思えば
いくつの時を
過ごしてきたろうね
星空を見上げたときだって
胃液まみれの排水溝を見たときも
きみはずっとわたしのそば
いくつも代替をして
どんな時でも
きみは
私の
隣に
いた
はじめは気のせいだと思っていたが
塞がった耳の奥からりいころりいころ
随分季節はずれの音がしている
蟋蟀の亡霊が取り憑いているのなら
少しはあたたかくなるというものだ
きのう食べた蟹の爪が
目玉をかりこり引っ掻いているらしい
まだ生きている、しぶといやつだ
おかげで世界は終末だ
ご覧あそこを
自転車の籠に脳が乗っている
はは愉快愉快
ほらほら星が落ちてくる
随分派手な死装束を携えて
終わりなのだから折角だから
盛大に散っていくつもりらしい
写真を撮るなら今のうちだ
どうせ既に死んだ星
看板も残らず割れてしまって
どうせ既に死んだ星
どらどら一丁見てやろう
滅びた後の世界の味を
腐って乾いた蟹の身より
きっと少しはマシだろう