暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

仮想現実

2011-11-12 | -2011
ホログラムの向こう側なんて
ありはしないのだけれど
笑っているように見えるあなた
私もまた こちら側で
笑っている
知覚することのできないラグを持って
あなたと私は共有している
(ように見える)
お互いの時間を
共有している、ように
見える
現実というものは残酷だと
陳腐なことを言うつもりはない
なんたってホログラムに透かした私は
(そしてあなたも)
甘美なほどに嘘つきだから
言わなくともわかっているはず
きれいなあなたもきっと
向こう側では犬のように
他人の喉笛に噛み付いて
貴重な血肉をすすっている
臭いまでは運ばないだろうと
あなたは安堵して笑っている
(そしてわたしも)
当たり前の罪業でも
やはり当たり前ではいられない
うろたえるふりをしながらも
私は向こう側で
同じように他人を捨てる
そして大丈夫だよ大丈夫だよと
にっこり笑って抱きしめよう
温度のないホログラムを抱きしめて
あなたを許して
(わたしさえも許して)
愉悦にまじった笑みをよこそう
それでもホログラムで透かした先
現実のわたしたちは
きっと現実を選ばないまま
きれいな手足で見つめ合う
それでいい
会わなければそれでいい
嘘でもいい
(妄想でも)
構いやしない

奴隷解放

2011-11-05 | 錯乱
指先のゆうれいが
うぶげをなぞっている
くすぐったいや
首筋も、指先も

ぽろぽろ落ちて
ゆうれいが増える
逃げていく細胞のたましい
見えやしないのに意のままに
手首の先のゆうれいも
あくまでわたしの奴隷で下僕

逃げてしまったのは細胞の自我
あれらは肉欲におぼれている

見えないはずの
死んだはずの指先が
やわらかなうぶげをなぞる
くすぐったいや
どうしてか

ぼろぼろはがれて朽ちる枝
肘のゆうれい、踵のゆうれい
二の腕のゆうれい、踝のゆうれい
ゆらゆら揺れるからだはまるで
ゆうれいのよう、ゆうれいのよう

逃げてしまった
しかたがないや
ゆうれいはまだ主の下僕
神経に操られる奴隷
肉欲におぼれるかつての下僕は
やっぱりおぼれつづけている
うぶげをなぞるのがたのしくて
やめられないや
とめられないや
ゆうれい、ゆらゆら、

膣のゆうれい、
臍のゆうれい、
耳のゆうれい、
脳髄のゆうれい
奴隷は誰もいなくなった
下僕はみんな解雇した
うぶげのそのさき
わからないはずなのに
わからないはずだけど
主なんて最後には
擂り潰されるだけだもの

地下の眼

2011-11-03 | 心から
わたしが眠っている間
土の下では根が伸びる
どこに続くかわからないほど
長く深く広く 根が

わたしが目を覚ましても
土の下では根が伸びる
見えはしない、知らない間に
長く深く広く 伸びていく

硬い土に芽吹かなくとも
隙間を見つけるのは容易なこと
芽が茎となる頃には
隙間も少しは広くなる

終わることのないいのちの循環
眠っていても目覚めていても
物言わず根を伸ばし
知らぬ間に葉を増やす

食われてそれを利用して
隙間、隙間、隙間へと
こじ開けられればいともたやすく
やわらかな侵蝕が続いている

根こそぎ掘ってしまいたいのだ
無駄だと知っていたとしても
青々とした葉が茂るたび
おのれの隙間に恐れおののく