〜平成の、見覚えあるタイトルや著者名が懐かしい。

妙蓮寺から白楽までは旧綱島街道を歩き、あたりは散策向きの見どころも多い。妙蓮寺の石堂書店から、池端商店街の短いアーケードを抜けた先には、柱の木彫が細かな菊名池弁財天が構える。もと農業用水だった菊名池は、市街地にありながらひっそりした一角だ。旧綱島街道の沿道は野菜の露店、鄙びた街中華に定食屋、よろづや的食料品店や荒物屋的日用品店、床屋的理髪店などが点在、鎌倉期からの街道筋らしい雰囲気がある。白楽駅の手前の白幡池は足洗川の水源で、薄紅色のハスの花がちょうど見頃だった。

ランチは散策前に、妙蓮寺の池端商店街にあるインド料理「ドワリカズ」で。オレンジ系の照明の店内にネパールの旗やチョモランマの壁画、インド系の音楽がガンガンかかり、トリップしそうな空間だ。ランチ790円はナンが食べ放題で、チキンカレーはナンの追加分にも余裕な量とお得なメニューだ。歩き終えた東白楽駅前のカフェ「FONTANA」にて、購入品を読みながら締めに。ワインにピザ、チーズなどイタリアンな品々も揃い、読書の後もじっくり腰が座ってしまいそうな? 空間である。

銚子てくてくさんぽ8

2021年04月10日 | てくてくさんぽ・取材紀行
外川から銚子への帰りは銚子電鉄を利用した。ニュースでは経営危機がとりあげられ、それでいてユニークな回避商法も耳にするが、この日は結構な盛況で経営危機などどこ吹く風に見えた。犬吠埼とか外川とかの観光地の足でもあり、またマニア注目の鉄道でもあるので、経営環境的には恵まれているようにも見える。電車の車両は昔に京王線を走っていたやつのようで、かつての通学利用を思い出させる。

立地にしては車窓に海はほぼ見えず、キャベツ畑の中を行く田園列車という感じ。笠上黒生を過ぎると林の中へと入り、やや高台へと登ったところで一瞬、木々の間から利根川の河口らへんが見える程度である。仲ノ町駅では今では珍しい、タブレットの交換風景も見られた。車内は話題の女性車掌が行き来していて、駅に着く都度切符を売り回っているのは大変そうだ。今では珍しい硬券で、車内検札(といってもチラ見だけ)の後は持ち帰れるのも嬉しいサービスだ。

この鉄道、駅も注目で、外川駅はレトロな木造駅舎だったが、ほかは妙に欧風の駅舎が目立ち、犬吠駅はポルトガル、君ヶ浜駅は凱旋門、観音駅はスイス調で銚子駅はオランダの風車が。昔の駅らしい海鹿島とか笠上黒生とかが、かえってローカルさを感じられる。駅名がほぼネーミングライツ化され、高値をつけられるからか主の名称を売っているのがすごい。なので駅名標にはその企業のキャッチフレーズがでかでかと書かれ、「足腰元気健康法駅」とか訳がわからない。まあ地元の人は使い慣れているし、観光客は使う駅は決まっているしで、問題はないのかも知れないが。

また縁起路線での駅名いじりもやっていて、本銚子は「本調子」にかけて銚子からのきっぷを合格祈願に。笠上黒生駅は「髪毛黒生」と表記、毛髪縁起の駅名にしており、車内でも該当の体裁の方が反応していたから、まあ成功なのだろう。

銚子てくてくさんぽ7

2021年04月10日 | てくてくさんぽ・取材紀行
この先の外川の町は海へ向けて落ち込む斜面に位置しながら、碁盤目状に道が配された計画的な街並みが見られる。もとは17世紀半ばに、和歌山から黒潮に乗り移住してきた崎山治郎右衛門が街区を整備、紀州から人々を呼び寄せたのが始まりで、往時は「外川千軒大繁盛」と言われたほどの賑わいを見せたという。集落は港へ下る8つの坂道を軸にしており、それぞれ歴史的所以からついた名前がプレートに記され、道や壁面に嵌め込まれている。それぞれの坂と、それらを結ぶ路地を行き来しながら、港へと下るのが楽しい。

外川駅からの県道は一条通りへと繋がっており、そのまま少し下ってみる。斜面に合わせて街区は段々になっており、石垣などで土留めされた区画の中に家が建っている。昔ながらの家は重厚な瓦屋根をのせた木造の平家で、強い海風に負けないようどっしり重心が低い、どこか沖縄の民家のような印象を受ける。横の路地は坂道よりやや高くなっているため、入ると集落の見晴らしがよい。建物が低めなため、瓦屋根が連なる様がよくわかる。

ブロック塀や石垣に挟まれた路地を行き来して、一条通りから東の新浦通りへ出て戻り、西側の一心通りへ。かつては街の中心だったことから名がつき、さらに西の本浦通りはフォトスポットのプレートも配されているビューポイント。軒先に花が配された瓦屋根の古民家の前から降っていくと、石段を経て外川漁港の漁協支所のところへと出る。銚子の漁業の発祥といえる漁港で、水深が深く潮の流れが急だった利根川河口に現在の銚子漁港が整備されるまでは、外川漁港が銚子の漁業の中心だった歴史がある。

外川は太平洋に面し黒潮も近い好立地のため、かつてはイワシの水揚げで賑わったが、現在はキンメ漁が盛んだ。一本釣りによる「つりきんめ」は身の傷みがなく味がいいことから、銚子のブランド魚にもなっており、外川漁港にも40隻ほどの船団がある。漁は夜間のため、この時間は漁船が多数停泊して静かなたたずまい。付近にはその形から名がついた犬岩や千駒ケ岩があり、さらに東へいくと同じ漁師町の長崎町、岬の長崎鼻もあるが、犬吠埼から歩き通しで流石に足にきたので、ここでさんぽは終了にしましょう。

銚子てくてくさんぽ6

2021年04月10日 | てくてくさんぽ・取材紀行
地球の丸く見える丘展望館から外川までは、歩いて15分弱と近い。このあたりの観光はほぼ車での移動、または銚子電鉄利用でピンポイントの観光が主流だが、犬吠駅からこのルートでの散策は沿道の眺めもよくオススメだ。外川駅は銚子電鉄の終点で、木造のノスタルジックな駅舎には懐かしいつくりの窓口、手書きの時刻表や運賃表も掲げられ、昔の鉄道風景が残っている。構内にはかつて走っていたデハ801が、地元の銚子商業の生徒の手で復元され、内部は当時の姿が見学できる。

外川駅は外川の市街からやや離れており、漁港へは駅から下っていく。駅のそばにある「外川ミニ郷土資料館」は、活魚問屋の島長の店先を展示施設にしたもの。郷土史や自然科学の研究者など、地元の方から持ち込まれた大量の資料はどこか雑然と並べられ、手作り展示館らしさにあふれている。マグロ漁に使ったビン玉などの昔の漁具、大漁の祝いの時に贈られた晴れ着の「万祝」などの漁業資料が外川の街らしく、他にも街を舞台にしたドラマ「澪つくし」関連の写真や、銚子電鉄のグッズなども。館長の島田泰枝さんは80歳を越えて元気で、訪れるとサービス満点の案内をしてもらえる。