ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん133…横浜・みなとみらいに八景島などバイキングいろいろ

2009年07月25日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 学校が夏休みに入り、このところ週末・平日の夕方に、子供らと出かける機会が多くなった。様々な夏のイベントを周辺でやっており、せっかくだから見たりやったりして、となり、その流れで外食も多くなっている。
 食べ盛りを連れて外食ともなれば、定額で食わせっぱなしのバイキングが、金銭的にも精神的にも楽。という訳で、今月は上旬から、立て続けにいろいろなバイキングを体験することとなった。

●フェスタガーデン@横浜ワールドポーターズ

 まずは7月上旬の週末、上の子供の誕生日ということで、みなとみらい地区の横浜ワールドポーターズへ。ここは誕生日の人は割引など特典が受けられるカードがあり、プレゼントに時計を買ってやり、おまけに「BREE」でセールのショルダーバッグも買ったり。
 子供だけでなく自分らの買い物もしっかりしてから、やってきたのが「フェスタガーデン」。窓からはランドマークタワーとか観覧車とかの夜景がきれいで、フロアで人気のバイキングの店だ。
 メニューは比較的オーソドックスで、ハンバーグやオムレツ、ギョーザにシュウマイ、スパゲティにカレーと、バイキング定番が揃っている。それだけに、自分らぐらいの年代となると、もとをとるぐらい食べるのにはきつい品揃えかも。目玉商品はタイムサービスのローストビーフで、自分で麺をゆでてつくるラーメンが面白い。

フェスタガーデンのラーメンコーナーは、自分で麺をゆでる仕組み


●ユン家の食卓@八景島シーパラダイス

 翌週末は横浜八景島シーパラダイスで、一度見たかった水族館のイワシショーを見学。イワシは、群れ全体でひとつの生き物のつもりだそうで、リーダーがいるわけでもないのに大群が様々な造形に変化するのは、不思議なアートだ。サメが近寄ってくるとドーナツの形を形成して、そのまんなかをサメがくぐっていくのは、どこか大道芸風か?
 ここでのバイキングはイワシ食べ放題ではもちろんなく、コリアンバーベキューの「ユン家の食卓」。焼肉食べ放題なのだが、壺漬けカルビ、サムギョプサル、プルコギにタッカルビと、本格的な韓国焼肉がどれもうまい。タレものはよく味がしみており、サムギョプサルはたっぷりの脂が甘い。まあ肉はもちろん国産ではないんだろうけど、これで2100円は、シーパラのレストランの中では値打ち物だ。

 

食べ放題ながら味は本格的。壺漬けカルビはとろけるように柔らかい


●餉餉@海のエジプト展

 さらに先週末は、みなとみらいで開催の「海のエジプト展」を見学した。クレオパトラの宮殿があったアレキサンドリアに、聖地のカノープスやヘラクレイオンといった、水没した都から引き揚げた品々を展示した、Y150の主要イベントのひとつである。
 展示は石造が多く、首の折れたスフィンクス像、衣服の布の質感を再現した首のない王妃の像、高さ5メートルものファラオや王妃の像など、圧巻な品々が並ぶ。そういえばこの時代のエジプトの像はなぜ、片足を一歩前へ踏み出しているのだろう?
 像のほかに宝飾品も数多く、金のイヤリングやコイン、あのクレオパトラの銅貨も。きれいだったので売店にレプリカがあるのを期待したが、あいにく文具系の定番ミュージアムグッズしかない。「金貨チョコレート」はあったけれど。

和食の惣菜が多いのが魅力。ひじきや切り干し大根、卯の花が食べ放題

 エジプト展の半券があると、横浜ランドマークタワーの飲食店で優待が受けられるので、5階のタワーダイニングにある「餉餉(けけ)」へ。ここは有機栽培の野菜・無添加の食材にこだわった、体に優しいバイキング。木の皿を片手にコーナーへ足を運ぶと、惣菜の種類の多いこと。切り干し大根にひじき、卯の花、壬生菜の漬物、無添加キムチなど、こういうバイキングはいっぱい食べられ、体にうれしい。
 うれしいのが揚げたての野菜天ぷらで、ホクホクのサツマイモとジューシーなナスに、5種類の天然塩から好きなのを振っていただく。衣が薄めでおなかにこたえず、野菜の力を堪能できる天ぷらだ。野菜がとけきったルーを、黒米ご飯にかけたカレーも絶品。デザートは白玉に黒蜜、お茶も黒豆茶で締めくくり。半券の特典だったソフトクリームも、牧場で食べるような濃厚な牛乳の甘みが見事。

