わたしはあなたが嫌いでした。
あなたが大人でわたしが子供だったとき、
あなたは足早に歩いてはわたしをしかりつけました。
べつになんでもないことで、
すぐさま鬼へと変わりました。
わたしはあなたがこわくてこわくてたまらなくて、
嫌いだと自覚する前はそれでも好きでした。
好きだと思い込もうとしていました。
けれどわたしは、
思うのです、何度も何度も、
あなたでなければどれほどしあわせだったろう。
あなたは悪くないのです。
悪いのはきっとお互いの間に並べるべき記号なのです。
あなたは何もかも忘れたかのように、
あれが一時の憑き物めいた感情であるかのように、
なんの疑問もなくわたしと接してきます。
わたしはそのたびに、
ああ、憎くて、
辛くて、
おそろしくてたまらない。
ありったけの罵詈雑言を浴びせかけて、
何度も何度も拳が使えなくなるくらいに殴って、
それから使い物にならなくなった拳を見せつけてまたあなたを責めて、
それでもきっと、
たとえ行き着くところまでいったとしても、
わたしはずっとあなたへのこのきもちを忘れはしないのでしょう。
みずからのことしか考えられないのなら、
なぜ誰かと添い遂げてしまったのですか。
早すぎるから多すぎるからと、
たやすくきょうだいを捨ててしまえるのなら、
わたしはただいたずらに産まれたのです。
それならそれで秘匿してくれていればよかった。
たやすくみずから口に出してしまえるあなた、
わたしはあなたを、もはや人間として見てはいられないのです。
ごめんなさいと言いたいけれど、
あなたは一度として謝ってはくれなかった。
わたしのこころはすくすくと歪んでしまって、
もうあなたをひととして見ることができないのです。
だけれどわたしの中にある血脈は、
どうしたってあなたを捨てきれずにいて、
よりいっそうわたしは頭を掻きむしっています。
わたしは大人になりました。
大人になってしまいました。
こんなにも不出来でいびつでねじれているのに、
なんだか大きくなっています。
許してください、どうか、
あなたを許すことができないわたしを。
いまだにあの頃と変わらないあなたを見るたびに、
どうしようもない劣等感に苛まれるわたしを。
あなたのすべてが正義なのだと言いたげなあなた、
わたしのすべてが罪悪なのだと言いたげなわたし、
そう考えることでちっぽけな正義は満足します。
許してください。
どうか許してください。
許してください。
あなたが大人でわたしが子供だったとき、
あなたは足早に歩いてはわたしをしかりつけました。
べつになんでもないことで、
すぐさま鬼へと変わりました。
わたしはあなたがこわくてこわくてたまらなくて、
嫌いだと自覚する前はそれでも好きでした。
好きだと思い込もうとしていました。
けれどわたしは、
思うのです、何度も何度も、
あなたでなければどれほどしあわせだったろう。
あなたは悪くないのです。
悪いのはきっとお互いの間に並べるべき記号なのです。
あなたは何もかも忘れたかのように、
あれが一時の憑き物めいた感情であるかのように、
なんの疑問もなくわたしと接してきます。
わたしはそのたびに、
ああ、憎くて、
辛くて、
おそろしくてたまらない。
ありったけの罵詈雑言を浴びせかけて、
何度も何度も拳が使えなくなるくらいに殴って、
それから使い物にならなくなった拳を見せつけてまたあなたを責めて、
それでもきっと、
たとえ行き着くところまでいったとしても、
わたしはずっとあなたへのこのきもちを忘れはしないのでしょう。
みずからのことしか考えられないのなら、
なぜ誰かと添い遂げてしまったのですか。
早すぎるから多すぎるからと、
たやすくきょうだいを捨ててしまえるのなら、
わたしはただいたずらに産まれたのです。
それならそれで秘匿してくれていればよかった。
たやすくみずから口に出してしまえるあなた、
わたしはあなたを、もはや人間として見てはいられないのです。
ごめんなさいと言いたいけれど、
あなたは一度として謝ってはくれなかった。
わたしのこころはすくすくと歪んでしまって、
もうあなたをひととして見ることができないのです。
だけれどわたしの中にある血脈は、
どうしたってあなたを捨てきれずにいて、
よりいっそうわたしは頭を掻きむしっています。
わたしは大人になりました。
大人になってしまいました。
こんなにも不出来でいびつでねじれているのに、
なんだか大きくなっています。
許してください、どうか、
あなたを許すことができないわたしを。
いまだにあの頃と変わらないあなたを見るたびに、
どうしようもない劣等感に苛まれるわたしを。
あなたのすべてが正義なのだと言いたげなあなた、
わたしのすべてが罪悪なのだと言いたげなわたし、
そう考えることでちっぽけな正義は満足します。
許してください。
どうか許してください。
許してください。