暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

うるさい

2018-08-31 | かなしい
べらべらとよく喋る
止むことのないあなたの声
一日、二日、
ひと月、ふた月
流れ続ける永遠の波に
ほんのひとつ瞬きをした
目を開けば四季は過ぎ
目覚めた卵は空っぽで
飛び回る虫は落ち葉の下
一段、二段、
ひとり、ふたり
うすく光る階段の先は
果てしもないほど遠くに見える
ひとつ段を上がるごと
あなたとあなたとあなたとあなた
大きな口は塞がりもせず
一日、二日、
ひとこと、ふたこと
羽音のような瞬きをして
まぼろしの段をひとつずつのぼり
あなたの音波に呑まれながら
目を開いたなら雪景色
一年、二年、
過ぎていく
あなたと、あなたと、
あなたの声に
わたしの器官は揺れている

おいしい缶詰工場

2018-08-02 | 錯乱
日増しに腕は引き攣れる
どうやらそれが健常らしい

月は巡れども 巡れども
濯ぐべき血は作られず

強い決意は堕落に流され
濯いでいるのは自律心

声高に叫ばれるのは悲鳴でもなく
おのれを守る愚痴ばかり

愛想よく笑えるならば
それはとても健常なことだ

日々の暮らしを顧みれば
わたしは列を待つ缶詰のよう

呪いが次々降ってきても
いずれ頭が落ちると思えば

そう わたしはベルトに乗った
まだお頭の残る鮭

ベルトの河を遡上する
もはやすべてが手遅れなのに

「やあ、これは良い鮭だ」
「早く頭を落としておくれよ」

とてもとても健常なのだ、
「だってみんながそう言うから」

この腕を切り落としてくれ
この子宮を取り除いてくれ

わたしが健常に生きるに足る
確かなものを何もかも

この口を切り裂いてくれ
この胸に溜まる澱と共に

もがいて跳ねるわたしはさぞや
活きのよさそうなことだろう

河を昇る 緩やかな速度で
落ちれば腐敗できたというのに