暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

ハルのうた

2011-08-17 | あたたかい
ハル、もう
眠りたいのかい
だけれどまだ
ひとつだけ残っていることがあるよ
やり残したことがあるよ
それを忘れてしまったのかい

ハル、おまえは
とてもとても優しい子
もうまぶたが落ちそうだけれど
退屈な話に付き合っておくれ
あたしの話を聞いておくれ
揺りかごを作ってやれなかったかわりに

おまえが生まれ落ちたとき
あたしはおまえを殺そうとした
おまえの姿はあんまりにもかわいそうで
これから先を思うと
かわいそうでかわいそうでしかたなくて
ハル、おまえは生まれてすぐに
あたしの指を掴んだね
覚えているだろう、おまえは
普通ではなかったんだから

ハル、眠いのかい
あたしも少し眠たいよ
だけれどあとほんの少し
この話に付き合っておくれ

賢く強く、そして優しく
おまえはどんどん成長した
迫害されないために力がいることを
おまえはもう知っていた
あたしは呼ばれる資格もないのに
おっかあ、おっかあと呼んで
わらっていてくれたんだ
許しておくれ
どうか、このばかな女を
おまえを欺いてきた愚かな女を
許しておくれ

ハル、違ったよ
許してなど言えやしないさ
あたしを憎んでもかまわない
だっておまえには何もかもを
押し付けて生きてきたんだから
何もかもを押し付けて
そのまま逃げようっていうんだから
救いようがない
救いようもないんだよ

カネなど腹の足しになるだけで
燃やせばたやすく灰になる
だけれどそれなくしては
生きてはゆかれないんだよ

そう、生きては
ゆかれないんだ

ハル、ハル
まだ眠っていないかい?
最後にひとつだけ仕事があるよ
たった数ヶ月だったけれど
おまえは立派に育ってくれた
あたしの背丈を抜くほどに
立派に気高く育ってくれた
あたしに、おっかあに唄っておくれ
ようく眠れますようにと
子守唄を、唄っておくれ
あたしのまぶたが閉じたなら
おまえもゆっくり眠るといい
許してなどとは言えないね
愚かなあたしを、この母を
少しでも憐れに思うなら
唄っておくれ
最後に、最期に
唄っておくれ

あたしを地獄へ
カネのかわりに
ハル、おまえは
優しい子

昏夜深

2011-08-03 | -2011
くらい くらい やみのなか

こわいひとが てまねきしてる

にっこり わらって よんでいる

それは ほんとうじゃ ないけれど

こわい こわいと ぼくはいう

とじても あけても くらいやみ

ぼんやり みえる へやのかげ

そこから にっこり にじみでて

めだまを ぱくりと たべるんだ

こわい こわい やみがこわい

おいでおいでと わらってる

いつまでたっても わらってる

とじても あけても くらいやみ

ひるでも よるでも くらいやみ

めだまを ぱくりと たべられて

ぼんやりさえも くらいやみ

こわい こわいよ くらいやみ