暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

発作

2021-09-23 | かなしい
優しいねと言われればひとつ
よくやったと褒められればひとつ
河原に石が積み上がる

祀り上げられまたひとつ
称える声にもまたひとつ
井戸に石が落とされる

(私はいつでも笑っているよ)

幾つも折り重なったさみしさが
痛みをともなう涙を押し出す
どうしたら良い
立ち止まった場所は踏切の前

堰き止めた流れは水門を超え
(うるさい黙れもう喋るな)
身勝手だとわかってもいる
だから笑っているのだ、
代わりに石を積み上げて

積み上げるたびに思い出す
幾つも、幾つも積み上げた石を
今日のように生ぬるい風は
凍えた爪先を思い出す

人はみな支えられ生きているなど
わかりきったことを今更言うな
人は支えられなければ生きられない
だからこそ、だからこそ私は

(誰か崩してくれ)
誰か、誰か、誰か、誰か

求められれば積み上がる石
笑いかければ積み上がる石
幾つも折り重なったさみしさは
どこへも行かず重なり続ける
求めていない、求めている、けれど
私はいつでも笑っているよ

銀の光

2021-09-22 | 明るい
私は君を愛したかった。
愛する必要があった。
愛さねばならなかった。
君なくしては、私は
人たりえないと確信していた。

賢い君よ、今はどこにいるだろう。
私は今生きている、
君の、君の言う通り。
今日は大したものを食べはしなかった、
けれどそれなりに美味いと思った。
高い空を見上げた時、
綺麗だと思うこともできた。

寂しいと言うつもりはない、
私は、君を、
君はとても聡明だったから。
君を透かして見ていたのは、
決して、決して君自身ではなかった。
優しく残酷な君よ、
月夜に私を想っているだろうか。
今まさに隠れゆく満月のごとく、
膨大な人生の中の、ほんのちっぽけな
ひとにぎりの思い出を、
残してくれているだろうか。

君を愛してはいなかった。
君なくしても私は人たりえている、
おそらく、最低限度であろうとも。
けれどもし君が私のことを、
すっかり忘れてしまったのなら。
言付けても許されるだろうか、
雲間に消えゆく銀の光に、
たとえ届かなかったとしても。

君を愛してはいなかった。
けれど私は、確かに
君を愛していたよ。

クソみてえなムードだな

2021-09-03 | つめたい
ああ今日も素晴らしき生活
基本的人権を謳いながら悪しき人を殺し
善き者だけで暮らしていきましょう
差別なんてもってのほか

差別する者は人にあらず
殺してしまおう、社会的に、精神的に、
完膚なきまで
電子の海は今日もあかるく燃えています

女の非力さを訴えるそばで美しい女を刺し殺し
可愛い動物を愛でて自立の脚をもぎましょう
無力なのはぜんぶぜんぶ国が悪い
わたしはひとつも悪くない

そう悪いのは蔑み貶め嘲る人々
ああ今日も素晴らしき一日
声ばかり大きな魔王は魑魅魍魎のごとく
次から次から生えてきます

わたしはしあわせです
わたしはしあわせです
わたしはしあわせです
わたしはしあわせです

不満などひとつもありません
だって不満をこぼしたのなら
明日はここが燃え盛るから
善くありましょう、善くありましょう

だから今日も素晴らしき世界
みんな笑顔で罵詈雑言
一日一殺気に食わなければ踏みにじれ
あなたの右は私の左