緩やかに減速する電車の窓から
あかあかと光る鏡写しの文字が通りすぎた
ほかに明かりなんてなく
けばけばしいほどの赤はさながら灯台だ
たったひとつの誘蛾灯
知らない街にわたしはいて
知らない街に別れを告げる
日の落ちた知らない街はとても寒い
ざわめきを遠ざけてイヤホンを差す
けれども知らない街は穏やかで
赤い文字はずっとずっと光を放つ
私がいようといまいとずっと
物言わず座席にくずおれた
夜に溶ける人たちが
形をとどめていられるための場所
だからここは暖かいのだ、
暑くて眠たくなるほどに
冷えて、凍っていく人の形をした肉は
誘蛾灯の光をうけててらてら光を反射する
だから別れを告げるのだ、
知らない街は穏やかだから
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