暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

殺意の谷

2007-06-29 | 錯乱
君の声が聞きたい
一緒に空を見よう
同じものを食べよう
毎日電話をして
喧嘩をした後には君の大好きなすずらんの花を玄関に置くよ

君の声が聞きたい
ぼくたちいつも一人ぽっち
だから輝いて見えるのかな
特別ぼくらは特別なんだ
わかりっこない
あんな奴らになんか

君の声が聞きたい
親なんて捨てよう
だって親なんて偽りの箱で
収められているのは国の洗脳
ぼくらの脳についた電極
それだけがぼくたちの障害なんだ

君の声が聞きたい
許したくないよねえ
だって君の腕をこんなにしたのは
ぼくの目をこんなにしたのは
わかってないあいつらなんだよ
許せないでしょねえだって
人間は醜いからさあ

君の声が聞きたい
でも君って誰だ

君の声が聞きたい
ああでも音が拾えない

君の声が聞きたい
一緒に逃げようそうしよう

君の声が聞きたい
やっぱりぼくらは家畜だね

君の声が聞きたい
頭がとっても痛いんだ
そろそろ金槌を買いたい
誰の声だって聞こえやしない
ぜんぶぜえええええんぶぼくの夢
君の声が聞きたい
これはどこかで聞いた最後のフレーズ
君の声が聞きたい
多分ぼくの声が聞きたかったのかな
君の声が聞き
でもたい君の声が手遅れだ聞きたいったかな君の声が聞きたい君の声何が何だかが聞きたいわからなくて
君の声が聞きたい
君の声が聞きたい
君の声が聞きたい
君の声が聞きたい
お父さんお母さん
友達のみんな
よくわからないけど世界
今まで本当にありがとうございます

2007-06-28 | つめたい
どうだって構わないの
酷く腹立たしいわ
自分にも毒を遣りそうよ

生温くて心地好いでしょう
次は冷たさを憶える番ね
私は鞭を持っているわ

犯るなり
殺るなり
御好きになさいな
ひとかたなど壊しておしまいよ
飽きたのでしょう?

幾ら諫めても
幾ら謝っても
もう何も云わないの

先の毒が
逆流したのか知ら

愛さないでね
反吐が出るから
酷く疲れてしまったの
此処に在るのは人ではないわ

勝手になさいな
どの道死んだわ

フォース

2007-06-27 | つめたい
作られた仮面などに興味はなく
下卑た媚など切り捨てるほどに価値がない
誇りを棄てればお仕舞いだ
そうなれば切り捨ててやろう

お前は私だ
とんでもなく利己的で
貪欲に強さを求め
(深みへはまりこんでしまう)
力が欲しいか
ならば私に勝つがいい
お前の力を吸い出す私を切り捨てるがいい
己の欲望の糧にしろ

