暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

騙し騙し生きます

2014-11-28 | 心から
高校の頃に書いた詩では
病巣はまるで根のようだと
腕に張り付き忍び込み
じわじわと蝕んでいくようだと、あった

根には返しのついた棘がある
今のわたしはそう思い描く
架空の血脈を通り道に
あるはずのない心に住み着いて
ぎりぎりと、無益なほど
刺さる

(先生、痛くて痛くて)
わたしは過去の話の数々を思い返す
(我慢しなさい、痛くとも、痛くとも)
それらはまるで夢の中のようだ
(返してください)
力まかせに引き抜こうとすれば
(先生、わたしの脳を)
存在しない血液がほとばしる
(返してください)

子猫は大きくなり
虫は幾多も代替わりをし
小さな芽は巨木になる
時間とはそういうものだと、
わたしは気付くことができないでいた
前向きな意味しか知らずにいた

棘は深くまで、わたしも知らない奥底まで
張り巡らされて呼吸している
しかしわたしは、間違っていた、
過去も、そしてごく最近のわたしも
病巣は外から忍び寄ったのではない
心に密集する根を思えばわかること

もう取り返しなどつかない、最初から
病はわたしの中にあった

またお前か

2014-11-21 | 錯乱
わたしはわたしの背後にいる
透けているのは前方のわたしであり、
実像をもっているのは後方のわたし
わたしはわたしの体を
(誰にも、わたしにさえも見えやしないまぼろしを)盾に
おそろしい世界から身を守ろうとしている
うすい肉の隙間から覗く
まるで飛び交う銃弾が
すぐさま目玉を貫くがごとく
庇護するものもおらず
庇護されるべきでもない
わたしの生み出した虚像はときに
わたしの後ろに隠れたがる
なんと臆病なのかと嘆いて初めて
後ろのわたしは前のわたしへ
意識はまたしても後ろへうつる
わたしは常に守られている
わたしは常に晒されている
傍から見ればただひとり
遅すぎるままごと
かわいそうにかわいそうに
まぼろしはまぼろし
しかしどちらかを消してしまえば
わたしはどちらだかわからなくなる
虚像と実像がわからなくなる

私は今日も境界線の上
乗り越えもせず、戻りもせず、
白線の上を棒渡り