暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

砂漠の戦場

2011-01-29 | -2011
私は今どこにいるのか、
歩んできた道でさえひどく白々しく映る
砂色の風が髪を逆撫でて、
かわいた粒が目を灼いていく

ここはどこだ
少なくとも安寧の地ではない
時折干からびたぼろきれのような
死者がこちらを手招いている
汗はとうに出し尽くし
刺さるような黄色と突き抜けた青色が
そして鼻をつく鈍い焦げの臭気が
たった一人、私がたった一人であると
囁きかけてくる

命を分かち合った友よ
いがみ合った憎き同朋よ
あなたたちはどこにいる
砂の底で彼らは
安寧の地を目指しているのか

生の意味などとうに尽き果て
それでも私は生きたいと願う
確固たる信念、浅ましい本能
汗が引いたのも決して出し尽くしたばかりではない

私はどこからやってきた
たぶん、それは、北の道
だが、北の道さえわからない
引き返せば血と肉の大地が
私を手厚く歓迎するだろう
友よ、同朋よ
そして干からびた敵どもよ
私は生きて帰っても
果たしてあなたたちは許すだろうか

暴漢

2011-01-25 | 狂おしい
君の喉から絞り出されている
か細くひゅうひゅうと音のある息
それを間近で吸い込みながら
指を更に少し締め付ける

君が憎いわけじゃない
君が愛しくさえもない
君の顔さえ覚えていない
君の顔自体、見ていない

鼻から上が布で隠れて
たった一つの口からは
真っ赤に熟れた小さな舌が
つややかに艶めかしく喘いでいる

君を殺したいわけじゃない
君を辱めてしまいたいだけ
君に惚れてはいなくても
君には青黒い鬱血が合う

力なく倒れないでくれ
願いながら、弱くなった抵抗とともに
首から指をそっと離す
一拍遅れて咳き込み始める

かきむしられた傷口ならば
愛しいと言うにふさわしく
よだれの溢れた顎の先こそ
美しいと言うにふさわしい

殺したいほど憎くはない
君より君の生理が愛おしい
また首を締めるのが二度目でなくとも
君はただ地獄を見るだけ

2011-01-14 | 錯乱
赤くつやつやとした舌に釘付けになり、
私は思わずその持ち主へ手を伸ばした。
いささか筋張ってはいるが、荒れもせず
綺麗な腿を撫でると、なぜだか私よりも
その人がむしろ母であるような気さえ、
彫刻じみた完成されすぎた笑顔からは、
慈愛を読み取るのが正解なのだろうか。
肉感というよりは神聖こそふさわしく、
足先を舐め上げてたまらない背徳感に、
私はとてつもない興奮をおぼえたのだ。
幼い女神は私のすべてを、このすべてを
知っているかのごとく微笑み続けていて
さらには受け入れてくれる、私を私を私
私のすべてがこの人のものと直感した。
私はこの人を愛し汚し貫くためにこの生
命を授けられたのでこの愛は清らかだ。
腿の奥をまさぐると、彼のやわらかくて
つぶらなふくらみに行き当たって私は私
は失神しそうになった、この頼りなさ!
私が少し力を込めれば簡単に潰れるそれ
ああ、ああ、彼は、女神のように美しい
彼はあの笑みで私に身を委ねているのだ
女神の官能ほど背徳的でそそるものは

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ああ、