- 2009-10-05 | つめたい 昏く沈んだ雲の底から 重い滴が落ちてくる 灰色の穢れを孕みながら 打ち上げられるくらげのようだ 冷たく鈍い大気をまとい 大粒の水はぽたりぽたりと 音で大地を切り裂いていく 物憂げな蝶の群れから 幾千の目を奪い取るそれら
成長 2009-10-02 | -2009 私は悔しさを知っている けれど忘れたふりをしている 私は痛みの兆しを知っている 目を閉じることは知らない 私は人の善良さを知っている この胸にあるものはいつかに埋めた あなたが笑っているのが憎い あなたのひたむきな努力が憎い あなたの弱さを知る強さが憎い けれど目を閉じることはない 私は自己嫌悪を知っている いつしか陶酔へ変わったことも 私の我慢は幼さだと知っている 反抗を知らなければ行うだけの 悲しみが肺を満たすたび 脳は妬みに犯される 卑劣さは腹に隠し 喉をきつく締めてしまう 見て聞くが喋らない 愚かしさを許すあなたたち 私はその善良さを知っている けれど深く知る度に 悲しみは肺を満たしていく 私は私の価値を知っている くすんで見えなくなったけれど
涙の理由を 2009-10-02 | -2009 時は刻みをつけることなく 質量のない流れを続かせる 現在の一瞬さえも過去であるなら 到達のない過去と区切りない現在 それらの先は流れない 破滅を唱うベルが鳴れば 私は時を殺すだろう 予測でしかない予知であるなら 鳩は空を舞ってもいい 先を知るベルは静寂を裂く 時の終わりもまた知っていれば 耐えしのぶ理由も見つからず 放蕩する根拠もわからないまま ただ現在の続きをこなすのだろう もしベルなどないと言うのなら 途切れた線路も見つからない けれど私の肉体は 時から外れることはない