暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

惰性の義務感

2011-02-28 | 心から
夢を忘れ
今を生きる
それがこんなにも
辛いことだなんて

見いだせないのはわたし自身
聞こえないのもわたしのせい
暗闇なんて存在しないけれど
出口はまだまだ遠いはず

簡単な問いにさえ
答えられないでいる

頭がひどく鈍いから
何かを学びたいと望む
体がひどくのろいから
何か達成しようと望む

言葉がひどくわずらわしい
また眠りながら
夢を思いだそうとする
簡単な問いを忘れるように

長い長い生のなか
わたしは今を生きている
そうして何年も過ぎたのに
焦りはその場しのぎのもの

きっと望むものは
手のひらの中にあると
そんな言葉を聞きたくはない
少しは手を伸ばさなければ

聖域

2011-02-20 | -2011
空は厚い灰に覆われ
悲しみをひりだすような雨が降る
断続的に 弱く弱く
土は死の色に染まり
木々はとうに見切りをつけた
かの地では木々が鮮やかに芽吹き
花々が狂おしいほどに咲き乱れ
突き抜ける青空が大地を洗い
毒を知らぬ人々は手に農具を持って
笑い合っているのだという
だがそれが何になろうか
涸れた世界を歩くうちは
肉体など邪魔でしかないというのに
憧れで幾人もが無駄に死に
残された者は死者の遺品を奪い合う
なまなかの希望がわれらの尊厳を奪い去るなら
その世界をわれらは殺そう
底に溜まる怒りを鎮められないなら
その世界をわれらは殺そう
羨望の偶像が善になろうか
いたずらに心をはやらすばかり
たとえいくら死がはやろうとも
ここがわれらの聖域であり
そしてわれらは生きている
耐えて怒りを底に溜め
雨に降られて顔を拭い
土にとられて足を挫き
他者に奪われ心を欠き
尊厳の最後のひとすくいを
聖域に捧げて死ぬために

ゲットアローン

2011-02-12 | 心から
時を流すために力がいると知り
時には惰性にまかせ流れゆくとも知った
久しぶりという言葉が
皮膚を貫きしんしんと積もる
あなたの笑顔を思い出せなかった、
あの日の笑顔を思い出せなかった、
今まさに私の目の前で
あなたが笑っているというのに

変わらないのは私だけ
そう思うのが自分だけ
わかっていると嘘をつき
こうして蟠るものを募らせる
ついていけない会話というもの、
上下左右以外には
高さと向きもかかわってくる
ねじれた位置で呼び合っても
音叉は沈黙を続けるのだから

古いアルバムをめくった先に
現在は決して出てこない
流れた地点は常に動く
私に見えるのは一瞬の連続
目を離せば明日へと消え
そうしてグラフはそぐわない

あなたの世界で何が起きたか
私のいない空白の世界で
それでもあなたには肉のある次元
あなたも私が空白だったように
私の血肉はあなたを忘れた
過去のあなたしかわからなかったなら
現在のあなたにそぐわなければ
データなどに意味はない

夢の跡地

2011-02-03 | -2011
楽しく生きればそれでいいのさと
君はまるで他人事のように語り
けれども君の死に様は
ちっとも楽しそうには見えなかった

宙を浮く我らが友人たち
まるで夢の中をさまよう
亡霊のような我らが友人たち
モルヒネを打たれたばかりの顔が
ひくりひくりとよだれを垂らす
君たちの死に際なんてひどいものだ
夢の跡地に飛び散った君たちは
きっとかつては巨大な一つの生き物だった

楽しい夢の世界は既に終わった
チャイムが、サイレンが聞こえないのか
楽しい夢の世界は既に終わった
地面に足を降ろすんだ
重力という法則を思い出すんだ
ずしんと響く不快な負荷は
君たちの命に他ならない

夢の跡地で叫んだあとでは
もうすべてが現実と化し
現実の我らが友人たちは
もう新たなレーンに滑り込んだ
花瓶は元には戻らない
夢の中じゃああるまいし

ふわふわ浮くのはとても楽しい
夢を描いて遊ぶことも
サイレンは既に鳴り終わった
夢の跡地へ訪れたいなら
どうぞ快楽に身を委ね
ふわふわ浮いているといい
ようこそ、ここは夢の跡地
血と肉と骨と夢
すべてがここには揃っている
すべて動きはしないんだけど
現実なんだから仕方ないのさ