暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

ヤク中

2017-06-27 | -2016,2017
メロディを静かに口ずさむ
まるででたらめな旋律を
静かな部屋に反響して
それはとても心地がいい

僕はどうしてしまったのだろう
体がひどく汚れている
嘔吐しながら床じゅうを
転げ回ったかのようだ

茶色く濁った水を出し
浴槽に深く深く沈み込む
胃液と油が水面に浮かび
泡が体にまとわりつく

けれども僕は心地がよく
(ああ人生はかくも素晴らしい)
灼けた喉で口ずさむ
(何も探さなくていい)
水底の有機物をかき回し
(何も考えなくていい)
希釈した汚物で髪をすすぐ
(死すら阻むことはない)

汚泥で僕の体は濯がれた
垢もまるきり流された
僕はどうしてしまったのだろう
澱がすべて消えたかのよう

まるででたらめな旋律は
脳にじわりと突き刺さる
心地よい浮遊感に苛まれ
びしゃびしゃと胃液が水面を揺らす

ああなんて幸せなのか
(腸は暴れ、胃はもんどりうっている)
まぶしい光も昏い陰も
(ひどく頭痛がし、悪心はとどまることを知らず)
僕はすべてを祝福しよう
(目と耳と鼻と口からは汁が滴る)
死すら阻むことはない
(蹴っているのは床か壁か)

歌はますます調子はずれで
もはや僕の意志とは関係がなく
痙攣を起こし溺れながらも
祝福のメロディを口ずさむ

汚物を汚物で濯いでいく
胃も肺も祝福の秘蹟をたどる
最後のひと息を吐き出してなお
旋律は僕を祝福している

川が汚い

2017-06-06 | 明るい
潮風がぬるく肌を撫でる
冷えかけた夕暮れの大気
目と目の隙間から温度は抜ける

濁った水面を橋の上から
見下ろしている

淀んだ流れはともすれば
立って歩くことさえできそうだ

吹き上げる臭気に鼻を押さえ
歩きながら見下ろしている

浮かんで沈むあのブイは
いつからブイだと認識されたか

排水口の中にいるような
汚濁は海へ流れていくのだ
ごうと横殴りの風が吹く