暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

ねもる

2012-11-17 | 狂おしい
真新しい靴で走る
やがてぼろぼろになればまた新しくなる
燃えていく、燃えていく、
すべては灰と煙になって
雲から滴る汗の粒が
しとしと陰気に還ってくる

器官の束が締め上げられ
ある期間のために拡げられ
無慈悲な機関はまた燃やし
帰還は時には癌となる
新しい靴の山は置換され
ずるずると引きずられる弛緩した足
悲観するのはまだ早いと
阿鼻叫喚の渦もみな燃える

わたしはたくさんの死を眺めた
すべては灰に人になり
等しくからだを汚していく
まみれているのは体液ではなく
ただひたすらに汚泥なのだ
臭いもなければ情もない
だからまた新しい靴を履く

温んだ水は腐敗する
だからそれは水ではない
ぬかるんだ土からのぼる気配
つまりそれは土ではない
古い古いくたびれた死者を
常に常に纏っている
ひどく寒気がしたとして
わたしは数えきれない古い靴の灰から生まれ
そしてわたしもまた
陰気な雨とともに纏われる

すべてすべてが燃えていく
新しいものを置き去りにして
いいや置いていきなどしない
だらりと投げ出された足もまた
やがては燃えていくのだから
やがては還っていくのだから