暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

習作

2011-07-30 | かなしい
どうかわたしを跳ね除けないで
簡単に消してしまえるのなら
たいした価値もないんだろうけど

空が逆さに映って見えるよ
わたしはもう遠いところにいる

どうかわたしを跳ね除けないで
簡単な二分の一でさえ
とても難しく思えてしまう

海がぼたぼた落ちてくるよ
みんなはもう浮いてしまった

けものよ、むしよ、さかなたちよ
わたしをどうか跳ね除けないで
大きな大きなつめたい手が
わたしを要らないと言ったとしても

土と空気との間にとどまる
きっとわたしは取り残された
少ない確率も視点を変えれば二分の一
わたしは取り残されたけど
けものもむしも さかなたちも
こうして取り残されている

わたしに澄んだ目を向けて
こころを壊しにかかっているの

どうかわたしを跳ね除けないで
それでもわたしは生きていたいの
神様がわたしを要らないと言ったのなら
簡単に消してしまえるけれど
どうか跳ね除けてしまわないで

無垢な害悪

2011-07-26 | つめたい
車輪が目の前にあって
潰されないよう走っている
いっそ両手両足轢いてくれたら
なんだかぽわんとなれるのに
私はめそめそ泣きながら
さようならさようならと体をふって
燃やして屠ってしまうさま
それから醜い豚になって
踊る代わりに愛玩される

だけどこわいの
だけどこわいの
とってもとってもかわいいの
嘘に嘘を募らせて
たにんを轢かせてはころしているの
醜い豚から手足がなければ
車輪はわたしをまたころす?
だけどとまりたいの
だけどとまりたいの
わたしが走ってなんになるというの
だけどこわいの
だけどとまりたいの
だれかののうみそが
転ばせてくれることを祈っている

祈っているとも

輪廻の呪い

2011-07-21 | 狂おしい
大切なひと
いとおしいひと
そばにいて
安心できるひと
わたしにはその違いなどわからないけれど
どれも失いないたくないことならわかる

失ってはならないものは
掴んでおけと誰かに教わった
決して離そうと思ってはならない
逃げ出そうとさせる前に
安心をこちらからあげなさいと
わたしにはよくわからないけれど
行為そのものは理解できた

本当に大切なものならば
それの形が変わろうとも
ずっとずっといとおしい
その言葉はきっと真実だ
だっていくら形を変えても
いくら冷たく当たっても
あのひとは欲しい言葉をくれた
愛している、愛していると
微笑んで囁いてくれた
わたしも囁き返して安心を渡す
愛している、絶対に放さないと
あの人は微笑んでくれた
血の涙を流しながら

大切なひと
いとおしいひと
そばにいて
安心できるひと
わたしにはその違いなどわからないけれど
すべてが内包されたひとは知っている
失ってはならないことの意味を今日知った
どんな形であったとしても
決して失ってはならなかったのに
たとえ精神は気高くとも
からだは肉と臓器でできていて
たやすく朽ちてしまうのに
わたしはそれに気付かなかった
あんなに皮膚がはがれていたのに
足の付け根も腐っていたのに
眼窩から虫さえ湧いていたのに
それでもあの人は生きていて
愛していると囁いてくれた
だから夢にも思わなかった
考えつきもしなかった

姿形が変わっても
たましいさえ不変なら、
そのたましいはわたしをすり抜け
次の世界へ逃げてしまった
最後の最後にあの人は
わたしをついに見限った
わたしに残されたのは肉のかたまり
あの人をかたちづくっていた可変のかたまり
血の涙を流す主はもういない
乾いて湿って毒を出す
これはあの人なんかではない
大切なひとを取り逃がしてしまった
いとおしいひとを失ってしまった
そばにいて安心できたひとももういない

ならば追い掛け続けなさい
そう言ったのは誰だったか
次の世界であの人を探そう
あの人がわたしを忘れていても
わたしはきっと覚えていよう
覚えていられないと言うならば
何にだってたましいを捧げる

愛していると囁いて
愛していると囁いて
愛していると囁いて

次こそうまく捕らえるから
次こそ捕らえ続けるから
あの優しい笑顔と血の涙、
愛していると囁いて