暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

死んだ

2007-12-30 | つめたい
何もかも死んでいって
最終的には取り残される
喪失したことに呆然とするのは
在り続けて当然と錯覚していたためか

しっかりと抱き留めることもなく
繋いでもいない手からは簡単に体も抜けるだろう
後悔はしないと決めたのは誰だ
何もかもに覚悟する勇気もないくせに

欲しいのならそのまま握って手を放してはならない
大切にしていたものが死んでしまった時
喪失に咽び泣いたところで意味がない
後悔は完了した後にばかりするものだ

何もかも死んでいって
残骸が事実として残る
白くのぼる魂の煙を
本当は見送るのが正しいのだろう

素直な悪党

2007-12-28 | つめたい
僕は嘘をつくけれど
騙すことなどしやしない

嘘を嫌う君の方こそ
ずっと騙してばかりいる

誰もが僕を冷酷と呼んで
時には蔑み時には哀れみ
最終的には疎んじる
けれど僕からしてみれば
誰もが僕より冷酷だ
悪にとって正義が悪であるように

嘘がそんなに嫌いかな
ならば真実が好きなのか

それこそ僕の嫌いな言葉だ
平気な顔で騙すくせに

嘘が嫌いと僕を蔑む
寂しいせいだと僕を哀れむ
真実を知りたいわけじゃない
嘘をつくなと虐げながら
真実までもを騙して隠す
それが君のような人たちだ

僕は嘘をつくけれど
いつだって事実を言っている
真実を隠す君たちは
事実を知れば僕を罵る
なんて冷酷 残虐非道
それならそれで結構じゃないか

僕は僕以外が嫌いだ
「いいや、僕はみんなが大好きだ」
これは嘘だと思うかな
違う これは騙し文句だ
僕は自分まで騙しはしない
なぜなら自分が大好きだから

別れの数歩前

2007-12-27 | 錯乱
頭の中から
(理解した瞬間に)
こびりついて取れない

常ではない存在と
呼ばれず育ってきた
常に喜びの対象は
尊称をもって王冠と呼ばれたい
常ではない存在と
自分でのみ考える
自分でのみ考える
(笑い飛ばせ笑い飛ばせ笑い飛ばせ笑い飛ばせ笑い飛ばせ笑い飛ばせ笑い飛ばせ)

(待ち受けるものは平坦な道)

私にさえ隠された
秘密の種が目を出した
気が付いた時にはもう遅い

これは、
(いまさら気付いたか)
これは
(あっはははははははははっはははははっあははははははは)
何なのだろう
育ちすぎた種の芽が
目の前いっぱいに広がる
広がる、広がる

(お前が見たものすべて)
(そのすべては何の為に)
(積み上げた下らない石)
(お前が見たものすべて)
(何もかもが充分だろう)

(醜すぎて笑うには)

あ、あ、あ止まらない
流れ込んでくる止まらない
目の前で木が育つ
実が熟れた時 何が
どうにも
こうにも

目が
見え ない
(限界を知ったと思った時には)
まだ限界ではない
だから大丈夫
どうか大丈夫で

夢の中で夢を見た

2007-12-26 | 
広く寂れた公園に
舞い上がる砂埃
心ない優しい人たちは
頬に刃を突き付けた

何のためにと
彼らに問う
警告のためだと
答えて笑った

人質だ人質だと叫び
何も求めず彼らは佇む
いつしか現れた警官にさえ
軽口を叩いて笑っていたが
頬に当たった刃の先が
知らず肌にめり込んでいく

「そこから先は覚えていない」
言う私に父は絶句し
姉は思い出して話せとせがむ
なぜだかこの体は傷だらけだ
頬についた傷痕をさする

痛みを伴った戯劇と
痛みを患った現実と
黒い肌の警官は本気だった
何しろ状況は少しも
冗談には見えないのだから
人質に礼を言う彼らは
私と同じ気概になっていたのだろう