 

●オークラレストラン横浜サファイア@そごう美術館

 最後はおとつい、横浜そごうのそごう美術館で「レオナール・フジタ」展を鑑賞した流れで、10階のレストランパークにあったこの店へ。4500円と、少々お高めなバイキングは、ホテルオークラの味が楽しめるとくればそんなものなのかも。
 ところが、客のほとんどは小さい子連ればかりで、ばたばたと落ち着かない。料理も比較的定番ぞろいで、雰囲気も料理もよくある無難なホテルバイキングの感じか。

タラバガニならぬ、アブラガニの食べ放題。USリブステーキもおすすめ

 ちょうど土用の丑の日で、うなぎの白焼きがバイキングメニューにあった。これをご飯のうえにごってりのせ、粥用だったあんをかけて勝手に鰻丼にしたら、結構うまかった。目玉はUSリブステーキとカニの食べ放題。ステーキはオーダーしたら焼いてくれ、米国牛だがうまみもまずまずで柔らかくうまかった。食べ放題のタラバは普通、十中八九類似種のアブラガニなのだが、ここではちゃんと「あぶらがに」と表示してあったのには感心してしまった。
 デザートには行き着けず腹いっぱいになったが、ホテルメイドということなので、オークラのクッキーと焼きたてパンは、店の人の目を盗んでしっかりたっぷりテイクアウトしたのだった。

 とまあ、われながらよく食べたこと。バイキングは子供は遠慮せず好きなものが食べられていいけれど、大人で3000~4000円となると、近頃は元を取れるか気になって仕方ない。そろそろ「美味少量」が身の丈にあってきたのかも?(2009年7月25日記)


味本・旅本ライブラリー17…『津軽百年食堂』 森沢明夫 著

2009年07月18日 | 味本・旅本ライブラリー
 舞台が弘前の町外れにある食堂、60過ぎの老店主が店を開けるシーンから始まるとくれば、老舗の苦労話とか人間模様のようなストーリーを予想させる。さらに次の章では舞台は明治後期になり、この親父の先々代が屋台をやりながら、店を出す夢を描く頃の話に飛べばなおさら。

 ところが本筋に入ると、舞台は現代に、しかも津軽でなく東京郊外ベッドタウンのショッピングモールへ。バルーンアートを続けつつ、将来に不安をもつ若者と、カメラマン大先生にしごかれる女の子アシスタントの偶然の出会いから、よくある「恋バナ」へ。バルーンアート君は冒頭の食堂の息子で、アシスタントの娘も津軽りんご農家の娘で、二人は何と同じ弘前の高校だった、と、なんだかお約束の展開でもある。

 で、楽しい同棲生活を続ける二人に転機が。バルーンアート君は不明瞭な生き方にけじめをつけて、実家の食堂を継ぐ決心をしたところで、アシスタント娘が大先生に腕を認められて一本立ちできることに。さあ別れるのか、ついていくのか、遠距離恋愛か…? 最後はまあ、弘前さくらまつりの満開の花の下で、ほのぼの、ハッピーエンドにまとまるのだが。

 面白いのは、この小説は章ごとに語り手が入れ替わる構造になっている。それもこの二人だけでなく、父親だったり、おせっかいの姉だったり、さらに時代を超えて明治期の先々代の話にもなったりする。最初は訳がわからないのが、終わりに向かうにつれてそれぞれの「代」の店主の生き方が、意外と一本につながっていくのが、なかなかうまい構造になっている。

 そもそもこの話、完全フィクションではなく、青森県が定めた「百年食堂」に定義された10軒の店を筆者が取材、それぞれのドラマからストーリーを構築したという。百年食堂の定義が、3代、70年以上続けている食堂とのことで、この小説のように津軽そばを売りにしている店もある。出汁は代々、店のおかみさんがひくそうで、この話ではアシスタント娘が食堂で「お母さん、いつか私だけに出汁のひきかたを教えてください。そしてほかの女性には絶対教えないでください」というシーンが、逆プロポーズのせりふとなっている。

 エピローグ前の最終話は、明治期に初代が店を開いた日の宴席。仲間の津軽塗師が祝いに、螺鈿細工の豪華抽き出しを持参。そのせりふが「これは百年はもついいもんだ。だからおめえ(初代)へやるんじゃねえ。おめえ(と嫁の大きな腹を指す)の子、つまり三代目へ贈るためのもんだ」。百年食堂、奥が深い。

