暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

イリュージョン

2009-03-23 | 錯乱
あなたのあなたがわたしをわたしに
きれいなことは
きれいだと
いうの?

飛び飛びでわかれる
コマ送りでめぐる
手を繋いだ場所はストロボの闇で

(暗視スコープ?)
(あんなものはただの箱だよ)

猜疑心をだきしめてだきしめてだきしめて
結晶になればきれいだと思った

ながいながいフィルムに
はさみの刃が刺さっていく
切り落とした先が奈落でも
すくわれて張り付いたフィルムでも
分裂するというだけ

りんごの皮をむくようね
滴り落ちる肉の汁

わたしなにもいらないの
分裂した奈落にも行けるから

ストロボライトの明滅で
滑稽な白黒映画のよう
笑っているすがたはわたし以外
滑り落ちて闇にまぎれる
見えないならばほんとうじゃないけど
わたしにあればきれいなの

しなないたたかい

2009-03-17 | -2009
今 この世界は夢の中なのだと唱える
表情なく置物のように空ばかり見上げる老婆を眺めながら
長い長い戦いは私から少しずつ
けれど確実に
大切なものを抉り取っていった

筋繊維は絶えず伸縮し
骨と内臓を地に歩かせてくれる
それなのに私は壁にもたれて息の乱れる理由を考える
前を向いて固い道を踏み 過ぎる人を見送り
俯く強さも知らず弱気を嘆く人に歯噛みし
当の自身は力を使うことを怠けいたずらに鼓動ばかりを消費する

戦いは終わったと
これまで何度 勝利の笛を鳴らしただろう
長い長い戦いで削られた私の一部たちは
ささやかながらも大切なはらからだったというのに
少しずつ死んでいく細胞にかなしみも少しずつ死んでいく
獣じみたねがいは膨らんでいくのに
ささえとなる彼らは増えることはない

数え切れない争いはまた
機械的な当然をはらんでやって来る
私にはもう立つ力などない
(五体満足のくせをして)
私だけの戦いなど
他の誰が見ているのか
他の誰が繰り返すのか
他の誰が止めるのか
他の誰がわかるのか
他の誰が
私と同じことをしているのか
時間はいくらあろうとも
社会は私を待ってはくれない

メモ

2009-03-16 | 錯乱
わたしのこえに
みみをかたむけるひとはいない
(?)

わたしはだれにでも
そのこえをとどかせられる
(?)

ほんとうなど
一握にすら満たない水を掴むよう
血肉のぬくもりすら信じられぬ
それなら知覚すらおぼつかない
枯れゆく枝にも劣るだろう
わたしの喉元に咲く花は
なんなのかなんなのかなにになるのか
水色の花弁はナトリウム燈で白に染まる

息を吸い込むという知覚
こえをだすという知覚
骨がふるえきこえるという知覚
:声をふるわせ風化した言葉を叫ぶ、聞き取るかどうかは他の知覚に依存する
わたしに依存するわたしの知覚
あるいはわたし以外の知覚
確証を得る道具はどこにあるのか
わからないが持っているかもしれない
(そう知覚している?)


合意

2009-03-12 | -2009
あなたのなまえを
おしえてほしい

ひとめ みて
すきになったから

わたしのなまえを
たずねてほしい

けれどわたしは
なのり たずねることにしよう

あなたのなまえを
おしえてほしい

ずっとみてきた
いきものはあさましい

あさましいのはわたし
けれどわたしをひていは しない

あなたがすきだ
あなたのからだ・しぐさ・かお・ふんいき

わたしのいでんしが
あなたへわたしのたねをおくるのを のぞんでいる

さいぼうがふるえる
からだが あつい

あなたのなまえを
おしえてほしい

そうすればたぶん
あなたもわたしを すきになった

飽きる

2009-03-11 | 錯乱
絡んだ髪の毛に指を絡める
痛んだ髪の毛が皮膚を削る
シーツは板のように固いけれど
触れる肘は湿り気を訴える
窪んだ眼は私を見上げ
まばたきをゆっくりと繰り返すばかり
もう髪を引き抜こうが眉さえ動かさないのなら
なんてみにくい抜け殻だろうか
ひとの垢と血にまみれ
うつくしい頬はすっかりこけて
いまやかつてと似せようとさえ思えない
乾いた髪の毛はただのびていく
このまま指先で撫でていればいい
肉になればなんだって
かさついた唇は
魚のように音なくあえぐばかり