「少しグロかったのは覚えてるけど」
正月と言うのに雑煮もせず
父はひたすら汁をすすめる
汁物が嫌いだと知っているのに
それしかものをすすめない

お巡りさん、
発砲してはいけないよ
だって彼らは
ただ かわいそうに 私や
あなたと
同じであっただけなのに

ならば
みな無かったことにしてしまおう
頭の中で繰り返される囁き
抗うようで同一と知る

頬が痛かろうと
むしろ誇らしく
巻き上げた風のあと
彼らに向け笑いかける
返事は、無い

皮膚の裏側に堆積した痛み
それを取り除くために
私は生きているのか
「朝ごはん」
は 既に
誰も作ってはくれない
一人しかいない崩れた部屋で
やはり汁物を作る気にはなれず

みな無かったことにしてしまおうと
夢の中で夢を見る

オズの幻影

2007-12-23 | 狂おしい

憎いと言わんばかりに
温もりの冷めない体を掻く
目から血の涙でも流れれば
この身の奮いが幻想でないともわかるだろうに

性器からみっともない体液を垂らし
代わりにごてごてと飾り立てた
楔や杭を押し込めればいいのだ
綿でも案山子は生きると言った
ならば肉でも構いやしない

腕を絡めておもちゃに向かい腰を振る
醜いと騒ぐ口を塞いでしまう
どうせ幻聴に過ぎない

たかが自虐的な
形式ばった追従にさえ
火照る体を消してしまえ

血が溢れるまで
針を突き刺し追い上げろ
出して出して枯れ果てれば
後には綿を詰めてしまえ
いまだ温もりの冷めない体を掻く
こんな自虐などでは到底足りはしない

こんな所にいるはずでは
なかった

殺せ殺せ殺してくれ
わたしをどうかころしてくれ
体の機能ばかりで役に立たない
おれがにんげんであるだなどと
冗談もたいがいにしてくれる
生温い体が白々しい
頭も心も冷めきっているというのに

綿、いや違う
きっと足りないのはブリキの中空
やはり綿でも構いやしない

陳腐

2007-12-23 | 心から
彼女は卑屈で
自己嫌悪の塊と言っても差し支えのない人間だった
他人に敵意を抱くつもりもないのに
抑えがたい劣等感は その実
抑えきれず害を撒き散らすのが常だった

彼女は思ったことを日記に綴る
大半は多分に漏れず自分のことばかりだが
その中でも取り分けて多いのが
愚痴だった

日常でさえ愚痴をこぼし
日記になってもまだ足りず
悪辣な言葉を書き殴る
不満があるわけではない
あるとするならば自分のみだ、
彼女はそうも書いている

たとえ吐き出しても止まらないほど
鬱憤を貯める器が小さいと
許容量を超えた時に我慢ができるほど
蓋の圧力はかからないと
溢れ出たものを他人にぶちまけて平気でいられるほど
酷薄ではないのだと
彼女は理解していた
自分が弱い人間なのだと

非生産性など 自分が一番
理解しているものだろう
それもまた自分の弱さゆえの考えだ
どこまでもどこまでも
彼女は日記に綴り続けた
有用ではない文字の羅列
今まで愚痴を書き満たされたことはない
それでもなお彼女は書き続ける
今のところ他の手段が見つからないせいか
最近の彼女の体は常に内側から震えている

虚飾のまま生きることのできる
器用な人間に憧れて
感情の理由さえ把握すれば 皆が
皆と共生できるだろうと信じて
少女ゆえの過ちは時間の経過とともに
美化された小さな傷痕に残るだけだと言い聞かせて
今日もまた彼女は日記に文字を連ねる
彼女は自分が弱いことを知っている
言うほどには弱くないことも
自分が凡人に過ぎないことも
知っているからこそ文が生まれる
葛藤の種は尽きることもなく
袋小路に閉じ込められつつも
彼女は一種 自虐的に楽しみながらも
悪意に満ちた愚痴をつむいでいるのだ

私は物だ

2007-12-21 | 明るい
私は物だ
そう考えることも止めて
あらゆる神経を閉じる、
三分の限界を
超えてみたくもなった

動かず
ただ
物であろう
美しい物体となるよう
意識して忘却する

人のえがく個体は
同じであっても違うものだ
神経が誰一人として
同一ではないために

それだから私は
個体 で あり続けよう
足の痛みに目覚める時
首の凝りに痙攣する時
物体として成り立たない時
その時を迎え
後悔するまで

今日は夢を見たおぼえがない

2007-12-20 | つめたい
救われる見込みがあるような
ひとくくりにして満足でしょう
あたくしは莫迦ではございませんの
期待をするくらいならいっそ
舌でも噛み切ればよくてよ

