暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

10月14日:近況

2030-01-05 | はじめに
ブログ記事が1000件突破したようです。
つまり書き散らかした詩もまた1000作になったということです。
厳密に言うと998件ですが。
細かいことは気にしないでいきます。

さすがに約1000の詩を全て見返しはしません。
学生時代の詩を見るのには勇気も必要です。
ともかく、
ぱっと思い浮かぶくらいには記憶に残っているものを軽くご紹介します。


◆ストーリー仕立てのもの
比較的キャッチーです。

兎は逃げていった

フィルムを並べて

あなたのための歌を

殺して剥製にした

生き埋めの墓地


◆言い回しなど気に入っているもの
皮肉と悪意と孤立の塊。

群れの孤独

死んだときに言い訳が立つじゃない?

クズ売り

正気の弦

悪辣の山羊


◆わけわからんが好きなもの
14年間ずっと頭の片隅にこいつがいます。

おとうさんぞうきん


ちょっとした達成感はあるものの
だからといって特に何かが変わるわけでもなければ、
何かを変えるつもりもありません。
引き続き思い付いた時に書き散らすだけです。
強いて言うなら、昨今のペース程度には更新したいですね。

ほとんど独り言に近いブログですが、
これはもはやライフワークのようなもの。
引き続き壁に向かい、およそブログタイトルにふさわしくない
ろくでもない詩を呟いていくつもりです。

ほとんど独り言に近いブログにもかかわらず、
時々見てくれているらしい誰か。
ありがとうございます。

詩日記を始めるにあたって

2030-01-01 | はじめに
この暇人詩日記は、ひたすらに節操もなく
詩のみを展開していく所です。
幾年も、推敲を一切していないものを載せてきたため記事数がそこそこ膨大です。
カテゴリ別に閲覧されるといいかもしれません。
カテゴリの解説を掲載します。

年代別:該当年で比較的マシなものの自選集。ただし夢カテゴリ内は自選除外
暗い:救いを特に考えず書いたもの
明るい:救いがありそうなもの
かなしい:かなしさを糧に書いたもの
あたたかい:優しいきもちで書いたもの
つめたい:全員殺すきもちで書いたもの
狂おしい:猟奇的描写の激しいもの
錯乱:情緒不安定の境地で書き散らかしたもの
夢:実際に見た夢の記録、脚色
心から:心から思ったこと
自動筆記:自動筆記

となっています。
カテゴリ詐欺と思われる内容が多々あるでしょうが、
私の中ではそういうことになっているのでクレームは受け付けません。

主にはやや暗めの詩が多く、
少なからず人体の部位が表現として使われます。
グロテスクではないと思っているのですが
閲覧の際には今一度お気をつけ下さい。

もし私の詩を気に入られた際には
名無しでも一言でも評価をいただけると
喜びます。

コメント及び
トラックバック、
ブックマーク等は
お気軽にどうぞ。

投げやりな生存本能

2023-09-05 | あたたかい
 空はなく、土もない。
 真っ暗だ。何も見えず、びゅうびゅうと風ばかりが鳴っている。
 どこにいるのか。どこにもいない。茫漠たる境界線は広大で、淵目はまるで遠いように思われる。
 一歩進めば崖に落ちる。あるいは淵目に辿り着く。いずれも微々たる確率に過ぎず、一歩、一歩はただざくざくと音をたてる。それによりようやく、土はそこにあることを辛うじて知るが、ただ知るだけに何の意味があるだろう。ざわめく薮の隙間から時折のぞく光明は、確かに空があることを教えてくれるが、届かぬ星に何の意味があるだろう。
 どこにいるのか。どこにもいない。私はただここにいる。ここにいると知るのが私たったひとりなら、ここには誰もいるものか。
 歩けば、歩けばやがては淵目にたどり着くだろう。そうして何度も戻り着いた。幾度となく辿り着いた。素知らぬ顔をして本流へ戻り、魚のふりをしていた。何のために、それは生存本能に他ならず、淵目に戻らねばならないと強く思い続けている。
 何のために。
 じゃり、じゃりと砂を踏みしめる。
 私は真っ直ぐ歩けているだろうか。
 私は前に進むことができているか。
 私はただしく生きているだろうか。
 空はなく、土もない。だから答えは返って来ない、そもそも、口に出してすらいないのだから。
 ここは暗く、とても暗く、もしも頽れてしまったなら、誰ひとりとして顧みるものはない。私は、行くならひとりきりで行きたいと願っている。
 では何のために。
 容赦なく吹き付ける強い風は方向感覚を狂わせ、体からなけなしの温度を奪っていく。末端から感覚は喪われてゆき、指の先がどこにあるのか、足の先が土に触れているのか、とうの昔に忘れている。耳はきっととっくに落ちたのかもしれなかった。着込んだ服の着膨れもまるで意味をなさない。
 何のために。
 私はずっと呟いている。何のために。何のために。何のために。そう呟きながら歩いている。冷えた風は末端から思考を奪っていく。あるいは私の中枢にあるのが、それかもしれなかった。空も土も、見えてはいても見えてはおらず、音は聞いていても聞こえてはおらず、崖に落ちるか淵目に立つか、茫漠とした暗闇への恐怖さえ削ぎ落とされて、ただ歩く小石に過ぎない。
 私は歩いている。何のために。
 何のためでもない。歩いているのでもない。ただ凍った肉体は知っている。苦痛を味わい尽くして鈍麻した死にゆく肉体は知っている。
 脚を動かしていれば、やがてはどこかへ戻り着くのだと。

漂泳生物

2023-08-23 | 暗い
まるで海のさなかにいるようです
水面でもなく底でもない
ちょうど光の届かなくなった海中で
ゆらゆら、ゆらゆら漂っている

肺にはまだいくらかの空気が残っていて
今なら水面にのぼれるはず
肺から空気をぜんぶ抜けば
底へ沈んでもゆけるはず

あかるい水面の向こうがわから
こちらに手が伸びています
溺れていると思ったのですね
なんと優しい指先でしょう

くらい水底の終着点から
こちらを呼ぶ声がします
ひとりぽっちと思ったのですね
なんと寂しがりな声でしょう

あなたがどちらかにいたのなら
きっとどちらかを選べていた
けれどもあなたはどこにもいない
どこへ行けども わたしのなかには

肺の空気は残りすくなく
海は暗さを増していきます
けれども目の前はちかちかと眩しく
上がっているのか 下がっているのか

だから目を閉じ 耳を鬱いで
わたしはわたしを隠しました
のぼっていく気泡の優しさに
寂しくなってしまわぬように

血が沸騰している

2023-07-17 | 暗い
暑さから逃れ逃れた油虫がやって来た
虫をも殺す熱気と湿気に同情をおぼえながら
哀れな亡命者を踏み潰す
だから夏は嫌いなのだ
不浄をてのひらに塗り重ねて私は思う
夏は境目が曖昧になる
縄張りを侵されれば戦わなくてはならない
縄張りを侵せば刃を突きつけられても文句は言えない
いつもは歩けていた境界線上が
ぼやけて白んで見えなくなる
今日も月夜だけがおだやかで
真上から刺さる日差しはあまりに強い
境目の向こうに追いやった油虫よ
私は今、正しく歩けているだろうか
声は聞こえるはずもなく
蝉がじわじわ鳴いている