味本・旅本ライブラリー16…『面白南極料理人 名人誕生』 西村淳 著

2009年07月11日 | 味本・旅本ライブラリー
書名のとおり、観測隊員の料理担当となった筆者が、基地での料理を通して南極観測隊員の日常やら南極のもろもろを綴った作品。厳寒かつ労働量が多い厳しい環境下、あれやこれやと工夫をして隊員たちのお腹と心を満たしている様子を描いている。

テーマからすると苦労談を思わせるが、実際にはコミカルなタッチで、ユーモア満点に読める。きつい仕事だからか結構食材は贅沢に仕込めるらしく、寿司パーティーをやってみたり、屋台的なイベントをやってみたり、居酒屋やバーを開店してみたりなどなど、割と豪華な感じ。個性あふれる隊員たちの人間模様も、そんな料理日記に織り交ぜて綴られている。もちろん、観測隊員の日常業務の理解にも役立つ。

この本は3部作になっていて、どれも読んだが面白かったのは1作目。作を重ねるにつれ、やや内幕的な話が強い方向へと走っている感がある。本作は「爆笑エッセイ」とか帯にあるけど、ユーモアや文章のキレも、やはり1作目のほうが際立っているかも。さらに、著者は2回観測隊に参加をしているのだが、本作はその両方の話がごちゃまぜに出てくるので、読んでいて少々頭が混乱することも。

近々映画化されるらしいので、ひょっとするとそのPRも意識して出したのかも知れない。個人的には、読むなら1作目がおすすめか。

旅で出会ったローカルごはん116…ヒョニネバーベキューポッサムとロータリーソコプチャン

2009年07月04日 | ◆旅で出会ったローカルごはん

 

 3日間のソウルの食べ歩き旅行で、冷麺やら屋台料理やら水産市場めぐりやら、わずか7食プラスアルファの限られた食事機会において、かなりいろいろな料理を味わうことができた。そんな中でも特に印象に残ったのはやはり、焼肉。肉の種類から料理法にいたるまで、日本のそれとは異なる食習慣と奥行を感じさせる。
 オーソドックスな焼肉は、2日目の昼食に明洞の「福清」で味わったけれど、これ以外に味わった2軒はいわば変化球。それだけに、これぞソウルの焼肉の真髄とばかり、強く印象に残ることとなった。
 
 その1軒目は、ソウル初日の夕食で訪れた、『ヒョニネバーベキューポッサム』という店である。チャングムパークから市街に戻り、中心部の鐘閣駅で下車。黄昏時に、飲食店のきらびやかなネオンがぽつぽつと灯る清進洞をやや入ったところに店はあった。
 店頭では、何やらホイルに巻いて串に刺した塊を、炭火焼にしているのが目をひく。中に入ると、店内はまるで場末のホルモン焼き屋のように狭く、3、4卓しかない小さなテーブル席は、地元のお客ですでに満席。おばちゃんがニコニコと愛想よく指差した先には、えらく急な階段が据えられていて、落下しないように注意して登ったところに、中2階のような座敷が。階下を見下ろせるオープンな席なのはいいが、木造の柵が低く頼りなげで、酔っ払って寄りかかったら落っこちてしまいそうだ。

 

店頭では豚の三枚肉をホイル焼きにしている。右はロフト?から見下ろした店内

 店名にもなっている、店の売りであるバーベキューポッサムを注文、あとはキムチジョン、玉子巻きもお願いして、まずは韓国ビールのCASSで乾杯。するとすぐに大きな鉢入りのワカメスープが運ばれてきた。これはデフォルトでついていて、肉をしっかり食べる前に海草をいっぱいとり、バランスをよくするという仕組み。ワカメスープというよりは、大盛りワカメの汁浸しというぐらいワカメがたっぷりで、これは体によさそうだ。
 続いてたっぷりのキムチに各種薬味、そして皿に大盛りのローストされた肉が運ばれてきた。薬味は唐辛子と玉ねぎ、サムジャンと呼ばれる味噌、エビの塩辛のセムチョの4種で、キムチにはなんと、生ガキがのせられている。これらと一緒に、こんがり焼けた肉をバリバリ食べるとのことで、まずは焼きたて熱々の肉だけでいただきます。

