暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

うつらないもの

2007-10-31 | 心から
立てないからおぶってちょうだいよ
ここは光が強すぎる
だから大きくなりすぎて
私の手には負えないの

苦しまないように首を絞めたりなんてしないで
私から苦痛を奪わないでよ
死ぬならのたうち回って死にたいわ
それが人の特権でしょう?

太陽がおちるわね
太陽がのぼるわね
どちらも同じだけ恐くて
恐くて恐くて堪らないから
どうしてもと言うなら そこで
首をおとしてくれるかしら

正気なんてとっくに捨てているの
必要なんて無いでしょう

どうかあなたの手に負えなくなるほど
光を どうか 増やさないで
対価の代償が誰に来るやら
知っているでしょう、
腕が千切れそうなのよ!

日に日に苦しくなっていくの
それでも生きているのは
(残念なことでは有りますが)
生き物の尊厳を失わないからよ
別にあなたのおかげでも
あなたのせいでもない

ここの光はあんまり強くて
影の力まで伸びているわ
どうかこれ以上増やさないで
せめて苦しめて殺して
あなたたちの代償は
私が払えば済むのなら、

正気なんてとっくに捨ててしまったの、
だってみんな持っていないから

当事者

2007-10-30 | 
眠りが
ぼくの
目をさます
忘れかけた
思い出が
駆け巡り

さあこれからは
眠るまでが自由時間

縛られた
腕も
今はほどける
思い出が
ぼくの憎悪を
増幅 する

こうして眠るまでが
ぼくの自由時間

主権交替
ぼくは何食わぬ顔をして
主に責任を
押し付ける

忘れている?
いいや 人が
ちがうのさ

そうして眠ろう
腕をしっかりと
縛ったあとに
眠りまで眠ろう
今度はもっと
もっと

眠りの間に目を覚ます
ぼくの拒絶する思い出の権化
ぼくはただの
傍観者

腰が砕ける

2007-10-29 | 明るい
人間も生き物の摂理に沿っていると
思う瞬間。

ああ、
一人で良かった

生理的に涙を流す
腰砕けの夜。

静かに
おのれの、
愚かしさを祝う

まだ清らかに、
真珠は守られている。

腰砕けの夜。

デッドリスク

2007-10-28 | 心から
戦場で兵士は靴を鳴らし
知らぬまま子供の背を撃つ

冷たく熱された鉛や鉄に
(もしくはアトムによって)
皆を死で清める
子供も人だ
母親も人だ
父親も人だ
老人も人だ
兵士も人だ
政治家もまた人なのだ

銃を向けてなお
噛み付くのは獣の証
その臓腑を飛び散らせ
全てを死で清めていく

愛する者と別れたならば
戦場へ赴き引き金に指をかけるといい
震える骨もあなたのものだ
指を腕ごと跳ばされる前に
引いてしまうのもあなた次第だ
戦場では誰もが人だ
命をもった同じ人だ

死で存在を清めたいなら
足を使い戦場へ赴くといい
子供の背を知らぬ間に撃ち
死体に埋もれる兵士になるといい
憎しみを果たしたいのなら
あなたは既に戦場にいるだろう

生き残った者は石を投げられ
尊厳を無惨に犯される
知らぬ間に積み上げられた
罪は彼に還元される

そこの戦場へ赴いて
人を殺しに銃を持て
数千年でそう珍しくもない
物言わぬ犠牲者になる
あなたは人だ
わたしも人だ
だれもが人だ
人でしかない
人以外は無い

死で清めて戦場に赴き死で清めるといい

無力

2007-10-27 | -2007:わりとマシなもの
苦しい、と彼は言った

何が苦しいのかわからないから

苦しいのだと

喉が詰まる

今にも吐きそうな顔をして

彼はずっと暮らしている

泣きそうに吐きそうに

顔を歪めるのが日常となっている

喉が詰まる

ただ彼は言う

苦しいのだと彼は言う

私は背中をさすり

調子はどうだ と聞くばかりで

喉が詰まる

ノンストップ

2007-10-26 | 明るい
満足の先には何がある?
そこからどう動く?

一人じゃなにもできやしないくせに

満足の先には何がある?
立ち止まる以外に
終了する以外に?

どこの一番だか知らないけれど

心ばかりはやらせて何がある?
人はひとり
私もひとり

それでも立ち止まり
甘んじて満足するよりは遥かにマシだ

私は銃殺を希望する。

惨殺

2007-10-25 | 
美しい音色に導かれる
可憐な白い子羊の
背中には斧が立てられている

無慈悲な金属が
彼女に冷たさを学ばせて
とことこと子羊は走る
美しい音色に見初められたかのように

背中に突き刺さる凶器は錆びている
誰も厄介ごとには関わりたがらないということを
彼女は後に 知るだろう

冷たくも荒々しく
色を喪う異世界に迷い
疑いもしない可憐な
可憐で愚かな白い子羊
背中に不可視の斧を刺し
ゆるやかに緩やかに血を流す
可憐で愚かな白い子羊
彼女はただ儚い旋律に魅せられる
彼女の暮らした暖かな閉塞世界を思い出し

とことこと歩いている
無防備に

彼女はいずれ知るだろう
その白い毛は何色にも染まるものだと
知らないことを恐れるようになるだろう
美しい音色も時には餌の餌になる
たとえ腕を食われても
ここでは誰も助けてくれない

美しい音色に導かれる
可憐な白い子羊の
背中には斧が立てられている
じくじくと腐り血を流し
心を冷たく止まらせて
美しい音色に魅せられる
子羊の泣き声が聞こえる
子羊の泣き声が聴こえる

「帰りたい。動けないの」


麻酔

2007-10-20 | -2007:わりとマシなもの
無痛の苦しみ
死体と通告
母上の無事を
心より祈る

鈍麻し憔悴した
今のあたしの脳味噌では
宙に眼もさまよえませんで

ああ許していただきたい
こうして眠り続けることを
父母の命は気がかりであろうと
ただひたすらに疲れたので

既に何日何時間が経過したやら
無痛の苦しみを身に受けて
ただただ無事を
祈るばかりです

罪か罰

2007-10-17 | 錯乱
苦い水を飲まされる
悪い子供に正しい躾を
「ごめんなさい」
怠ける子なんて必要ない
人のせいにする子なんて

熱い小手をあてられる
自分が悪いことはわかっているから
悲鳴も呻きも洩らさない

痛くない
痛くない
痛くない
これは怠惰の罰
これは怠惰の罰
痛くない
痛いはずがない

「   」
かわいそうなんて
思わないで
その子はそう言った
ぼろぼろの体だろうと
同情の余地などない
許されるだけでもありがたいのだから

痛みを与えられることに快楽を感じる
痛みを感じることは苦痛のままだ

なぜ自分は何もできないの
苦い水を飲まされながら
ぼんやりと考えるのだろう
徐々に訪れる腹痛に苛まれ
罪悪感にのたうち回る

それは罰だ
それは罰だ
それは罰以外の何者でもない
ただし罪があるとは限らない

なぜいつも
罪は許されるものなのだろう
罪を贖うまで許されず
しかし生きることは許される
ただ罰を与えられ
苦しくはないだろうか
果たして
「誰に 聞いて いる の」
苦しくはない
のだろうか

今日もまた苦い水を飲まされる
どうしようもない子どものために
要らぬ世話を強いられる
「殺して、殺して、
駄目なら死んでみせるから」

その子を殺せば
この痛みから逃れられるのか
罪は贖わなければならない
しかし必ず許される
わたしを殺したなら
どのような罰を与えられるのか
贖うまでは
生きることを 許される