暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

ロマンチストは死なない

2009-11-28 | 心から
死にたいんだ
たくさん笑ってから

けれど苦しんでいたい
死ぬ時には

もしも今まで暮らしてきた積み重ねが
最後に痛みへ変わるのなら
老衰も変態性欲に違いないんだ

食べられて死にたいんだ
きっと憎みながら暴れるけれど

自分の汚物にまみれていれば
それはたぶん幸せということ

もしも今まで暮らしてきた積み重ねが
最後に幸せへ変わるのなら
苦悶のまま死んだ姿も仕方のないこと

死にたいんだ
たくさんの楽しさを貪ったあと

そして苦しんで死にたい
なぜって人間でいられたから

馬車馬

2009-11-26 | -2009
暗くもない夜の灯りに
影は色濃く路面を濡らしている
あなたは顔が見えないほど疲れたのか
休むことのない時間に流され続けて

あなたの影が打ち消されるほどの逆光は
星の瞬きまでをも殺してしまった
閃いては消え行く逆光を遮れば
もはやあなた自身さえ確かではなくなる

光のない空、
澄み切った夜空に月はさみしく浮いている、
光に照らされれば孤独を晒し、
裏へ回れば孤独に潰れ、
あなたは一体どこからがあなたなのか、
境界線はゆらゆらと揺れている、
時間に置き去られたたった一つの精神は、
きっと消えかかる星の中にいるのだろう、
あなたはただ一瞥するだけの傀儡、
わたしもまた逆光に埋もれる傀儡ならば、
なぜわたしにはわたしの影が見えないのか、

(鎖を使って死者にさえ口づけよう)
(囚える必要もないのになぜ鎖が要るのだろうか)
(安心は各々の罪悪感を優しく包み込む)

羽虫はいつまで舞い続けるのか
走り去る光たちと
地上に瞬く星たちに
影があなたを塗りつぶし
光がわたしを孤独にし
目覚めないことを知る最期まで

2009-11-05 13:31:24

2009-11-05 | -2009
腐敗する泥寧の中にいるわたしを
あなたは岸辺より手を伸ばす
沈んでいく顎はぷかぷかと浮き沈みを続けるが
動くことはできぬと酔いしれるわたしには
あなたの指先など肉にすぎない
あなたに何がわかろうか
わたしに何がわかろうか
纏い絡み粘りつく
紫色の泥の心地よさ
(わたしの足は何かの骨を踏んでいた)
きっとあなたにはわかるまい
その岸辺から手を伸ばすわけを
知り得ぬのと同様に
救けたいと望んだとても
そことここは天地ほど遠い
わたしは岸には上がらないが
あなたも沼へは潜らぬだろう