暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

遺伝子

2010-10-29 | -2010
私の茎は寒々しく萎れている
私の根は苦しげに縮こまり
私の葉は黄ばんで垂れている
実りを知るには花を咲かせねば
葉のすきまから覗く蕾の芽は
ずっと胎動を止めている

たった一束の草が枯れても
営みは休むことなく活動する
体系をつなぐ線はまるで
土と水をめぐる血流のよう
私は細胞をもつ細胞であり
ただ芽吹いていただけ
活動を続けたがそれは終わりを見せ始め
脈々と受け継がれていくはずの遺伝子は
ひっそりと途絶えようとしている

花はつまり生存の意志
なぜ子を産まずに生きているのか
萎れた茎はそれでも
根から水と養分を吸い上げ葉に送る
おおきな役割を果たしながらも
ちいさな役割が捨てられて
私は酸素を呼吸している

話し合いがほしくて

2010-10-22 | 錯乱
頬が痛い
まぶたが重い

くるしいから食いしばる
かなしいから泣いている

ほんとうかどうか
きっと必要なことなのに

なまぐさい味がするまで
泣きたいわけないのに

惰性の涙が流れても
気持ちはすっきりと真逆を向いて

眠ることが正解かさえ
おっくうになるの

後押しがほしいだけ

2010-10-14 | 錯乱
何がほしいかなんて
わかるわけないじゃない

理解されないことはこわい
こわくてたまらないけれど
たやすく理解できるはずもまたないのよね
私があなたを理解できないように

わかっているの
理解は求めるものじゃないって
わかっているの
残酷さが意味を殺すのね

胸がすうすう冷えているから
どうしても指が動いてしまう
わかるわけないじゃない
何がほしいかなんて

解放のために学ぶこと

2010-10-14 | -2010
たまになにもかも壊したくなるなあと思うときがあって
それはたぶんたまにというほど間隔のひらいたものではない
かといってこれこそがわたくしの特異性ですと
声高に言うほど年若くもなくなってしまい
だから幼さに縛られたわたくしの愚かしさを
ただ嘆いては結局じぶんの体さえ傷つけることはできずに
枕になまぬるい染みをつくりながら
毎夜毎夜疲れて眠るしかできないでいる
なぜこんな思いになるのだろう
恨みもなく妬みもなく
わたくしの疑問は一応知的好奇心に色づいているはず
かたわらで妬みと後悔を膨らませながら
持ち前の臆病さがそれを撒き散らすことに了承しない
(餓鬼さながら膨らんだ腹)

垂れ流した、排便した、その催しがあったから、わたくしは、あなたがたのちからによって、情けをかけられかけられながら、ようやく、生きさらばえて、いる、だから、わたくしはただこわく、こわさをおぼえない、あなたがたのよきかおが、ひたすらに、ねたましい。
なぜならば、わたくしがくちにいれる、米野菜肉魚そのほかのすべて、いのちとよべるそれら、あなたがたはそれをころすごうをみずからにない、このわたくしにそれらをあたえてくれる、けれど、それは、わたくしへのやさしさではなく、わたくしへかけられる、なさけによってもたらされた、りえきというもののためにうまれでた、ひやりと、ああ、ひやりとつめたい、あしさきがひどくつめたい、わたくしはひとりではないのに、どうして、こんなにもひえるのだろう。
にくのなかに、わたくしのにくのなかに、あなたがたのしんけいが、からみついてくる。
わたくしのけんおはいまさらだれに理解されるものでもなく仮に理解されるとしてももはやわたくしは望んではおらず今やわたくし自身さえ預かり知らぬいや計りきれぬ膨張性を孕み破裂させてしまおうと防衛本能が千切れんばかりに叫んでもわたくしに食い込んだあなたがたのつめたい善意がわたくしを戒め、いや、わたくしを戒めたがるようわたくしが命令しているにせよ、だれも誰も知らぬのだ、わたくしでさえ、知らぬのだ。

憧れは裏返さなくても妬みが混じりこんでいる
はじめから、はじめから
わたくしの排泄はあなたがたへの裏切り
かえって喜ばしいはずの排泄も疎ましく恐ろしく感じるのは
きっと妬みの成分がどこに属するかによるのだろう
何も食べなければいい
何も触れなければいい
何も受け入れなければいい
けれどそれではいけない
わたくしのおそれは既に発生し膨張を続けている
だからそれではいけないのだ
手を振り上げるべきかさえわからないが
何もかもそれではいけないのだ