深い深い海の底から
おいで、おいでと招く声
夜の海には灯りもなく
砂浜から深海色の手が伸びる
きみはわたしをみているね
ふかいところにしずむわたしを
わたしもきみがよくみえる
もっとちかくでよくごらん
いつの間にか足をとられ
ぬるんだ水の中にいる
足を、腕を、頭を抱え
あぶくはとっくに遠くへのぼる
おかのうえはたのしいかい
うまれこきょうをすててまで
はいあがってきたそこは
きみをたすけてくれたかね
眠る魚を見送って
深く深く、暗く冷たく
澄んだ闇へ引きずり込まれる
ぱくぱく開く項の顋
たくさんあそんできただろう
さあ もうおうちへかえるじかんだ
わたしのことがみえているなら
きみのすみかはここということ
体を抱く手はとても優しい
触れた温もりを奪うほど
もがけばもがくほどあぶくは零れ
胚は潮に満たされる
にげなくてもいい はらからよ
いっしょにみなもをみあげよう
おかはたのしかったかい
さぞやいきにくかったろう
違う、私は陸のものだ
生まれ落ちて死ぬまでずっと
見えやしないし聞こえやしない
引きずり込まれたこの時までは
ゆめさ ゆめだとおもえばいい
これはおまえのあいするゆめと
なんてここちよいゆめだろう
めざめることがおしくなるほど
浸透圧に渇かなければ
水圧に潰れることもない
まさしく夢だ、でなければ
鱗の並んだ鼻梁をなぞる
だからあんしんしておいで
こちらへかえってくればいい
ねむっているわずかなときでも
ふるさとでゆらりたゆたえるのだ
深海色の手と手と手たち
かれらの熱を知った時
一匹の魚が目の前にいた
そいつは腕を振りほどき
ゆったり深くへ沈んでいく
何度も何度ももがいても
もはや気泡はのぼらない
これは夢だ、でなければ
(おまえの声はわたしの声だ)
おいで、おいでと招く声
夜の海には灯りもなく
砂浜から深海色の手が伸びる
きみはわたしをみているね
ふかいところにしずむわたしを
わたしもきみがよくみえる
もっとちかくでよくごらん
いつの間にか足をとられ
ぬるんだ水の中にいる
足を、腕を、頭を抱え
あぶくはとっくに遠くへのぼる
おかのうえはたのしいかい
うまれこきょうをすててまで
はいあがってきたそこは
きみをたすけてくれたかね
眠る魚を見送って
深く深く、暗く冷たく
澄んだ闇へ引きずり込まれる
ぱくぱく開く項の顋
たくさんあそんできただろう
さあ もうおうちへかえるじかんだ
わたしのことがみえているなら
きみのすみかはここということ
体を抱く手はとても優しい
触れた温もりを奪うほど
もがけばもがくほどあぶくは零れ
胚は潮に満たされる
にげなくてもいい はらからよ
いっしょにみなもをみあげよう
おかはたのしかったかい
さぞやいきにくかったろう
違う、私は陸のものだ
生まれ落ちて死ぬまでずっと
見えやしないし聞こえやしない
引きずり込まれたこの時までは
ゆめさ ゆめだとおもえばいい
これはおまえのあいするゆめと
なんてここちよいゆめだろう
めざめることがおしくなるほど
浸透圧に渇かなければ
水圧に潰れることもない
まさしく夢だ、でなければ
鱗の並んだ鼻梁をなぞる
だからあんしんしておいで
こちらへかえってくればいい
ねむっているわずかなときでも
ふるさとでゆらりたゆたえるのだ
深海色の手と手と手たち
かれらの熱を知った時
一匹の魚が目の前にいた
そいつは腕を振りほどき
ゆったり深くへ沈んでいく
何度も何度ももがいても
もはや気泡はのぼらない
これは夢だ、でなければ
(おまえの声はわたしの声だ)