暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

オーバードーズ

2008-12-29 | -2008
胸が悪くなるような洗剤の臭い
(嗅覚のみでは致死量に至らない)
くらくらする頭を振れば側頭部はずぐりと疼く
(しかし確実に脳は痺れていっている)
床はひどく冷たいのにおぞましいほどやわらかい
(張り付いた舌がぴりぴりと何かを感じている)
世界とひとつになっていくという恐怖が襲う
(口の中で唾液が泡立ち垂れていく)

(それが名付ける現象は)
甘い甘い胃液が喉を静かに灼いて
(屈辱、屈辱、屈辱をもたらす)
血液雑じりの痰を生む
(まるで害虫の受けるそれのような)
体液をしたたらせ毒を出す
(笑い声が聞こえているなら)
たとえば八割を失ったのならば
(もう少しは救えたものを)
二割でもひとは生きていくということ

わたしであるはずの新生体は
(床に潰れて飛び出た心臓)
ぷかりぷかりと泡を吹かす
(掻き毟った胸も今やきれいなもの)
胸が悪くなるような臭いは相も変わらず
(ぴりぴりしていても血は流れない)
胃液の味を忘れ暫定的に今日を迎える
(それでも脳は痺れをおさめることはない)
害虫のように毒の中で再生を繰り返し
(停止した体でも活動は続いていく)
口の端から泡の唾液を流す
(わたしの抜け殻が黙ってこちらを眺めている)

コメントを投稿