暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

最初から救われない者に救いを持たせる気はない

2007-11-29 | -2007:わりとマシなもの
私が弱いのだと知ったのは
わりあいに最近のことだ

月日の単位など
長短を知る助けにはならない

我慢というものは
器の大きな者の許されることだ
水盆は返れば元には戻らず
溢れる盆など必要もない

みずからが弱いのだと知ってから
残酷な情報を漁った
弱いのだと自覚する前も
すでに囚われてはいたのだが

事実を知り人は強くなる
それはまさしくそうなのか

傷の舐め合いもまた
防衛し一段を昇る手段のようだ

猿を笑う
犬を愛でる
生きながらの侮辱
(疑問にすぎない弱さ)
狸を剥ぐ
豚を食う
鶏を詰める
鼠を殺す
生きながらの殺戮
(あるべきはずの恐ろしさ)

何よりも優先される尊厳は
かならずなにかを犠牲にする
それを自覚もせず暮らす者
死体を知らず残骸を嫌悪する者
忌まわしいのはすでにあるもの
異質ではなく普遍
まかり通るほどの常識

私は憎悪に狂ったのだろうが
それを笑う者も狂っている

残酷な情報を貪り
今なお弱い人間として
ものを食べ暮らしている
糧に感謝はしているか
享受すべきは何もない

私が弱い人間だと知ったのは
本当に最近の話だ

自分を省みた時
みずからを殺したくなる弱さ

臆病とは弱者の証だ
おそれるまでは万人が
おののくのみは弱者が

不変を信ずる者たちよ
器の大きな殺戮者たち
彼らは私を笑い許すか
私のように自分で手一杯でない
飽食にさえ飽きた
死体趣味の聖職者

残酷な情報を貪り
今ではそれを省る
大義名分を掲げた正義の殺意
これでは 私は
弱いのではなく狂っている
アンダーグラウンドで墓を掘る
入ることのない犠牲者のために
正しくはない だが
どの道同じことだ

弱い人間に許されるのは
諦念がいいところだ

弱いものは弱い
葛藤するより他にない

悪の定義というものは
随分とまた狭義なものだ

捨て駒残党

2007-11-28 | -2007:わりとマシなもの
おまえのくるしみは
おまえだけのものではない
どうようにわたしのくるしみ
ねたみ
うらやみ
たのしみ
かなしみもまた
すべてが
わたしだけのものではない

まったくやっかいなことだ
いたみわけもまた
ここちよいのだから
おまえ おまえたちのいしは
わたしのそれであり
すべてのせきにんとやらは
わたしにいちにんされる
まったくめんどうなことだが
これもしかたのないことだ

ああ
おそろしい
たいがんではかんたんにひとがしんでいく
みしらぬものから よくしる
いたみわけのどうほうまでも
このはのようにちっていく
おそろしい おそろしい
しぬのはやはりおそろしい
なかまのいたみをかんじている
ぎぜんになみだもでてこない
わたしもしかばねとなりうるのだから

ほうこうをあげ
さかをおりるしかない
おちばをふみしめるおとと
おまえたちのいきのおと
じゅうしんがせなかでゆれるおとに
わたしのはのねがふるえるおと

やめられない
おそろしい
ああ なぜわたしは
このようなばしょで
しにむかいはしるのだろう
まかされたからなのか
たのしくてしかたがない
あきらめににているが
むしろここちよいのだ

やまのふもとでわかつであろう
どうほうとこきゅうをともにすること
おまえのくるしみはわたしのものだ
わたしのよろこびはおまえのものだ
たのしいだろう なぜなら
わたしがたのしんでいるからだ

さあかえりざけ
おまえをはでにちらすがいい
けもののほうこうは
やまのねをゆらすだろう

投影精神学「臨床における自己愛症例」「妄想症」

2007-11-27 | 錯乱
楽しくもないのに
おまえは笑っているのだろう
その目付きの不自然な様ったら
山羊にも劣る不細工な面じゃあないか

ゆっくりと立ってごらんなさい
おまえの足は木偶の棒かい
それともおまえが
使えもしないデクノボーかね

欲しいだけの情報を
くれてやっただけの話さ

何に怯えているんだね
わかっちゃいないだろう 錯乱して
まったく全体話にならない
周りの敷居が高いとでも言うのだろうさ

人と人が雪崩を起こし、
わたしはその一員である、
有害無益は有益なのか、
鏡の向こうはひとつも、
何も答えてはくれず、
じぶんと思われる薄気味の悪い、
笑みさえ浮かべぬひとみを、
じいっと見詰めていると、
不思議と心が浮かばれるのだ……と……

金網を越えて
やつらが入ってくるぞ

土足厳禁私語はおそとで
おまえの中身は硝子細工なのだね
面倒臭いったらない
叱責されたいのだろう?

心ない一言で
死ねばいいのだよ
何を執着することがある
そんなにぎごちない関節をして

罵倒は免罪符だよ
そう思うがいい
ほら 楽しくなっては来ないかね
自分だけ狂気だなどと勘違いも甚だしい

演説の影はわたしが、
ひとりの時に酷い言葉をぶちあげ、
じいっと見詰めているうちに、
気が遠くなっていく、
なんて薄気味の悪い笑みを浮かべながら、
唇の先から空気を漏らして笑うのだ、
ハハハハ、ハハ……
何と……滑稽なのだろう……ハ……


My Visceras For You

2007-11-26 | -2007:わりとマシなもの
胸の動悸が止まらない
(私の)
吐き気に似ている劣情の捻れ
(私の 私の)
見送る顔の空々しさは
最も忌むべき表情の一つ

(私の内臓をあなたに)

