暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

存在の否定

2012-01-31 | つめたい
音がないなら居ないと同じ
聞こえないなら居ないと同じ
くるりと回れば雲の上
横になったら死んだと同じ
くすりと天使も笑ってる
唄をうたえば火の中で
知らないあいだに土の下
亡者も天使も火蜥蜴も
居ないよりかは救われる

さなとりうむのはしのへや

2012-01-27 | つめたい
私は生きていない
でもトイレに行きたくなる
からだは言うこときかないから
ぽっかり明いた穴のうえまで
運ばれていかなくちゃいけない
まるで死人を運んでるようねって
あの人は笑いながら言うけれど

食べるなんてできやしない
まばたきだけが私のサイン
痛いとか 悲しいとか 心地よい
なんて
よくわからないの
よくは知らないの
わかっていることはひとつだけ
私は生きていない
たったのそれだけ
死んでるみたいはその通りで
私は死んではいないだけ
でもおなかがすくの
トイレに行きたくなるの
すぐに眠くなるの

死んではいないんだもの
呼吸するゴムまり
それが私
でも 眠くはなるのよ
まばたきさえしないなんて
本当に死人のようね
でも何がおかしいのかわからない
ただ眠くなるの
すぐに すぐに
眠くなったの
おやすみなさい
やすらかに

フィルムを並べて

2012-01-11 | -2012
僕たち約束をしたね
遠く、遠くへ離れるとき
僕たちは信じていたんだ
子どもだけでは何もできないと
たったこれだけの距離さえも
たどり着けないものだと
だから僕たちは約束をした
きっと大人になったとき
何度でも何度でも遊ぼうねと

手を振るだけは歯がゆくて
けれど約束を噛み締めたなら
少しだけ笑ってさよならできた
お金も時間もありのまま
思い描いていた大人の理想
会えなくなるのは子どもだから
離れなければならないのは子どもだから
あと少しで大人になれるのなら
その少しを我慢すればいい

約束はついに果たされて
大人になった僕たちは
朝になるまで遊び続けた
理想が現実になった喜びで
慣れないお酒に酔って潰れて
大人の快感に酔いしれて
だけれどそれは一度きり
一度きりの約束は果たされて
恍惚は一夜も明けずに鈍さへ変わる

もう一度約束をしたね
お互い頭を押さえながらも
もっともっと遊ぼうねと
子どもの頃に交わした約束
似ているけれど違った約束
だって僕も黄みもお互いに
とっくの昔に子どもじゃなくなっていた
くだらない約束に照れ笑いをするけれど
どちらも大人の目をしていた

約束は守るものだと
使命に燃えていたあの日の僕たち
あの日、僕たちは子どもだった
大人になった喜びで
いつまでもいつまでも遊んだ僕たち
あの日、僕たちは
子どもと大人の境にすぎず
僕は今、かつておじさんと呼んだひとと
おんなじ顔立ちでいる

僕が大人になったなら
君も大人になったんだ
約束はいまだ果たせないまま
約束の使命感さえ重荷になって
いつでも会える
いつでも会えるんだからと
子どものころの言い訳をしている
遠くの土地へはひとっとび
世界はあまり広くないと知った
だけれど君のいるところは行かない
世界はあまり広くないなら
行こうと思えばいつだって
君のところへ行けるから
だから今じゃなくてもいい

僕たち約束をしたね
一度、二度と約束をしたね
約束なんて儚いものさ
文書にしたなら行くけれど
口約束なんて儚いものさ
僕たちは大人になったけれど
あの歯がゆさはもう味わえない
あの恍惚はもう味わえない
もしも君のところを訪ねても
もう約束は作れない
門限ギリギリまで遊ばなくていい
夜通し遊ぶことはもうできない
ただふたりで居酒屋にでも寄って
三時間ほど話して終わり
月日はどんどん過ぎていく
約束はかえって鮮やかに
僕たちの褪せた視界にちらつくんだ