自信と誇りに見合うだけの
力が欲しい

絶対的な欲と利己と力をもって
お前を縛りつけてやろう
抗うもこちらに任すもお前次第
その瞳に少しでも嘘を映せば
どの道
この手で葬るのだから

私の力はこの腕に
お前の力はその胸に
私はお前が欲しい
不屈のお前の魂が


身を千切り

2007-06-24 | 錯乱
恐怖し、
破壊した。
涙を流すが、
唇も歪む。

嫌悪は空を汚し、
歓喜は川を辱める。
感情を牙へと変え、
根絶を人へと差しだす。

憎しみに心をとらわれ、
ひたすらに自らを破壊する姿は哀れだ。
手負いの獣が向ける爪を、
受ける者など居はしまい。

肺袋を吐き、
脊髄を叩きつけ、
少しずつ少しずつ死神を近づけよう。
生とは自慰だ。
ならば己の意志に従い削り行こう。

許しを乞う。
望まれぬ感情を持ったならば、
押し殺すか殺すかが最善だ。
瓦解する理性の許しを乞う。

死肉を食らうことにも既に飽きた。
今は空腹を楽しみ、
止むことのない咆哮を味わおう。
恐怖し、
恐怖され、
惨めな四肢を投げ出そう。

ここは静かで心地よい。
そろそろ牙も折れるだろう。
死に近づく体を安堵が覆う。
そろそろ許しも得られるだろう。

慟哭

2007-06-23 | かなしい
毎年、忘れずに努めようとしているのに
命日は既に社交辞令と化している
気が付けば秋が訪れて
ようやく思い出すのが常だった

近頃はよく
あなたのことが頭を掠める
私は高校三年生となり
時間の止まったあなたを
追い越そうとしていて
追い越して
そろそろか
二人の命日は

誰も
死なないで
あなたのように
彼女のように
緩やかな川はきっと生ぬるいのだろう
ひどく息が詰まる

喪失

私の周りでは
様々な人が簡単に死を口にする
大切な人が喪われたとき
それでも簡単に死を望む人は少ない
軽々しく口にするな
知らないくせに

私は怖い
死ぬことよりも
何かを喪うことの方が
それに麻痺していくことが
どうかどうか死なないで
私の目が黒いうちには
誰も目の前から消えないで

喪失
喪う前にこちらが喪われた方が

思うのもまた愚かだろう
私の命は軽いかもしれないが
私の精神は何より重い
六月二十三日
蝉はまだ鳴かない


バグ

2007-06-23 | 
虫が涌いた
苦痛を肩の下に滑り込ませ
虫を 殺そう

界面活性剤に
もがく甲虫
足を投げ出し
のたうつ羽虫
親子は先にどちらかを殺し
絶望を眺め過ごそう

死骸は積もる
累々と

虫が涌いた
人が騒ぐ
虫を殺した
人は騒ぐ
笑いが 止まらない

「なぜ殺すのか?
お前たちはいちいちそんなことを聞くのか。
なぜならお前たち虫と違い
私は知能をもつからだ。
理由などない。
大義名分はいくらでも作れるが、
それが当たり前なのが人間だ。
慣れてみたらどうだ?
たかが肉親を殺され
お前は単に恐いだけだろう。
私を責めるのもけっこうだが
お前の言葉に私が泣いて謝罪するとでも思っていたのか」

最後の虫を殺した
そうだ 私もまた
三つの節にそれぞれ一対の足を持って
死骸の玉座についている
そうだ 殺そう

嘘嘘嘘

2007-06-21 | 錯乱
知りたくもない約束を報され
守りたくもない誓言を結ばれ
私は嘘で塗り固める
自分を守るためと嘘をつきながら
逃れることに慣れすぎて
立ち向かう術は見えなくなった

何も感じない
何も許さない
何もわからない
何も存在しない

約束なんて破りたい
知らずに死ぬのは幸せだ
誓言なんて必要ない
誓える相手もいないのに

許されるなら
嘘をつき続けていたい
私はもう嘘なのだと
笑って嘘をつけるなら
何をされても構わない

過ぎたことは変わらない
誓いながら嘘をつく
明日私は死ぬだろう
報されながら嘘をつく
逃避行
逃避劇

平常

2007-06-20 | 狂おしい
白い腕は
骨みたいだから
皮を剥いでみようか

腕から指へ滴る血が
甘くて苦くてたまらない
少し太くて脆い管
力を入れれば吹き出るね

僕が見たいのは
そんな顔じゃない

悲鳴は案外汚ならしいから
まず喉笛を砕いてあげる
死ねばよかったと思うかな
あの時 舌を噛み切ってでも
できない自分はわかるだろう?
誰よりも臆病だから

脂肪を少しずつ咬みちぎって
外から中身を引きずり出して
内容量を減らしてみせるよ
頭はまだ 必要だよね

甘くて苦くてなまぐさい
鉄にも勝る血の匂い
心も体も踏み潰せば
人間以外が出来上がる

──やった!
僕は君よりは
マシなんだね!




自虐殺隊

2007-06-20 | -2007:わりとマシなもの
人は自分より小さなものに
頼りたがらない
必要性を認めないからだ
不信の城は
蟻を通すだろうか

こんなものに手を委ねる
俺は馬鹿ではなかろうか
大は小を兼ねるらしい
右に 倣え

許されざるは反逆者
大は小を飲み込むだろう
胃袋を突き破り
卵を産み付けようなどと露ほども考えずに
こんなもの
こんなものに俺が負けるはずは
無いのだ

小さなもの
それはすなわち己の頭脳に劣るもの
武具の折れることも省みず
鯨にさえも刃を向ける
恐るるべきは同じヒト
それ以外は愚図らしい

小さなものを許さない
回れ 右
殺せ殺せ殺すのだ
強大で矮小な蟻の静脈
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