静脈血ほど黒くはない
私の清らかな体液を
あなたのものとしてしまおう
私の苦さをあなたは知らず
あなたの甘さを私は知らず
平行しない線の上
共有の誘惑は夢に掠れる

肉は信用に至らない
なぜならとても浮気だから
沈黙を守り巡る体液
言われなくとも動く内臓
開いて全てを捧げよう
裏切りを 私の
体が犯した裏切りを知りたいのなら
どうぞ脳漿まで啜るがいい
脊髄の真ん中を貫いて
四肢を罰して許すのならば
私は喜んで糧となろう

辿り着けないことも醍醐味ならば
それがいとわしいこともある

誰にも何も言えはしない
そんな舌は食べてしまおう
同じなのに解釈をたがい
理解し得ないそんな距離など
動悸をただ早めるばかり
食べてしまおう食べられよう
距離は同じ 同じになる

理解できないのなら
私の内臓をあなたに捧げよう 全て
残らず供物として やがて
嫌悪は誰に向くだろう
それが私の理解なのだと
喋る口も存在しない

叫ぶだろうか
狂うだろうか
私の既に知っている
理解を合わせ増大した
劣情に耐えるか弾けて散るか
どちらにしても距離はゼロ

(細胞など三ヶ月で消える)
私の内臓をあなたに
捧げよう 全ての願いと
この劣情 動悸を何もかも
捧げよう 意識の在りかをありったけ

さよなら

2007-11-24 | -2007:わりとマシなもの
古きを忘れて
さよなら

新しく来た風に
さよなら

別れを告げよう
手を振り笑って
振り返るのは意気地無し
別れを告げるよ
終わってもいないことに

さよなら
そこで私との繋がりが断たれる
すべてを無理やり流し去る
さよなら
そのまま逃避行だね

全部ぜんぶにさようなら
そうして古今に
こんにちは
まいにち毎日
当然に向かって手を振る
手を振ってからまた会おう
さよならさよなら
こんにちは

未練

2007-11-21 | つめたい
流れる電車に
紛れる赤色

彼岸などとうに過ぎた
遅れ咲きの彼岸花

お前も寂しかろう
だから群れて生えるのか

一瞬のうちに
流れ去る赤色

毎日毎日
死ぬまで会おう

彼岸を超えて
対岸を越える

群生するおまえたちは
皆同じ親の子だろうな

まだ彼岸に帰りたくはないのか
草原に潜む目覚める赤色

それでもいずれは
帰らねば

赤い花は
消え去るものだ

流れる電車に
見えぬ赤色

季節外れの彼岸花は
朽ちて埋まった 既に

陰陽を知る

2007-11-20 | つめたい
皮肉屋にえがけるものなど
たかが知れている

ただでさえ有害なものを
更に煮詰めてなお昇華したものこそが
前向きなことを言う資格がある

などと
考えているうちには
少なくとも

まだ受け止めることが
不十分 だ

神経毒

2007-11-19 | -2007:わりとマシなもの
誰もが視神経に毒を持っている
一人では虫も殺せないが
何人もの視線で人間を殺せる
毒を蓄えているに違いない

そうでもなければ
この視線の中
自律神経を揺さぶられている
私はどう説明すればいい

今朝自転車で下った
坂の上の空気よりも痛い

抵抗は無力に等しく
あるいは餌に過ぎない
嬉々として 集団の中枢神経は
その足掻きを眺め踏みにじり
毒を増すだけで

一人の毒で何が殺せるというのか
罪もない善良さは兼ね備えていないが

五臓六腑を噛み砕く
幾数人の無知 毒素
私はその味を知っている

ああまた一人殺された
数万人で眺めてもニュースは死なない
ああまた一人殺した
毒の後遺症を引き摺る

誰もが視神経に毒を蓄えて
知らない間に人を殺す
毒の後遺症を引き摺る
私が殺したに違いない
毒の後遺症を引き摺る

冷たい痛み
私が 殺されよう
毒は一人でははたらかず
幾数人が一人を殺す、
何万回目もの既視感を
抱くだけだ

青い花の墓地

2007-11-18 | 
花を、植えなさい。

青い花の種を渡され
荒れた湿地に立たされた
救いは雑草のないこと
救いもないのは
土を耕す道具もないこと

踏み締められた硬い土から
身まで沈む濁った沼地へ
青い花は
水気があり 土の細かな
障害物もない場所に咲かすと言う

さらりと粘土を踏みながら
土から沼へと身を沈め
手に掴んだのは頭蓋骨

均一に並べられた
人の水分で ここは
沼へと化したのよ。

進めば当たる人の頭骨は
死してなおも饒舌だ
青い花など、育てようという
酔狂な奴もいたものだ。
われわれの養分は、確かに
美しく大きな花を咲かす手助けになるだろう。
誰一人寄り付きはしないのだ、
お前もまた酔狂な奴だ。

戦で死んだ
そこは墓だ
彼らの話を聞きながら
頭骨の破片を放り出す
汗の雫は拭えても
疲労感は拭えない

ちょうどよさそうな沼があるじゃない。
ほら、早くしなさいよ。
死にたくはないでしょう。

無益に殺す人形の女王

何が、
青い花だ

誕生

2007-11-17 | 明るい
ドアノブに手をかける
男の指は震えていた
外に出るのが怖いのか
それとも喜び奮えているのか

外の世界はおそろしい
だからこそ外へと向かいたい
安全無益な世界ほど
死に近い場所はないのだから

ドアノブは溶けもせず
確かに男の手の中に
一歩のためにその膝を
上げるが先か開けるが先か

生まれ出でた扉の向こうで
見知らぬ者の祝福を受け
男は自らの無名の誕生に
また 震える