 ひときれ箸でつまむと表面がこんがりとキツネ色、断面の脂は白く、肉はほんのりピンクの、絶妙な熱の通し具合に仕上がっている。 ひとかじりすると、カリッと香ばしい食感の後、ひたひたなぐらいジューシーな肉汁がジュッ。まさに肉のうまみのみが凝縮しており、これはうまい。
 ポッサムとは一般的には、ゆでた豚肉をキムチで巻いて食べる料理である。使っている部位は三枚肉、韓国でいうサムギョプサルで、脂がきつめなためにさっぱりしたキムチと一緒に食べる。その肉をこの店では、ブロックのまま炭火であぶることにより、食べやすい程度に脂を落としてある。肉は下味はつけずにホイルと半紙で巻き、表面をあぶった後に直火で焼いて脂を落とす。この焼き方のおかげで、うまみを封じ込めて逃がさないという訳だ。

 
 

上左がポッサムに使うキムチ。小振りのカキも一緒にいただく。上右が玉子巻き、
下左が玉ねぎ醤油でいただくキムチジョン。鐘閣から入ったところにある

 続いてはポッサムの流儀に倣い、添えられたキムチで肉を巻いて、カキをのせてひと口。ポッサムに使うキムチは、漬け込んであまり味がこなれていないほうがよく、この店でも、料理を出す前に手早く仕上げた、軽めのキムチを用意してある。カキの潮の香りが浅漬けキムチのマイルドな辛味で洗練され、肉にアミノ酸のうまみがプラス。これは日本人好みの味だ。
 カキと同様に、薬味のエビの塩辛はしょっぱさに魚の香りがさらに加わり、より日本人向けの風味。強烈なのが味噌プラス青唐辛子で、ガツンと衝撃的辛味のおかげで汗がブワッと噴出してくる。肉のうまみも、辛味の刺激でより強調されるのがいい。
 カキにタコにキムチが入った、やわやわのお好み焼きといったキムチジョンや、だし巻き卵といった玉子巻きは、刺激が少なくホッとする味。どことなく家庭的な味に感じたのは、店のおばちゃんの愛想よさのおかげかも。 店を後に、まだ慣れない韓国語でお礼を述べると、「アニョンヒガセヨ!」とニコニコ。店頭で振り返ると、おばちゃんの顔のイラスト看板もニコニコ笑っている。

 そしてソウルの変化球焼肉の店もう1軒は、最終日のソウル最後に食べたご飯となった。この日は朝からあいにくの雨で、ホテル向かいのロッテデパートで免税店を巡り、デパ地下で買い忘れのお土産を買い、午前中はなんとなく買い物で過ごした。午後はキッチンパフォーマンスの「NANTA」を鑑賞に行く予定で、その前に早めの昼ご飯を食べておくこととなった。
 名残惜しいソウル最後のご飯も、案内人にお任せして、明洞からタクシーで10分ほどの西大門へ。駅から警察署のそばに広がる飲食店方面へと歩き、『ロータリーソコッチャン』という店へとやってきた。ソは牛、コッチャンはモツのことで、つまりコッチャン(牛ホルモン)焼き専門店である。

 ちょうどランチタイムのため、比較的広い店内は地元のお客で満席で、通された奥寄りのテーブルへ向かう途中、見るとほとんどの客がチゲ鍋を注文。昼食時の、この店の人気の品で、みんな真っ赤に煮える鍋と汗だくで格闘している。席に着くとさっそく、おばちゃんがメニューを片手にテーブルにつき、てきぱきとお勧めの品を説明、オーダーをどうするか仕切ってくれる。
 自分たちもキムチチゲと、お目当てである「モドゥムコッチャン」という、ホルモン3種盛り合わせを注文した。ハツ、ミノ、コプチャン(小腸)に、玉ねぎとニンニクが添えてあり、鉄板で豪快に炒めていただく、この店の人気の品である。

 先に運ばれたキムチチゲは、煮立っているのにテーブルのコンロに置かれ、さらに火にかけられる。ぼこぼこに泡だって煮えたところで、そろそろいいか、と手を出すと、店のおばちゃんが飛んできて「まだ」。たまにやってきては、煮え加減を見てくれるなど、なかなか親切だ。
 ようやくオーケーが出て、おばちゃんによそって出された。キムチは1年以上熟成させた、特製のものを使っており、豆腐にしっかりと辛味がしみている。ほかの具は白菜、厚切りの豚の首肉とシンプルで、見た目は辛そうだが食べてみると辛味よりも、発酵したキムチの酸味のほうが強い。席が鍋に近く、煮えた湯気の唐辛子の刺激のおかげもあり、どんどん汗が出てきてしまう。
 おばちゃんの勧めによると、キムチチゲの仕上げはご飯を入れるのではなく、ラーメンとのこと。それも生麺の中華麺ではなく、なんと袋麺のインスタントラーメンだ。おばちゃんが持ってきた袋めんは、スープの粉がついておらず、キムチチゲの締め専用の麺なのがすごい。食べてみると、いわゆるキムチラーメン的な味で、辛さもあってするする入ってしまう。