雑草
雑草をちょうだい
抜くべきものが足りず
居心地が悪いのですわ
整地などあまりするものではありませんわね
自然には 自然の
秩序というものがございましてよ

乱すからこそ面白く
今日とて土を踏んでおりますのよ
まさか 無いなどと
常套句の通ずるおつもりかしら
なんと愛しい雑草かしら

誰にとてあるでしょう
あたくしは忠実なだけですわ
お許しあそばせ
ひとくくりにできるのならば
何よりあたくしはこんなところにおりませんの

これは感謝の言葉だなどと言ったところでそのように感じることはないだろう

2007-12-19 | 明るい

正気だとか狂気だとかいう言葉が嫌いだった

そんな言葉に委ねるのは逃避だ
自我は結局のところ自我でしかなく
歯車が違ったからといって何だと言うのだろう
二種類の単語の差を見つけることができなかった
あるいは
差を見つける気もなかった

最初に この思いを
自覚した時から気付いてはいる
おそらく 私は
正気や狂気という分類を知りたくなかったのだと
分類を知ることで自分の立ち位置を確認するのが怖かった
胸の動悸が速くなり
頭の奥がゆるりと突っ張り
歪んだ衝動が沸き起こる

理性を保つ必要がある、
理性を保つ必要が

眠っている時の自分は見るに堪えず
理性をいくらか戻した時に感じる自己嫌悪は
どんな失敗よりも強く深く痛みをともなう
そんな状態で他人と会うことが恥ずかしい
そのような私によって誰かが被害を受けるのだと思うと
ありもしない罪をでっち上げたくもなる
いつにしたって逃避をしている
こうして部屋に逃げ帰り
画面に文字を打ち込んでいる現在だってそうだ

誰も彼も 私でさえも憎らしく
愛おしくて殺してしまえたら

できるなら 誰にも愛されることなく人生を終えたい
迷惑をかけるばかりの自分に飽き飽きしている

背反するのは それが 違う者の意見だからだろう

何度も何度も 崩れそうになる
今だって自分の頭を掻き毟り
衝動をおさえることで精一杯というのが現状だ
どうしようもないのならせめて
自分を使って衝動を発散させてしまおう
そう思うことも既に慣れたものだ

正気だとか狂気だとかいう分類などどうでもいい
誰にも会いたいとは思えない なぜなら
どの道困惑させ傷つけるのは目に見えている
そうして激しい自己嫌悪に陥りたくもない
ただ忘れないでいてほしいのは
私が今はまだ 一線を超えてはいないのだと
お前がいるからこそ一線を超えることをためらい
耐え難い衝動が過ぎるのを待っている

私はいつだって元に戻るつもりで
このような下らない自慰的な毒素を垂れ流している
何より恐ろしく 何よりも
誰よりも心配して呆れて傷ついてくだらなくて侮蔑しているのは
私だ
いっそいつでも死んで構わない
けれど一線を超えてはいない
一線を超えないために こんなことをしている
お前がいるからこそ
私は死ぬまで生きている


痛みを伴う

2007-12-19 | かなしい
もう会うはずのない人に
似ている顔を見た
会えるわけがないのに
もう 二度と

追い求めているのは私だけだ
忘れなさいと何度も諭しているのに
懲りもせず固まっているのは
既視感に胸のあたりを狭めているのは

いるはずがない
そんなことは、
わかっているさ

懐かしい記憶は
今や痛みの材料にしかならない
もう一度会いたかったのか、
返答に驚く答弁者

あれきり忘れかけているとばかり思っていた
この荷物はそろそろ
降ろそうかとまで考えていた
会えないはずの当人を
まざまざと見せつけられるまでは

忘れるなど許されない
呪縛に似た追悼の思いを
引き摺りなさいと 彼女は
言っているのだろうか
くだらない そんな夢見事など
何より嫌うのだと
私自身が一番知っているだろうに
彼女の面影を目で追う