暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

HALO

2020-08-09 | 明るい
逃げ出したい
今すぐにここから
許しを乞えば乞うほどに
光輪はやさしく胸を突き
喘げども喘げども足はもつれ、

あなたの笑顔がおそろしい
背筋がひりついてたまらない
許しを受けるそれそのものが
ああたまらなくおそろしい

見上げた偶像は天の頂
どこへ逃げても果てはなく
許しを乞えば乞うほどに
乞う必要はないと天啓が下る
だからあなたは生きて良いと、

ここにいても良いのだと
茫漠とした無限の湿原は
常に水で満ち満ちている
わたしの水でできた湿原

逃げだしたい、
今すぐに、ここから、何もかもを放り出して、
光輪はやわらかく目を潰し
偶像はおだやかに身を圧して
今日またひとつ芽が生えた

言葉に詰まっている

2020-08-07 | 錯乱
死体を数えてもらえますか
てんでばらばらになってしまったので

(真っ白な画面の前で、わたしは途方に暮れている)
(非言語的言語)
(植物の根)
(フラッシュバック)
(愛しているかと問われた時)

そこに落ちている石ころも
向こうに転がる土くれも

(飽和、飽和、こぼれた水)
(それは本当に水なのか)
(のめり込むことができない)
(前を見続けることもできない)
(ぶれる視点)

いちおう生きていたものたちです
何となく生きていたものたちです

(使い物にならなくなっていく)
(承認欲求)
(殺せ)
(殺してしまえば終わる)
(また始まる)
(どの道使い物にはならない)
(鉛)

ばらばらになった雪像は
じりじりばさり溶けてゆきます

(正しいことばを書けていますか)
(ことばを正しく書けていますか)
(書いたことばは正しいのですか)
(いますかことばを正しく書いて)
(をくてかすば正とこい書いまし)
(見らても正書いえはいずてさく)
(ただ浮かんでは消える泡しぶき)
(まはるむなきのもいだでまえお)

ばらばらになった死体を
どうか並べていただけますか

真っ白な画面の前でわたしは途方に暮れている。非言語的言語が押し寄せては無作為に閃き消えて、いくら整理しようともしきれず、まるで植物の根のように脳内をくまなく侵食しているからだ。それは論理的な言語の体をなしている時もあればフラッシュバックさながらの無意味な羅列が続くこともある。記憶によるプレイバック。愛しているかと問われた時もわたしは同様に途方に暮れた。真っ白な画面にこぼすべき色水は飽和、飽和を繰り返し、ただいたずらに画面を汚す。それは本当に水なのだろうか、水にしたって随分と薄汚れてしまった。のめり込むことができず、なおかつ前を見続けることもできず視線を落として俯くのを繰り返す。歩けど歩けど視点を定めることができないのと同様に。使い物にならなくなっていく頭を嘆くかたわらで原始的な承認欲求が根拠のない万能感を生み出すのだから始末に負えず、考えることができているのかできていないのか、しかし出力できない時点でわたしは存在意義的に死んでいるのだから殺せ。いちど殺してさえしまえば終わる、簡単なことだ。リセットすればやり直し。いつもそうしてきた。そしてまた始まる堂々巡りを幾度も繰り返しているうちに四肢は、臓腑は随分と錆びて硬くなって温度を失った。いくらやり直そうともセーブポイントは常に変わる、どの道使い物になどなりはしない。鉛が、副鼻腔の直上で、根を伸ばしている。
正しいことばを書けていますか。正しいことばを書けていますか。正しいことばを書けていますか。問いかけて殺す、問いかけて殺す、問いかけて、問いかけて、問う前に、ぶつ切りの単語、飽和と言いながらその実失っているだけなのだとしたら今すぐに死ね。
ただ浮かんでは消える泡しぶきの、ひとつひとつに意味などあるはずがない。