暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

ささがき

2019-12-31 | 心から
がりがりとすり減る体を見ながら
生きてきて何年経っただろう
時折揺らめく炎の先は
脂の削り滓で燃えている
死期は早まりもせず遅くもならず
これが私のさだめだろう

これが私のさだめなのだ
濡れた芋虫のように身悶えて
がりがりと骨肉を飛び散らせながら
時々愛でてくれるひとたちに
手足を生やした気になっている

けれど私という偶像は
歪に削った彫刻で
生きたつもりになったとしても
火は変わらずに燃えている
腥色の水に浸かっている

五体満足に生きてなお
五体満足に生きたいと願い
生死の覚悟もろくにないまま
がりがりがりがり削っている
つまらない部分だけ守りながら

炎がいずれ尽きるとしても
それが私のさだめだろう
ひとびとよ、弱いものを
踏みつけるのは楽しかろう
路傍の芋虫は顧みられず
その体をぺしゃんこにして
組織をへばりつかせている
りとびとよ、弱いものを
慈しむのは愉しかろう
私という芋虫のまぼろしが
骨肉を散らし溺れているのは
あなたがたの愛による
これが私のさだめだから
失くしたいった細胞の
のぼる魂を眺めながら
いくつもの足音を轟かせ
みずから回した歯車の
噛み合う音を聞いている

難しいことは言っていない

2019-12-23 | 錯乱
じょうずにいきてきている
なーんともないこーんなこと
へこんだぼーるはすてればいい
おもちゃばこはからっぽだ

価値があると信じた石
大事に仕舞い込んだ靴
割れて中身が飛び出てしまった
床を這いつくばって舐めていろ

上手く渡れているだろう
散らばった足と脚と頭
腥い袋が垂れているぞ
一顧だにしなければ良い

きらきらひかるおほしさま
ほんとはまっくらやみなのにね
だーれもいないなーんにもない
ひとりでしゃべってばかなやつ

返す言葉も出し尽くした
葦だって生きているというのに
活動することを生きると言うなら
火山に呑まれて生きていろ

上手く殺せているだろう
死屍は累々と堆く
要らないから捨てている
今日の宝物は明日の塵芥

せっかくおくってくれたのに
いらない いらない いーらない
こわしてしまえばすてられる
おもちゃばこはからっぽだ

五寸釘

2019-12-20 | 狂おしい
人を呪わば穴二つ
保身のために嘘をつき
重ねた矛が貫くのは己
開いた口から漂う気配は
腐った魚の臭いがする

私は五寸釘になりたい
誰もが手にできるような
私は五寸釘になりたい
百度参れば魂を穿ち
心臓を抉って心を晒し
肌を引き裂き臓腑を晒す
あなたを呪ったあの人も
呪いをかけたあの人自身も
すべては呪わば穴二つ
出てきた目玉を打ち付けて
燃える木々に磔にする
私は五寸釘になりたい
あなたの頭に穿たれた
穴から液状化した脳の汁は
腐った魚の臭いがするだろう
さぞやさぞや辛いに違いない
呪え、呪え、すべてを呪え
呪えば楽になった心地がする
だからあなたは呪詛を吐くのだろう
人を呪わば穴二つ
穴をあければあなたの喉から
出る呪詛を聞くことは無い