暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

引っ越しました

2015-10-13 | つめたい
夕景に霞がかるビルの群れ
蜃気楼に揺れる街はまるで
彼岸から見た此岸のようだ
毒々しい光にさそわれ
川に足を浸したならば
べっとり蛭が纏いつく

ナトリウム製の誘蛾灯が
黄色くほらあなを照らしている
四角い穴は過度に明るく
外側こそが闇のほらあな
四角い産道を通ったあとは
まっくらな怪物が目を覚ます

虫の声が聞こえないよ、
いやな音ばかり聞こえてくるよ
耳をふさげば蜃気楼
ほらあなを通って わたしはいずれ
いちにんまえの怪物になる
彼岸はいずれ此岸に変わる
毒色の光はいずれ
あれこそわたしの誘蛾灯になるのだろう
黄色いナトリウム灯の下には
蛾なんていっぴきも落ちていやしない
ただ、ただ産道には脱ぎ捨てた
やわらかい抜け殻が積もっている