暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

氷輪胡乱

2008-02-29 | 
いちとおなじをかけあわせ
開をもちいてときほぐす

ねぐらを守る彼らと
ねぐらを襲う守り神
のがれるための扉は閉ざされ
消耗品の手下ども
頭に受ける彼らの落下

問いにこたうる力をもたず
右往左往の謎解き見習い
岩のねぐらは借りた家
引き摺り出されど文句も言えぬ
犬連れ回す痴れた鬼

いちとおなじをきりはなし
閉をくだいてとじこめる

ループ

2008-02-29 | -2008
生きています

平等な命だからこそ
簡単に潰してしまうのですか
許されようというつもりもないのに
偽善者ぶるのは何のためでしょう
保身もまた他人を殺します
葛藤にまみれ、生きなさい

死に向かいます

花は簡単に手折ることができ
根はどこまでも土に食い込み
汽車の煤煙を葉にまみれさせ
静かに汚れ死んでいくのです
私の目を抉ってしまえるのなら
なぜあなたは花を手折るのですか
回答は解答ではありません

彼は永遠です

彼は存在のひとつであり
時には私かもしれません
空が可視光線をえらんで透かすように
可変として彼は存在しています
あるいは在るということのすべて
それ自体に意味はなく
生きているのでも死ぬのでもなく
彼は永遠です

善悪の区別をつけるために
たくさんのものを壊しましたね
そうして成長するという欺瞞
責めるだけの説得力もなければ
責めるほどの力もありません
あなたという彼が
ひとくくりの細胞を殺す
いわば癌細胞のようなものでも
おそらくはただの
時間の経過に過ぎないのでしょう

黒く煤けて死にゆく花の残骸を
見て泣く者がないのなら
平等な命などそんなもの
手折った彼もまた萎れて枯れてゆかすのでしょう

呪う祝詞

2008-02-23 | 錯乱
生きていれば
死ぬものだろう
その間を生きる
理由などない!
奮発して苦しむ
それもまた
たのしくなるのだよ

憂鬱な時間は過ぎた
ああ声を大にして叫びたい
だから聾唖になりたいよ
無声慟哭かなしくないが
無声ならば叫び放題
殺せ
細胞破壊魔ども

「なぜ君に惹かれていたのかよくわからない、と言えるほど私は自分に対して無自覚なわけではない。私は私の醜い感情を知っていたけれど、君は知らないどころか感情の存在さえ知らなかったんだね。どこにあるかもわからなくなって、気が付けば本能的に湧いてくる胸の悪くなるような感情にうろたえてしまう、まったく無垢な子供のようだった。どこまでも純粋で狂った君を大切に守ってあげたかったし、私が一つずつ感情のありかを教えてあげたかった。母性に似ているかもしれないね」

だが彼にそのような
力は
無い、
それを知り、

あなたは命ですか
ならば死ねますか
できるのならば命ではない
不都合は良くない
どうか生きなさい
忘れることは何より残酷だ
あなたの血は赤く
わたしの血も赤い
同じ種類の生き物という証

奏でなさい
雑巾のように生きようと!
過程は課程ではない
死ぬのなら生きるだけ
細胞こそが魂だから

循環

2008-02-20 | -2008

枯れ木はまるで
寄生されてしまったかのように錆びた枝を突き出して
草原を前にしている
それらはやがて灰に帰る

いつか約束をしたように
生きることをつないでいく
枯れる 枯れる 枯れていく
背中に吹き出る汗の源
代償に何を支払えばいい

燃える炎の餌になどなりたくないだけ
少なくとも水を通していたい

生きているという利益を得たなら
死んでいくという損失もある
断絶されて物体になり
分解されて循環していく
それでいい
それでいいのに

生きながら死にゆく冬が怖い
春に蘇る木々たちが怖い
死を受け入れ歓迎し
生をよろこび放棄して
人間はそんなことはできない
ただ寸胴の帯の上を
疾走していくことしか

塀の上から見た景色
ただ目線が違うだけで
実は何も変わっていない
それでもなんだか生き直している
錯覚しては心をうごかして
枯れ木越しの夕日が涙腺を焼く
蘇りつつある春が怖い
死にゆくつもりの冬が怖い
何度も生まれて死んでいく
すべての生き物と共存していくことが怖い