 

辛く熱く煮えたぎるキムチチゲ。仕上げはインスタント麺を入れて

 キムチチゲを半分ほどいただいた頃、隣の空いたテーブルのコンロで、丸い鉄板の上で大盛りのホルモンが炒められ始めた。周囲をぐるりと、やや長めの半筒状の肉が囲み、中央に赤っぽい肉、その上に玉ねぎとニンニクがどっさり盛ってある。
 見ると平たいの、厚いの、丸いの、白いの、赤いのと、さまざまな部位があるよう。「くるりと筒状なのがコプチャン(小腸)、やや丸まった厚手のがハツ、柔らかいのがミノ」と、仕上げに各部位をハサミでバチバチ切るおばちゃんに教えられる。

 程よく火が通り、こちらのテーブルへと鉄板が移され、おばちゃんのオーケーも出たのでいざ、いただきます。つけダレは醤油ベースのものと、胡麻油に塩を加えたものの2種があり、胡麻油のを片手にまずはコプチャンから。弾力のある歯ごたえが特徴で、内側にトロリと脂がたっぷりついており、かみしめるとジュッ、とほとばしるほど。脂の甘みと胡麻油の香ばしさとコクがよく合い、なかなかうまい。
 ミノとハツはあまり見分けがつかないが、サクサクと軽やかなのがハツ、ややコリコリするのがミノのよう。こちらはおばちゃんに勧められ、塩だけでいただくと、うまみがより感じられる。ホルモンから出た脂で、玉ねぎとニンニクがいい感じに焼きあがってきたので、添えていただくとガツンと刺激が強烈。個性が強いホルモンの、うまみをより引き出してくれる。
 
 ここも付け合わせがたくさん用意されていて、葉野菜を合えたサラダ、豆もやしの和え物やキムチ、なんとレバ刺しにセンマイが付いている。レバ刺しは鮮やかな紅色できりっと角が立ち、見るからに鮮度がよさそうだ。日本のよりもくせがなく食べやすく、歯ごたえがしゃきしゃきと弾力があり、フルフルと甘みがたっぷり。
 これも胡麻油と塩のつけダレの相性が抜群で、ホルモンとともに、小振りの石釜で出されたご飯と一緒にかっ込むと、パワフルなコリアめしの醍醐味、といった感じである。

 
 

切る前は大振りのモツがいっぱい。レバ刺しとセンマイ刺しは突き出しでつく。
下左は水を足して「おこげ湯」になった石釜ごはん。地元のお客が多い店

 この石釜のごはん、ちょっと面白い食べ方がある。中身をいったん別の器に出し、釜にこびりついたご飯の上からお冷をかけ、ふたをしてやや待つ。石釜の熱でお冷がいい塩梅に温もった頃合でふたをあけると、香ばしいおこげ湯「スンニュン」のでき上がりである。自分のは、おばちゃんが水の量やふたをする時間を指示してくれ、ほかの人よりうまくできたでしょう、と少々自慢げだ。
 スープをすすり、さっきのキムチラーメンもいただき、ご飯はホルモンやニンニクをのせ、レバ刺しも一緒にかっこみ、さらに付け合あわせのキムチやコチュジャン、ジャコものせてかっこみ。添えて食べたいものがあまりに多いため、石釜のご飯をすっかり平らげてしまった。

 昨晩いただいたプロカンジャンケジャンは、あの店のカンジャンケジャンを食べるためにソウルへやってくるお客がいるそうだが、このモドゥムコッチャンを食べるためにもういちどソウルへ来たい。それぐらいのインパクトだった。
 さまざまな韓国ローカルごはんを、ひたすら食べ歩いた3日間も、これにて無事に終了。19時30分の羽田行きの金浦空港発の便に乗るため、早めの夕食は空港ターミナルでになりそうだ。財布の中のウォンは、空港までのタクシー代を払えば割といい具合に使い切れそうだ。残った小銭で、フードコートで名残のCASSビール、肴は韓国風海苔巻きの「キンパプ」でちょうどかも?(2009年5月12日食記)