暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

疲れた

2020-11-06 | 錯乱
目の前には一面の光があふれていて
にっちもさっちも進めない
上を見るからいけないのです、
だから下を見て歩きましょう。
視野の端に行ってしまえ
どこへでもどこへでも
人々は楽しそうですね、
私はちっとも楽しくない。
地面を彩る光の橋を
歩いて背骨がぐらついている
それでは地下などいかがでしょう、
あっという間に帰れますよね。
光の代わりにヒトがいる
数多、うごめく、ヒトがいる
どうやって帰れば良いのでしょう、
どうやって帰れば良いのでしょう。
つんと痛んだ目頭から伝うものは
まるで美しい橋の下を流れる
川の水のように汚れています、
なんと不出来な生き物でしょう。
帰る手立てがわからない
けれど歩いていればいずれは
いずれはたどり着けるのです、
たとえ膝が笑おうとも。
たとえ歩くことができなくとも
歩けるのだから歩いていられる
死にでもしなければ生きられる、
人はどうしようもなく生きられるのです。

イルミネーション

2020-11-02 | 錯乱
この季節がやってきた
今年もまたやってくるし来年もきっとやってくる
乱反射する路面を遮り
隠者のごとく行進を続けたところで
光はちらちらときらきらと網膜に刺さる
ぎらつくライトは至る所に虹を残し
まぼろしはすぐさま消え去るだろう、しかし
かつてそこにあったまぼろしに
わたしは大いにかき乱されている
光、光が
光がそこにあると言った
歓声をあげる人々にまぎれ
悲鳴は誰にも聞こえやしない
それでいいしそれが正しい
喜ぶべきはいつも通りの予定調和
ありもしない虹のように
わたしの恐れも所詮はまぼろし
あなたに知覚できるだろうか
わたしにだって知覚できやしないのに
これは本能的な恐怖なのだ、
感情の論理など所詮は詭弁で
ああ恐ろしい、なんと恐ろしい
色とりどりの光だろうか
いつの間にかそこにあって
いつの間にか消えていく
けれど今から年の瀬までを
それらは華々しく寿ぎ続ける
目を潰せ、でなければ飛び降りろ
そうすれば誰も不幸にならない
眼球に満ちた水晶体を
可視光線は乱反射する