独善

2008-02-19 | 狂おしい
いたみを
きみに
おしえてあげよう
なにもしらない
ばかなきみに
きみはきょうも
よわいものをばかにして
わらっているね
かわいいけれど
はらがたつんだ
きみに
いたみを
おしえてあげよう
だれもたすけては
くれないんだよ
きみがもっている
ことりのように
ないてごらん
さけんでごらん
おしおきだって
たたいてあげるから
いたみは
きみに
ひつようなんだ
きみはばかでかわいくて
どうしようもないほど
おろかなこ
きみに
ぜつぼうを
おしえてあげよう
にどと
わらえなく
なるくらいに
むじひな
きみは
にくらしい
だからおしえてあげよう
きみに
いたみを
ぜつぼうを

過信死

2008-02-17 | 
 一部が欠ける夢を見た。目が覚めると腕が消え、また覚ますと腕は戻るが今度は口が消える。皮膚が消えて再びその夢から覚めるまでの一瞬を悶絶することもあれば、眼球もないのに目を覚ます、という状況につい笑ってしまうこともあった。
 何度も何度も覚醒し、私は全てが夢だと思っていた。いや、これは夢だと信じて疑わなかった。
 また、夢の中から自意識をすくいあげられた。これは夢か、それとも現実だろうか? 結果はすぐにわかった。なぜなら、私の体から骨格がなくなっていたからだ。
 想像できるだろうか。骨の周りにぴったりとくっついていた肉同士が合わさり、みじろぐ度に空洞から生まれた音が内側から響いてくるのだ。
 私は口を開けようとした。だが骨がないため皮と脂が揺れるだけだった。
 私は起き上がろうとした。だが骨がないため皮と脂が揺れるだけだった。
 私は呼吸しようとした。だが骨がないため皮と脂が揺れるだけだった。
 苦しい。苦しい。苦しい。これは間違いなく悪夢の部類に入る。私は喘ぎながら、それでも夢であることを理解していた。
 急速に意識が薄れていく。また夢を見るのか。次は、せめて髪の毛でもなくなってそれから目覚めればいい……。

やみ

2008-02-17 | -2008
腕から先は、ありません
なぜならもとより、ないのです
倫理などと高尚な、常識は
社会でどうせ、立ち消えます

わたしはひしょくしゃです
わたしはころされやくです
わたしはなきさけぶのです
あなたはぼうかんしゃです
わたしはよわいかちくです
わたしはひじょうしきです
わたしはびょうきなのです
社会倫理欺瞞汚物底辺清掃
苦痛内臓幸福献身常識社会

このつばさは、肉のかたまり
なぜならもとより、ありません
触れば痛みが、突き抜けます
なきさけんで、よろこびます

私が私を犠牲にすることで
倫理のない大衆は拍手をし喜びの喝采を向ける
彼らに憎しみを抱くのは
堪らないほど愛しいためだ
私は家畜と成り下がり彼らの庭を駆け回る
残酷な舞台に上がる者はいない
なぜなら貴方は傍観者だから
貴方はつまり彼らなのだ
有識者の倫理は見捨てられ
哲学は量り売りされていく
良心を得たそばで首ははねられ
血を吹き出す死骸が街を闊歩する
披食者は犠牲となることに喜びをおぼえなければならない
泣き叫ぶ美徳はいまだ新しく
常識を非常識と声高に叫ぶ輩のそばで
どうぞご自由にと殺され役を買って出れば
はさみを振り上げるのが人間だ
私を病気だと蔑む彼らは
やはり愛しく憎らしい

あなたは本当に、人間でしょうか
わたしと同じ、人間でしょうか
けれどもそれで、いいのです
どうぞわたしを、殺しなさい
それがあなたの、倫理なのだから

シミラ

2008-02-17 | 錯乱
浅く渋る
ゆうきたいの群れ

前にして
己れのけものぢみた
臭気を
むさぼる。

われよなんぢよと
ゆくのは誰だと
問うている
つもりは
無い。

ただ、
いきてゐる。

呼吸をし
排泄し
代謝され
おしなべて醜い
それはなんぢのように。

われを教へよ
みぢかなるけものの
崇高と
信じてやまない
無関心よ。

どこへゆくと
言うのだ。

代謝され
排泄し
呼吸をし
われとなんぢは
ただ似てゐる
けものだろう、けものなのだ。

におう
なんぢの服から
自身の臭気が
たちこめるのだ。

笑うがいい
己れの豊かさを感じ
嘲笑うがいい
われは
ただ
いきてゐる。

水に戻る

2008-02-12 | かなしい
白い雨が

風に乗って

自転車こげば

頬に張り付く


わかっているの

子どもで幼く

つまらない意地だと

じくじくしても

放っておけばいいものを


動かない指先で

定期を探る

その頃には

透明な水に濡れた鼠

なぜか頭がいたくて

まぶたは熱い

口に入った雪解け水は

苦く染み入る塩の味