暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

箱庭

2012-03-22 | つめたい
ぬるんだリップの甘い味
口にあるのは苦い味
外はいやにからっ風
かすんだ木々から滴る蜜
箱庭に運ばれるのは春の砂
外に流れる冬の泥
流れの止まった箱の中
流れ流れる予定調和
きれいに着飾るケーキの嵐
夜には穢れて袋の棺桶
あたしたち世界の中心だと
高いヒールが大名行列
砂はもうもう舞い上がり
蜜も落ちずに苦味を増して
箱に入った着飾るケーキ
そのまま忘れてリップも剥げる
口の中では砂の味
流れる泥にまぎれまぎれて
棺桶は世界を知っていく
古いヒールはもうすでに
製造ラインに組み込まれ
予定調和が流れていく
外に出たいと子供が泣けば
甘い甘いケーキが出され
ベルトコンベアは止まらない

腐乱をねがう

2012-03-12 | 心から
飛び上がることを諦めて
繭の中に閉じこもる
しあわせな夢を見ながら
残酷な現実に知らないふり

次はあなた
その次はわたし?
まだ次は来ない
けれどいずれ
次はやって来る

無機質な数の札を握り締めて
二次的な胎児がうずくまる
そのかたわらのかたわらのかたわらの
どこかで繭が破られて
(楽しげな笑い声、
 無垢で純粋な声がきこえる、)
みにくい翅をせいいっぱい伸ばした
首さえつながらない未熟児たち

悲鳴が聞こえないのだろうか
こんなにも響いているのに
生きていないと言われても
体は悲鳴をおぼえている

飛び上がることを諦めた
生きていないと言われても
生きた心地のしない世界で
どうやってもがけばいいのだろう

きれいな翅をもったひとから
わたしは生まれ出でてきた
楽しげな笑い声
無垢で純粋な声
指をさしても平気な強さ
わたしはきっと指される側

胎児になりたい
生まれなおすために
からだを丸めて
糸を吐いて
しずかにしずかに
眠りたい

足音が近づいてくる
羽音がここまでやって来る
楽しげな笑い声、
無垢で純粋な、笑い声
次はあなた
その次がわたし
悲鳴が耳からこびりついて
わたしはいっそううずくまる
生きていないと言うのなら
死ねばいいと、声がする